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世界の富裕層が注目する「ファミリーオフィス」とは

camera_alt (写真=eelnosiva/Shutterstock.com)

大型減税や大規模インフラ投資を公約に掲げるトランプ氏が米国大統領に就任し、ニューヨーク株式市場でも、ダウ平均の終値が初めて2万ドルの大台を突破した。株式を持つ富裕層は、株価の値上がりを受け、ますます豊かになっていきそうだが、莫大な資産を保有する彼らといえども、その資産の管理・運用に対する努力は惜しまない。

単に資産を守りながら殖やすのではなく、資産を後の世代に継承し、一族が永続的に繁栄できるよう「ファミリーオフィス」という手法で資産管理することが広く行き渡っている。新興国などで新たな富裕層が誕生するなか、世界が注目するファミリーオフィスについて解説する。

資産拡大より世代間の継承を重視

ファミリーオフィスの起源は古く、6世紀頃にヨーロッパの王族の資産を管理したのが始まりとされる(諸説あり)。19世紀に入り、アメリカでジョン・ロックフェラーが一族の将来にわたるニーズを運営するためにファミリーオフィスを設置。このほか、モルガン家なども相次いでファミリーオフィスを設置したことで大富豪の間に浸透していった。

UBSの「グローバルファミリーオフィスレポート2016」によると、富裕層がファミリーオフィスで重視するのは、世代間での資産運用が最も重要で、会計と税、遺産相続の連携、家族の結びつき、家族の教育、慈善活動と続く。ここからも分かるように、資産を築いた一族は、投資を広げてさらなる資産の拡大を目指すことが第一ではない。

実際に、同レポートでは、ファミリーオフィスのオペレーションコストのうち、投資に関連するものは43%と半分にも満たないという実態も明らかになった。ファミリーオフィスでは、資産を拡大することよりも、築き上げた財産をいかにして、世代を超えて適切に管理・運用できるかということに重きを置いている。

こうした目的を達成するために、会計士や弁護士、税理士などのプロフェッショナルを揃えたチームを形成して、一族のために専属で業務にあたる。これがプライベートバンキングとの大きな違いと言える。プライベートバンキングでは、担当者は顧客のニーズに合わせて対応するが、所属する金融機関の立場もあり、必ずしも顧客のために中立的なサポートが担保されているというわけではないだろう。また、プライベートバンクはあくまでも金融資産の運用に関する相談が中心で、子息の教育などにも取り組むファミリーオフィスよりサービスが限定されることが多い。

複数の家族を束ねたマルチファミリーオフィスも登場

ファミリーオフィスのパイオニアともなったロックフェラー家やモルガン家のほか、アメリカではファミリーオフィスが広がっているが、実際のところその規模は正確には判明していない。Family Office Exchangeの推計によると、資産が1億〜2.5億ドル(113億〜282億円)の資産家が7,480人で、その半数がファミリーオフィスを持つと仮定すると3,740人、さらに資産が2.5億ドル以上の資産家が3,015人おり、資産が増えるほどファミリーオフィスの必然性が高まるため、その75%がファミリーオフィスを持つとすると2,250人、合わせて約6,000のファミリーオフィスがアメリカに存在するとしている。

さらに、これまでは専属のチームが1つの家族の資産を管理するファミリーオフィスが一般的だったが、富裕層の数が増すにつれて、ファミリーオフィスのメンバーの人材不足、または、規模のメリットを生かした資産運用の観点から、いくつもの家族の資産を管理するマルチファミリーオフィスも登場している。ロックフェラー家も他の家族の資産を管理するマルチファミリーオフィスへと変貌を遂げている。

富裕層がファミリーオフィスを活用しながら、代々資産を受け継いでいるのが分かったところで気になるのが、ファミリーオフィスを持つ富裕層のポートフォリオだ。一体どのような資産に配分して、それを管理運用しているのか。前述のUBSグローバルファミリーオフィスレポート2016によると、ファミリーオフィスのポートフォリオの平均で、最も大きなウェイトを占めているのが先進国の株式となり、その割合は18%だ。不動産への直接投資(15%)が続き、ベンチャーキャピタルとプライベートエクイティへの直接投資が11%で3番目に多い結果となった。

ファミリーオフィスの存在から、富める一族がその繁栄が途絶えないようにプロの集団を雇い入れ、万全を期している姿が浮かび上がってくる。財産を築き上げることと同様に、それを何世代にも渡って管理運用することにも尽力する抜け目のない姿勢が、富裕層がその地位を維持できるのだろう。

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