会社員がイデコ加入可? 企業型DCとの併用可能で資産形成プラン広がる
厚生労働省は、すべての会社員を対象に、希望すれば個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)に入れるように基準を緩める検討に入った……と日経新聞で報じられたのが、今年7月末のこと。
これまで企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人は、ある一定条件がなければイデコとの併用は不可能でしたが、今後は企業型と個人型の両方に加入することが可能になりそうです。
イデコの加入者が伸び悩むなか、老後の備えを後押しする今施策が実現するとなると、老後の資産形成に新たな展開が見られるのでしょうか?
節税効果が高いイデコ。会社員にも門戸が開かれることに
イデコとは、自らのお金を60歳まで積み立てながら投資信託や保険商品を運用し、最終的に年金として受け取る制度のこと。
その税制優遇のメリットゆえ、イデコを活用した投資をすすめる専門家もいますが、会社員の場合、企業型DCとイデコの併用ができるには一定条件が必要で、イデコの普及が限定的なものとなっていました。
しかし今回、厚生労働省が来年の通常国会に制度改正案を提出することで、すべての会社員にも門戸が開かれることになり、イデコの運用者が増えるのではないかと言われています。
イデコの「掛け金は全額所得控除の対象」というメリットは会社員にとって、非常に「おいしい」ものであり、60歳まで積み立てた場合の節税額は大きなものになる可能性を秘めているからです。
たとえば、年収500万円で所得税率10%(住民税率10%)の人が、月々2万円×12カ月を積み立てた場合、4万8000円分の節税が可能となり、そのほかにもイデコには、運用益も非課税、受け取るときも公的年金等控除、退職所得控除の対象となるといったメリットがあります。
ただし、イデコで運用しているお金は60歳になるまで引き出せません。
掛け金を会社が負担する「企業型」
企業型DCにもメリットはあります。
企業型DCの場合、掛け金の上限は5万5000円/月です。毎月5万5000円を会社が負担し、そのお金で会社が用意している金融商品を選んで、運用していきます。
この掛け金は会社が出しているので、個人に給与課税されることがありません。口座管理費用もイデコのように個人で行う場合と違い、会社負担になっています。ポイントは掛け金の額が、企業ごと、さらに企業内でも役職などに応じて変わってくるので、掛け金は人それぞれ異なるという点です。若手社員であれば数千円程度の場合も少なくないでしょう。
現在、会社の規約など条件を満たしてイデコと併用できる場合は、企業型DCの上限が3万5000円となっています。厚労省は今回の法改正で、企業型DCの上限額5万5000円枠のなかで金額の縛りなくイデコを併用できるように検討しています。たとえば企業型DCで4万5000円の掛け金を得ているのであれば、4万5000円はそのままで残りの1万円をイデコにまわせる、というもの。
ただし、すでに上限の5万5000円の掛け金を得ている人の場合は、さらにイデコで投資することは現時点では難しいでしょう。
イデコの上限額・下限額とは?
ではイデコについて、もう少しおさらいしておきましょう。
イデコの掛け金には下限と上限があります。現時点では月5000円からのスタートになり、公務員は1万2000円/月まで、専業主婦の場合は2万3000円/月まで、というように決まっています。
会社員の場合は少しややこしく、企業年金があるかないか、その種類によっても以下のように異なります。
●勤務先に企業年金がない場合、2万3000円/月が上限
●勤務先に確定給付企業年金がない場合2万円/月が上限
●確定給付企業年金はあるが企業型DCがない場合、
確定給付企業年金と企業型DCの両方に加入している場合、1万2000円/月が上限
また、積み立て方法は、月払いだけでなく、年1回払い、年2回、年6回払いなどから選択できます。ボーナス時や年末調整の還付金がある12月に上乗せして積み立てることも可能で、1年の収支を考えて柔軟に積み立てプランを組むことも可能となります。
企業型DCを行っているものの、自身の掛け金の額がいくらか把握できていない人もいると思うので、まずは確認しておくことが大事でしょう。もし、企業型DCの上限に届いていないならば、イデコとの併用で老後の資産形成を考えてみてはいかがでしょうか。
元本保証がないというリスクはあるものの、やはり大きな節税効果は魅力にほかなりません。今回の制度は、節税分をさらに別の形の投資に回したり、あるいは余暇を充実させたり、さまざまな選択肢をもたらしてくれる可能性があるものといえますが、こうした選択もまた、賢い投資法のひとつであることは間違いないでしょう。
≪記事作成ライター:ナカムラミユキ≫
石川県金沢市在住。広告制作会社にて、新聞広告を手がける。映画、舞台からメーカー、金融まで幅広い記事広告を担当。著名人インタビューや住宅関連、街歩きコラム、生活情報まで興味の赴くまま執筆しています。