インボイス制度について
はじめに
インボイス制度は、令和5年10月1日から開始となります。まだ少し先かと思われるかもしれませんが、令和3年10月1日より、このインボイス制度に係る「適格請求書発行事業者の登録申請」はすでに開始されています。
また、このインボイス制度は消費税の納税額計算に大きく影響を及ぼしますので、制度の内容を理解し、制度開始に向けて準備をしていくことが重要です。
インボイス制度導入の背景
平成28年度税制改正において、消費税の軽減税率制度導入に伴い、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)が導入されることが決定しました。
財務省において、以下のように解説されています。
複数税率制度の下で前段階税額控除の仕組みを適正に機能させるためには、欧州諸国の付加価値税制度において広く採用されているいわゆる「インボイス方式」の導入が不可欠だと考えられていました。すなわち、売手側における適用税率の認識と仕入側における適用税率の認識を一致させるために、売手側に必要な情報を記載した請求書等(インボイス)の発行を義務付けるとともに、当該請求書等(インボイス)の保存を仕入税額控除の適用要件とする必要があります。また、そうした仕組みを機能させる観点から、課税事業者として適正な請求書等(インボイス)を発行できる事業者であることが、他の事業者から確認できる仕組みも必要となってきます。
※財務省における「平成28年度税制改正の解説」P808より引用
(https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11344177/www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2016/explanation/index.html)
インボイス制度の概要
インボイス制度は消費税に関する制度です。消費税とは、商品やサービスの消費に対して課税する間接税であり、消費税の負担者は消費者となります。事業者は、消費税分を商品やサービスの価格に転嫁し、消費者から消費税を預かります。そして、預かった消費税(課税売上げに係る消費税)から事業者が支払った消費税(課税仕入れ等に係る消費税)を控除した金額を、国に申告・納付します。
■消費税の負担と納付の流れ
※出典:国税庁HP 消費税のあらまし
(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/aram...)
インボイス制度では、「課税仕入れ等に係る消費税」を控除する際の、仕入税額控除の要件が変わり、「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」等の保存が仕入税額控除の要件となります。制度上は、この「適格請求書」をいわゆる「インボイス」と呼んでいます。
※出典:国税庁HP 適格請求書等保存方式の概要
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu...)
適格請求書発行事業者(インボイスを発行できる事業者)とは
適格請求書発行事業者とは、適格請求書等の交付が出来る事業者として、税務署長の登録を受けた事業者です。適格請求書発行事業者には、登録番号が付与され、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイト(https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/)で公表されます。
令和3年10月1日より、適格請求書発行事業者の登録申請書の提出が可能となっており、令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則として令和5年3月31日までに当該申請書を提出する必要があります。
なお、原則として、免税事業者は適格請求書発行事業者の登録申請ができません。免税事業者が登録を行うには課税事業者を選択したうえで、登録申請を行う必要があります。ただし、令和5年 10 月1日の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。したがって、この経過措置の適用を受ける場合には、登録日から課税事業者となり、課税事業者選択届出書を提出する必要はありません。
また、登録を受けていない事業者が適格請求書と誤認されるおそれのある書類を交付することは、法律により禁止されており、違反した場合には罰則も設けられていますので、適格請求書を交付する必要がある場合には、必ず事前に登録を受けるようにしましょう。
適格請求書(インボイス)とは
適格請求書とは、売り手が買い手に対し正確な適用税率や消費税額を伝えるための手段であり、登録番号や消費税額など以下の事項が記載された書類やデータをいいます。
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目の場合にはその旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
<適格請求書のイメージ>
また、不特定多数の者に対して販売等を行う一定事業者については、適格請求書に代えて、適格簡易請求書(以下の事項が記載された書類)を交付することが出来ます。
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目の場合にはその旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)
⑤税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
売り手側の留意点
適格請求書発行事業者には、以下の義務があります。この義務は、軽減税率対象品目の有無にかかわらず生じます。
■適格請求書の交付
取引先の求めに応じ交付する義務。
■適格返還請求書の交付
返品や値引き等を行った場合には、適格返還請求書を交付する義務。
■修正した適格請求書の交付
交付した適格請求書に誤り等があった場合には、修正適格請求書等の交付義務。
■写しの保存
交付したこれらの写しを保存する義務。
ただし、交付することが困難な一定の取引については、その義務が免除されています。
また、媒介者等を通じて取引を行う場合の交付特例もありますので、事業における取引内容を確認のうえ、対応する必要があります。
買い手側の留意点
インボイス制度の導入後は、買い手が仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として一定の事項を記載した帳簿及び適格請求書の保存が要件となります。受領した適格請求書に必要な事項の不足や誤りがあった場合には、買い手側で追記することは認められませんので、修正適格請求書の発行を受ける必要があります。(適格請求書が交付されない一定の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用できます。)
現行制度における一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能である3万円未満の課税仕入れについても、インボイス制度導入後は原則として適格請求書の保存が必要となりますので、適格請求書を受領しましょう。
なお、適格請求書発行事業者でない免税事業者等との取引については、6年間経過措置があります。
おわりに
制度開始はまだ先となりますが、制度開始時にインボイスを発行できないことや、インボイスを受領していれば仕入税額控除が適用できたものを適用できない場合などがないように、適格請求書発行事業者の登録申請書の提出、システムの修正、社内への周知など事前にご確認ください。
他にも記載しきれなかった取り扱いもありますので、顧問税理士に相談のうえ制度開始に向けて準備をしていただければと思います。
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