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ハイブランドから個性派まで。開業ラッシュに沸く銀座のホテル事情

【転載元】
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国内外の高級ブランドや老舗店が軒を連ねる東京・銀座で、いまホテルの開業ラッシュが続いている。

ここ近年、国内では訪日観光客の急増にともない、格安なビジネスホテル・ゲストハウスなどの宿泊施設が増え、民泊の普及に向けた規制緩和も進められてきた。ただ今回、銀座に顔をそろえるのは、滞在そのものを満喫できる新形態のホテルや、価格帯の高いハイブランドが多く、それぞれに異なる個性や価値観を打ち出したコンセプトメイクを特徴としている。
では、どのようなスタイルのホテルが銀座に誕生しているのだろうか……。その特徴やコンセプトとともに、激戦化する銀座ホテル競争の背景にフォーカスする。

国内外の大手ハイブランドホテルが続々と進出

まずは、銀座エリアに最近オープンした(オープン予定)大手ブランドのホテルを見ていこう。

【ホテル ザ セレスティン銀座/2017年10月開業】
銀座8丁目の旧日航ホテル銀座の跡地にオープンした、三井不動産が運営する宿泊特化型の新ブランドホテル。コンセプトは「銀座を楽しむ大人が、自然と心を許せる居場所」。客室数は104室、宿泊料金は一泊3万円台が中心。

【ハイアット セントリック 銀座東京/2018年1月開業】
銀座6丁目の東京銀座朝日ビルディングの上層階(3~12階)にオープンした、ハイアット系の新ブランドホテル。コンセプトは「銀座の魅力を体感できる空間」。ホテルの運営は、ホテルエリアを賃貸するオリックス不動産がハイアット・ホテルズ・アンド・リゾーツに委託。客室数は164室、宿泊料金は一泊4万円台が中心。30~40代をメインに、幅広い世代の旅行者をターゲットとしている。

【ザ・スクエアホテル銀座/2018年11月開業】
東京建物が手がける都市型ホテルとして銀座2丁目にオープン。コンセプトは「人と街がつながるスクエア」。米企業再生ファンド・ローンスターの子会社で、外資系企業としては最多のホテルを保有するソラーレ ホテルズアンドリゾーツが運営する。客室数は182室、宿泊料金は一泊2万~3万円台が中心。

【東京エディション銀座/2020年開業予定】
大手不動産デベロッパーの森トラストは、2020年春に高級ライフスタイルホテル「東京エディション銀座」を銀座2丁目にオープンする。ライフスタイルホテルとは、デザイン性の高い空間と宿泊以外の付加価値をテーマに、オリジナリティのあるステイを提案する新しい感覚のホテルだ。
同ホテルのデザイナーには、新国立競技場を設計した建築家の隈研吾氏を起用。ホテルの運営は、大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルに委託する。「エディション」はマリオット系の最上級クラスとなるラグジュアリーな新ブランドで、宿泊料金は一泊8万~10万円(未定)の水準になると見られている。

【ACホテル・バイ・マリオット東京銀座/2020年開業予定】
東武鉄道とマリオット・インターナショナルは、2020年夏に「ACホテル・バイ・マリオット東京銀座」を銀座6丁目にオープンする。運営は東武ホテルマネジメントが担当。マリオットの「ACホテル」は、アジア初進出となるアッパーミドルクラスのライフスタイルホテルで、若者を中心としたビジネス・レジャーユースの旅行者をターゲットにしている。

独自のコンセプトを打ち出す個性派ホテルも

その他、従来のホテルにはない独自のコンセプトや付加価値を打ち出し、大手ブランドとの差別化を図る宿泊特化型のホテルも登場している。

【MUJI HOTEL(ムジホテル)/2019年4月開業】
生活雑貨店を展開する良品計画が、銀座3丁目の外堀通り沿いに開業した日本初の無印良品のホテル。ビルの地下1階~6階が世界最大規模の無印良品の旗艦店、7階~10階がホテルの客室(全9タイプ・79室)となっており、6階にはフロントやギャラリー、和食レストラン、地下1階にはダイニングレストランも入る。ホテルの運営は、小田急電鉄の子会社UDSが担当。
同ホテルのコンセプトは「アンチゴージャス、アンチチープ」。客室にある家具やアメニティグッズは下階の店舗で販売している商品をそろえ、宿泊を通して無印良品の世界観を体験してもらい、ブランド力をアピールする狙いだ。宿泊料金は一泊1万4900円~5万5900円で、年間を通して同一料金で利用できる。

【レムプラス銀座/2019年12月開業予定】
眠りに特化したホテルブランド「レム」を展開する阪急阪神第一ホテルグループは、2019年12月に「レムプラス銀座」を銀座8丁目に開業する。「もっとよい眠りを」をコンセプトにしたレムホテルは、全室に高品質オリジナルベッド、レインシャワー、マッサージチェアを完備するほか、アメニティグッズやインテリア、香りにいたるまで眠りにこだわった快眠仕様が売りだ。
そんな「レム」のコンセプトを継承しつつ、さらに快適性を向上させた「レムプラス」は、ソファのあるダブルルームが中心となっており、ベッドサイズもクイーンサイズ(160センチ幅)にグレードアップ。客室数は238室で、宿泊料金は一泊1万3200円~となる予定。

銀座に「泊まる」という新たなスタイルを提案

ホテル業界の関係者によると、2020年の銀座エリアのホテルの客室数は約6000室に達し、2016年末(約3900室)から5割ほど増えると予測されている。では、なぜ多くのホテルが銀座に進出しているのだろうか。その狙いとして、一つは東京五輪やインバウンドへの対応、もう一つが、銀座という一大商業地でブランド力をアピールすることだという。

これまで銀座といえばショッピングや食事がメインで、「泊まる」という選択肢はあまりなかった。富裕層が買い物をする高級ブランド店や、成熟した大人を楽しませる飲食店は多くあるのに、そうした人たちが泊まりたくなるようなホテルが少なかったのだ。
そんな顧客層にもマッチする「銀座ステイ」という新たなライフスタイルを提案することで、それが結果的に銀座全体の名声を上げることにもつながる。銀座に泊まる人が増えれば、それだけ周辺の店への波及効果も大きくなり、銀座エリアのホテル進出による地域への経済効果は、年間487億円におよぶとも見られている。

「量・汎用性」ではなく「質・個性」を追求

ただ、ホテル業界にとって銀座は建築規制が厳しいうえに、不動産の取得競争が激しく、広い土地を確保しにくいのがネックとなる。車寄せやバンケット(宴会場)などの施設を設ける余裕がなく、客室数も100~200室程度しかとれないため、結婚披露宴などの大型宴会や客数で利益を上げるのが難しいのだ。これまで銀座にホテルが少なかったのも、そうした理由が大きい。

そこで今回、銀座に進出する各ホテルでは、ハイクラスな新ブランドを投入して客室単価を高めるとともに、低層階にテナントなどを誘致することで収益を確保。ネックを逆手に取り、ホテルの規模をサイズダウンすることで、「量や汎用性」ではなく「質や個性」を追求する戦略を打ち出す。

また、ホテルを利用する顧客の意識やニーズも、時代とともに変わりつつある。ここ最近は、何でもある従来型の複合ホテルではなく、何かに特化したライフスタイル系のホテルに支持層が広がり、リピートされる傾向が高まっているという。盛大なパーティーや結婚式はできなくても、日常を離れたサードプレイス(職場でも家庭でもない第3の居場所)として快適なステイを満喫できる……。それが銀座のホテルの新たなスタイル・魅力として定着し、ファン層を広げていることは間違いないだろう。

2020年以降、都心部の多くのホテルで閑古鳥?

一方で、2020年の東京五輪に向けて、銀座以外の都心部でもホテルの建設ラッシュがピークを迎えており、逆に供給過多を指摘する声も上がっている。五輪期間の需要を見込んでホテルを建設しても、終わった後に閑古鳥が鳴くのは、国内外の過去のケースを見れば明らかだ。一時的に乱立したホテルの多くは、またたく間に淘汰され、箱モノだけが負の遺産として残る。

そうした懸念も広まる中、ますますヒートアップする銀座のホテル競争……。
果たしてどこが勝ち組となり、将来的に生き残っていくのだろうか。2020年以降の真の正念場に向けて、その実力と真価が試されようとしている。

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。

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