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税務上の株価算定とは

camera_alt Shutterstock_寄稿者 Mongta Studioさん

はじめに

取引相場のない株式の評価方法は、DCF方式等様々な手法があります。

ここでは、その中でも課税上の問題を回避するために用いられる税務上の株価算定について説明します。

なぜ税務上の株価算定を行うのか

相続や贈与で取引相場のない株式を取得した場合には、相続税や贈与税の申告のための評価方法が財産評価基本通達で定められています。

それでは、売買の場合はどうでしょうか。

財産評価基本通達において、「時価とは、(中略)不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額」(財産評価基本通達1(2))と定められています。純然たる第三者間の取引は、売主と買主のそれぞれの経済的合理性に基づき交渉され合意された価格、すなわち「時価」で行われるため、課税上の問題は生じません。

しかし、取引相場のない株式の売買は、純然たる第三者間で取引が行われることは少なく、多くの場合はなんらかの特別の事情で取引が行われるため、その取引価格が適正な価格であるかが問題となります。課税当局が、適正な価格より高過ぎる価格あるいは安過ぎる価格で売買が行われており、買主から売主へあるいは売主から買主へ特別な利益を与えていると判断すれば、所得税・法人税・贈与税等の余分な課税が発生してしまいます。

そこで、財産評価基本通達の評価方法を援用した株価算定、すなわち税務上の株価算定を行って財産評価基本通達に定める「時価」を算定しその価格で売買すれば、課税当局は恣意性のない客観的な価格による取引であると認定できるため、課税上の問題を回避することができます。

原則的評価方式

評価対象会社の業種、総資産価額、従業員数及び取引金額により大会社、中会社、小会社のいずれかの区分に該当するかが決まります。

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/k...

会社の規模により適用できる評価方式は次の通りです。

1. 大会社

類似業種比準方式又は純資産価額方式により評価します。

2. 中会社

Lの値を用いた併用方式又は純資産価額方式により評価します。

(併用方式の算式)

類似業種比準価額×Lの割合+純資産価額×(1―Lの割合)

3. 小会社

純資産価額と類似業種比準価額を0.5ずつ用いた併用方式又は純資産価額方式により評価します。

類似業種比準方式とは、類似業種の株価を基に、評価対象会社の「配当金額」「利益金額」「純資産価額(簿価)」で比準して評価する方法です。

純資産価額方式とは、評価対象会社の総資産や負債を相続税の評価に洗い替えして評価差額に対する法人税等相当額を差し引いて評価する方法です。

特例的な評価方式

下の表のように、持株割合等によっては、評価対象会社の規模にかかわらず、配当還元方式で評価します。

同族株主とは、筆頭株主グループの議決権割合が50%超の場合はその株主グループに属する株主をいい、筆頭株主グループの議決権割合が30%以上50%以下の場合は、30%以上の議決権を有する株主グループに属する株主をいいます。

なお、議決権割合が30%以上の株主グループがない会社は、同族株主がいない会社となります。

中心的な同族株主とは、同族株主のいる会社の株主で課税時期において同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうちこれらの者が有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である会社を含む)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である場合におけるその株主をいいます。

特定の評価会社の株式の評価

次のような特定の評価会社の株式は原則として、①~➄については純資産価額方式により⑥については清算分配見込額により評価する事となっています。

①~④の会社の株式を取得した同族株主以外の株主等については、配当還元方式により評価します。

① 比準要素数1の会社(類似業種比準価額を0.25用いる併用方式も可)

② 株式等保有特定会社(S1+S2方式も可)

③ 土地保有特定会社

④ 開業後3年未満の会社等

開業後3年未満の会社又は比準要素数0の会社

➄ 開業前又は休業中の会社

⑥ 清算中の会社

法人税法上(所得税法上)の評価

課税上弊害がない限り、財産評価基本通達による取引相場のない株式の評価方法に次の3つの条件を加味する事で売買時価について法人税法上(所得税法上)の評価とすることが認められています。

1. 中心的な同族株主に該当するときは、会社規模にかかわらず小会社として評価すること。

2. 純資産価額方式において、土地・上場有価証券は期末日の時価で評価すること。

3. 純資産価額方式において、評価差額の法人税等は控除しないこと。

おわりに

新型コロナウイルス感染症の流行下において株価算定のニーズが増加しており、企業を取り巻く経営環境の激しい時代ゆえに組織再編のニーズが高まっていると感じます。算定された株価を見て、評価額に驚かれるお客様もおられます。税務上の株価算定に当たっては、財産評価基本通達に精通し適正な評価を行うことができる税理士に業務を依頼することが大切です。


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