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「2020年問題」を前に、シニア市場で起きている新たな動きをチェック!

【転載元】
日本クラウド証券株式会社
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いよいよ2020年。今年初の祝日「成人の日」が過ぎる頃になると、お正月気分から日常モードに戻っている人がほとんどだろう。しかし今年はオリンピックイヤーということもあり、世間はどこか浮かれた雰囲気すら漂わせている。

その一方で2020年は、もう何年も前から「2020年問題」が指摘されていたことは周知の通り。「2020年問題」とはビジネス、不動産、教育、福祉などさまざまな分野で多くの社会問題が顕在化し、わが国の大きな転換点となる年のことを指す。その分岐点が、まさに今年なのである。

2020年問題のひとつに少子高齢化問題がある。2020年以降、わが国は団塊の世代が70歳を過ぎ、高齢化率30%を超える極端な超高齢化時代に突入するとされている。これにより、あらゆる社会インフラが大きな影響を受けるわけだが、ビジネスの世界では高齢者をターゲットとした新たな市場の掘り起こしに躍起だ。
今回は、この高齢者をターゲットとした新たな市場について調べてみた。

実際のところ、シニア層はどれくらいいるの?

ここであらためて、高齢者の人口を整理しておこう。2017年10月1日現在の総務省の調査によると、
●65歳以上の高齢者(以下「高齢者」)の人口は3515万人。
●このうち男性は1526万人、女性は1989万人。
●総人口に占める割合は27.7%。

団塊の世代(1947~1949年に生まれた人)が、65歳以上となったのは2015年のことで、その年の高齢者人口は3387万人。これがその後も増加傾向にある。そして、総人口に占める高齢者の割合は、2020年には30%を超えるだろう……と予想されているわけだ。

さらに時が進むと、高齢者人口は2042年に3935万人でピークを迎え、その後は減少に転じると予測されている。同時に総人口の減少も進行し、高齢化率は上昇傾向にあると推計されている。さらに加えれば、2065年の高齢化率は38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上になるといわれている。

こうした数字を見れば、盛んに議論されている年金問題や医療問題にとどまらず、高齢化はわが国の全体の仕組みをも変えざるを得ない大きな課題であることがわかる。つまり2020年は、その大きな節目となる年であることが、数年前から判明していたのだ。

シニア市場で重視される、4つのキーワードとは?

もちろん日本の企業も、この環境変化や社会的変化に対して、手をこまねいて眺めているわけではない。いまやどの業界・企業でも、高齢化問題に対してさまざまなアプローチをしていて、高齢者をターゲットとしたビジネスは、生き残りのための大きな柱のひとつなのだ。

高齢者をターゲットとしたビジネスで、成功を導く大事な4つのキーワードを紹介しよう。

【1.健康】
いつまでも健康で元気にいたい……、1日でも長く健康寿命を伸ばそう……というのが、今の高齢者の最大の関心事のひとつ。こうした高齢者の意識から、スポーツジムをはじめ、スポーツ用品メーカーやショップなどが高齢者をターゲットとした市場開拓に力を入れている。

【2.旅行】
ある程度の資金力があり、現役世代に近い60〜70代の高齢者にとっては、旅行が人気アクティビティの上位にランクイン。しかし、そのようなターゲットの多くは、すでに多くの場所(国内外)に行ったことがあるという人がほとんどのため、単なる観光目的の旅行ではなく、何かしら新しい体験ができる旅行が求められる。

【3.仲間】
仕事をリタイアし、いきなり社会とのつながりを断たれてしまうことは、大きなメンタルストレスとなる。また、それが健康寿命を縮めることにもつながっていく。趣味の会やボランティアサークルなどで新たな仲間を作り、積極的に他者とのつながりを持つことは大切だ。

【4.家族】
高齢者にとって基本となるのは、やはり家族。夫婦、親子、そして孫との関係には、ビジネスにつながる多くのヒントがあるのだ。シニア市場を狙う企業が注目する、大きなテーマのひとつとなっている。

シニア層をターゲットとしたビジネスでは、これらのキーワードが必ず隠されている。そこに注目して、最新のシニア層ビジネスの具体例を紹介しよう。

スマホ市場の新ターゲットは、ズバリ!シニア層

携帯電話業界では、日本国内のスマホはすでに飽和状態にあるといわれているが、数字を見てみるとその実情は明らかだ。
●2018年度のスマホ出荷台数は約3000万台。
●上記数字は、対前年度から200万台減。
●2019年度は、さらに300万台の減少が予想されている

その一方、高齢者はまだまだガラケー利用者が多い。ガラケーとはいうまでもなく「ガラパゴス携帯電話」の略称だが、60歳以上はガラケー使用者が依然として多く、いまだスマホ利用者は6割にとどまっていることから、開拓の余地は大きい市場となっている。しかし、高齢者は孫と一緒に写真を撮ることや、家族や仲間とSNSでつながりたいという希望を持っている半面、スマホの操作の難しさや月々の使用料金の高さがネックとなっている。

これに対して新たな戦略を打ち出しているのが、イオン系の格安スマホ会社「イオンモバイル」だ。60歳以上を対象に、新プラン「やさしいスマホ」で高齢者獲得に力を入れている。
この新プラン「やさしいスマホ」のプランはデータ使用量500MBまで、専用通話アプリを使った電話が10分間かけ放題などの条件で、月額1980円〜(税別)という格安ぶり。
ガラケー使用者にとってこの月額使用料は現在支払っている料金より安くなることになる。さらにイオンモバイルは、高齢者でも扱いやすい、専用スマホも開発するといった力の入れようで、ショッピングのために来店した客を積極的に取り込むとともに、操作法などを相談できる電話サポートも完備することで、高齢者層の獲得に注力している。

高齢者にとっては、ガラケーでは体験できなかった絵文字や写真を使った家族や仲間への無料の連絡手段はもちろん、スマホがあれば心拍数、血圧、歩行数などの基礎的な健康情報が日々取得できるうえ、旅行の予約にも活用できることになる。そうした便利さから、ガラケーからスマホに乗り換えた高齢者は、次第に他の操作方法を覚えていく欲求が高まり、自らが使っているアプリの操作方法を友人・仲間同士で教えあうなどの方法で、“つかいこなし”の範囲が広がっている。
この点について携帯大手もあらためて注目しており、今後ますます高齢者へのアプローチが加速していくだろう。

“おひとりさま”の終活に、金融機関も本腰!

身寄りがいない、いわゆる“おひとりさま”の高齢者も増加中だ。内閣府調査によると、次の数字が明らかになっている。
●2015年 → 一人暮らし高齢者は592万人。
●2040年 → 一人暮らし高齢者は896万人にまで増加。

この“おひとりさま”に注目しているのが、経営悪化にあえぐ金融機関だ。
例えば三井住友信託銀行は、2018年、銀行のOBやOGによる一般社団法人「安心サポート」を設立。このサポートは、例えば高齢者の身元保証人になったり、老人ホームの入居手続きや病院の入退院手続きを代行したり、葬儀の手配、遺産整理など、死後の事務手続きなども担う。
また、認知症などが進んで判断能力がなくなった時点においては、財産管理などをする任意後見人の役割も担う。利用者は委託手数料を払い、老人ホームや病院などの費用、葬儀費用などは銀行に預けた信託財産から支払われる。

これまでNPO法人や司法書士などが担ったサービス例はあったが、銀行がこうしたサポートを代行するのは極めて珍しい流れとされている。家族や仲間とのつながりがない人も、銀行などとこうした形でつながりができることは、大きな魅力となるのではないだろうか。

シニア一人ひとりに寄り添ったサービスに期待

今回ご紹介した新ビジネスの例にとどまらず、2020年に生じる社会的な問題・課題の顕在化を契機に、さらに新しいビジネスも続々と生まれてくることになるだろう。ビジネスターゲットとされる高齢者は今後さらに増加するのだから、どのビジネスにも大きな期待がもてるはずだ。

しかし、それらが単にビジネスとして成立するかどうかではなく、本当に高齢者の一人ひとりに寄り添ったサービスなのかどうかが一番大切なことであることは間違いない。高齢者を食い物にした犯罪があとを絶たない中、シニア市場を狙う企業には、常にその視点を忘れずにいてほしいと願う。

≪記事作成ライター:三浦靖史≫ 
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、歴史、観光、時事問題など、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車。

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