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なぜ富裕層は米国の不動産を購入するのか

camera_alt (写真=karamysh/Shutterstock.com)

米国不動産市場が好調だ。新築住宅販売、中古住宅販売、ケース・シラー住宅価格指数などの経済指標を見ても、堅調と言ってよい数字が確認されている。2017年の住宅市場の懸念要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げによる住宅ローン金利上昇だが、現時点では、米国不動産市況は視界良好だ。

「減価償却」で節税できる理由

こうしたなか、日本人富裕層にとって、賃貸向け米国不動産(アパートや一戸建て住宅)購入の魅力は大きい。人口減少に悩む日本とは反対に、米国は人口が増加していることもあり不動産価格は上昇を続けている。

だが、日本人投資家にとって米国不動産投資の真の妙味は、日米の不動産評価方式の違いと、日米の不動産に関する税制の違いを利用して、減価償却による節税効果が得られるところにある。ポイントを3つに分けて解説しよう。

1. 米国での所得も日本で納税する
まず押さえておかなければならないのが、日本の税制では、日本在住の日本人は、世界のどこにいても所得が発生すれば、日本で申告・納税する義務があることだ。これが日米をまたにかけた「減価償却節税」という魅力的な仕組みを作り出す第1のポイントだ。

2. 米国では建物が評価される
第2のポイントは、日米の不動産に対する考え方の違いだ。国土が狭い日本では、不動産評価における土地の価値が、建物の価格よりも高いことが一般的だ。対する米国では、土地が広大なため、土地よりも建物の価値が高く評価されやすい。納税時に経費として認められる償却対象の建物比率が日本に比べて格段に大きいのだ。

3. 築22年超の木造建築は4年で償却される
第3のポイントとして、建物の耐用年数が短い日本では、築年数が22年を超えた木造物件の減価償却期間が税制上、4年であるということが挙げられる。これは、日本在住の日本人が米国で不動産を購入し、日本で課税される際にも適用される。文化や気候の違いもあり、米国は日本に比べて、建て替え頻度が少なく、長期間に渡って建物を使用する傾向がある。米国の中古住宅市場の経済指標が重要視される理由もここにある。この耐用年数が、節税に決定的な役割を果たす。

減価償却による節税効果

ここで、経費や為替変動などを考えない非常に単純化したケースを考えてみよう。日本在住の日本人が米国で、評価額における建物割合80%%、築23年の賃貸用木造中古住宅(土地を含む)を5,000万円で取得したとする。日本でこの資産に対して納税する際、建物の取得価額は現地の評価方式に従って4,000万円となる一方、耐用年数は日本税制によって4年とみなされる。この場合、毎年の建物の減価償却費は1,000万円となり、日本で申告する課税所得が劇的に下げられるばかりでなく、投資額の80%が4年で回収できることになる。

中古不動産市場が大きい米国における建物の耐用年数の長さ、土地と比較した場合の建物価額の高評価、そして我が国の「築年数が22年を超えた木造不動産の減価償却は4年」という決まりが、相互作用を起こし、高い節税効果をもたらすことが分かる。

詳細は専門家へ相談を

「築22年超の米国の木造不動産」は短期間で高額の減価償却ができるため、高所得の未上場企業オーナーや開業医はもちろん、今後数年間は高い収入が期待できる上場企業の役員などが購入するケースが多い。不動産売却に関しては、減価償却を取り終わる4年で売却してしまうと短期譲渡所得にあたるので、税率が有利な長期譲渡所得扱いになる5年以上保有してから売却したいところだ。

上記のシミュレーションは、経費や為替変動を考えていないが、高所得者の方は一度検討してみる価値はありそうだ。なお、税制やその解釈は時間とともに変化する可能性がある。このスキームを使った節税に関しても、税理士など専門家に相談のうえ、行動して頂きたい。

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