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押さえておきたいパターン別「医療承継」の形態

(写真=George Rudy /Shutterstock)

団塊の世代、ポスト団塊の世代がぞくぞくと退職、引退するなかで、医療業界でも事業承継が活発化している。社会の公器として存在する医療機関は、どの地域においてもなくてはならないものだ。とはいえ、後継者が必ずしも存在するというわけでもないだろう。

また、後継者がいる場合には、どのように承継をしていくべきなのだろうか。そこで、個人診療所の場合と医療法人の場合に分けて、医療承継の形態について解説する。承継は時間をかけて行うものである。早め早めの準備としてお読みいただきたい。

個人診療所の場合の承継形態

個人診療所の場合、承継の形態として、親族への承継、第三者への承継が考えられる。

子どもなど親族に承継させる場合には、同じ診療科目かどうかでやり方が変わってくることになる。同じ診療科目であれば、そのまま承継する方向で検討していく。それに対して診療科目が異なる場合には、医療機器の整備や内装を変えるといったことが必要になろう。こうした事業展開の面でまずは何を考えるべきかを検討していく必要がある。

また、個人診療所における事業用財産は、他の個人財産と同様、贈与の場合には贈与税、相続の場合には相続税が課税されることになる。例えば、診療所の土地や建物を親族に譲渡するのか、賃貸するのか、贈与するのかによって課税方法も異なるし、承継する親族のその後の対応も変わってくることになる。

承継する時期をいつにするかも真剣に検討しなければならない。一般的には勤務医を経て承継するケースが多いことから、勤務先を円満に退職することができるようにも配慮しなければならないだろう。

診療所経営を支えてくれる従業員の処遇も重要な課題だ。前院長の下で働いてきた従業員を継続雇用するのか、解雇して新しい従業員を雇うのか。継続雇用であったとしても、一旦退職金を支払って、勤続年数をリセットするのか、勤続年数も承継するのか、慎重に判断したい。

親族に承継できることが最も望ましいことではあるが、そうではない場合には第三者への承継も検討する必要があろう。後継者である第三者にとっても、自分で開業することと比べて、開業資金を低く抑えることができ、一定の患者と繋がりを持ったまま開業できるので、メリットは大きいと言える。

この場合は「既存患者の引き継ぎ」がいわゆる「のれん(営業権)」として計算されることもある。「のれん」の評価は一般的に「簡易方式による評価」と「利益還元方式による評価」に分かれているが、詳細は専門の税理士に確認して頂きたい。

医療法人の場合の承継形態

医療法人を承継する場合に考慮しないといけないのは、開設者は医療法人、管理者は理事長というように「所有と経営が分離されている」ということである。従って「所有の承継」をするために出資持分を移転させる手続きと、「経営の承継」をするために理事長を交代するという2つの手続きが必要だ。

ただ、個人診療所の場合と異なり、閉院措置は必要ないため、一般的に、事業承継は医療法人の方がスムーズだと言われている。医療法人の承継では、親族への承継、第三者への承継のほか、他の医療法人との合併といった方法が考えられる。

他の医療法人との合併の方法としては、吸収合併と新設合併の2パターンある。合併する医療法人のうち1つを残し後の医療法人は吸収する方法を吸収合併といい、合併する医療法人はいずれも解散し、新しい医療法人を設立してそこで1つとなる方法を新設合併という。

どの形態をとるかは状況次第

後継者がいる場合には、早め早めの対応を検討できるが、そうではない場合にはどうしても目の前の診療に追われ、医療承継は後回しになることが多い。どの形態をとるかはその時々の状況によっても変わってくるが、どの形態を利用するにしてもスムーズな展開ができるように下準備が必要となる。一度じっくり考える機会をとってみてはいかがだろうか。

また医療承継には非常に専門的な知識が求められる。詳細は、医療承継を専門にしている税理士などに相談して頂きたい。

南青山リーダーズ株式会社 編集部