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令和の新しい遺言の制度(自筆証書遺言書保管制度)

camera_alt 寄稿者 Shutterstock_eamesBotさん

はじめに

令和2年7月10日に自筆証書遺言書保管制度が開始されました。この制度のメリットは自筆証書遺言の形式の不備を予防し遺言を法務局に保管するだけではありません。確実に遺族に遺言が届くという画期的な仕組みが創設されました。まず遺言全般にどのようなメリットがあるかを説明し、次にこの制度のメリットをご紹介します。

遺言に関する一般的な誤解と遺言全般のメリット

遺言に関して次のような誤解をよく耳にします。遺言は自分には関係ないと思ってその有用性を検討しないのは残念です。

1. 遺言は金持ちが書くものだ

遺言のメリットの1つは、遺産分割協議が不要になることです。遺産分割協議がうまく行くかどうかは財産の多い少ないとは関係がありません。資産家でなくても遺言は有用です。

2. 遺言はもめない相続には要らない

遺言のメリットの1つは、名義書き換えや解約作業などの相続手続きが非常に楽になることです。相続人の負担を減らすことになり喜ばれますので、円満なご家庭にも遺言は有用です。

3. 遺言は年寄りが書くものだ

遺言のメリットの1つは、万が一の事態に備え遺族の支えになることです。火災のリスクに備えて火災保険に入るように、遺言のメリットがある場合には年齢にかかわらず遺言の作成を検討するのがお勧めです。

また高齢になってしまうと認知症により遺言が作成できなくなる可能性があります。遺言の必要性を感じたら気力体力が十分なうちに遺言を作成するのが無難です。

4. 遺言には財産分けの事しか書けない

遺言のメリットの1つは、付言事項という自由記載欄があることです。ここに相続人や親族に対する想いを記載することができます。また今はインターネットバンキングや電子商取引の進展により財産が全てパソコンやスマホで管理されており、突然の死亡で遺族が財産内容を把握することができず困惑するという事態が起こっていますが、付言事項にパソコンやスマホのパスワードを記載することによりこういう事態を予防することもできます。

これまでの遺言のデメリット

自筆証書遺言保管制度が始まる前は、実務上、自筆証書遺言(個人保管)か公正証書遺言(公証役場保管)のどちらかが行われていました。この2つには主として次のようなデメリットがありました。遺言が遺族に発見されないリスクがあるのは共通のデメリットです。

1. 自筆証書遺言(個人保管)

① 形式の不備により遺言が無効になることがある。

② 遺言の偽造・変造・紛失(見つからない)・破棄(不利な記載を見た相続人が捨ててしまう)のリスクがある。

③ 相続開始後、家庭裁判所に相続人全員が出頭して検認の手続きを行う必要がある。

2. 公正証書遺言(公証役場保管)

① 公証人が作成するので公証人とやり取りする手間がかかる。

② 財産規模や受遺者の数により算定された手数料がかかる。

③ 証人2人の立ち合いが必要である。

④ 遺族が存在に気が付かなければ実行されない。

自筆証書遺言書保管制度のメリット

自筆証書遺言保管制度にはこれまでの遺言のデメリットを解消する下記のメリットがあります。

① 死亡時通知を利用すれば遺言が必ず発見される。

② 遺言書保管官が作成した自筆証書遺言の形式をチェックしてくれる。

③ 偽造・変造・紛失・破棄のリスクがない。

④ 家庭裁判所での検認の手続きが不要である。

⑤ 1日で手続きが完了する。(要予約)

⑥ 手数料が1通3,900円の定額であり安い。

⑦ 証人が不要である。

⑧ 相続人が閲覧等すれば関係遺言書保管通知により他の相続人に連絡してもらえる。

相続開始後の通知

自筆証書遺言書保管制度の特色である通知についてご紹介します。

1. 関係遺言書保管通知

遺言者の死亡後、相続人の1人が遺言書保管所で遺言書の閲覧をするか遺言書情報証明書の受領をすると他の相続人全員に対して遺言書保管所に関係する遺言書が保管されているというお知らせが届きます。

2. 死亡時通知

遺言者が予め通知対象者を設定した場合において(遺言者1名について1名のみ可能)、法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡が確認された時点で、通知対象者に遺言書保管所に関係する遺言が保管されているというお知らせが届きます。死亡時通知は、関係遺言書保管通知とは異なり、遺言者が希望する場合にのみ通知されます。生前、遺言があることを内密にしたい場合に特に力を発揮します。

おわりに

多くの相続税申告の現場に立ち会う中で、「遺言書さえあればなぁ」という遺族の方の嘆きを聞いて参りました。遺言が全ての問題を解決するわけではありませんが、力を発揮するケースがあります。玉石混淆の情報に惑わされないよう専門家の意見を参考にして相続対策を行っていただくことをお勧めいたします。

【参考】

法務局HP「自筆証書遺言書保管制度」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

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