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拡大する外食の宅配代行。業界躍進の理由は軽減税率にあった!

【転載元】
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自宅にいながらにして、そばや中華料理を電話で注文して配達してもらう……。そんな昭和の時代から続く「出前」がいま様変わりを遂げ、老若男女を問わず大流行中だ。

米国のシェアリングサービス大手のUber(ウーバー)が、日本を舞台に飲食店の「宅配代行」を軌道に乗せたことで一気に火がつき、そこに既存の国内宅配会社も積極的に参入。まさにいま、熾烈なシェア争いが起こっている。その理由のひとつに、秋からの消費税増税後、テイクアウトや出前は税率据え置きの軽減税率の対象になっていることが挙げられる。
ショッピングもスマホで、食事もスマホで……。私たちの生活様式は明らかに大きな変化の過程にあるが、今回は飲食業界で注目が集まっている「宅配代行」の今後の成りゆきについて考えていこう。

消費者と飲食店を結ぶ架け橋「Uber Eats(ウーバーイーツ)」

多くの飲食店にとって、昔でいう「出前」= 外食の宅配サービスは、その店にとっては売上拡大のために、ぜひ導入してみたいサービスのひとつだ。
しかし、現代のような人手不足と人件費高騰の時代に、実際に宅配サービスを事業化するのはなかなか困難といえる。一方、仕事や子育てなどに日々忙しく、食事の準備に時間をかけたくない消費者側からすれば、自宅にいながらにして手っ取り早く好きな食事を注文できて、しかも自宅まで持ってきてもらえるのなら、こんな便利なことはない。

そこで現れたのが、飲食店と消費者の間に入って宅配を代行する業者だ。

ご存じの方も多いだろうか、米国でシェアリング配車サービスブームを起こしたUber(ウーバー)が、なんと日本では飲食店の宅配代行サービスを事業化している。「Uber Eats(ウーバーイーツ)」として2016年に事業を開始して以来、この3年で急速に売り上げを拡大し、加盟する飲食店は9都県で7000店以上にまで増えている。

シンプルかつ手軽なUber Eatsのしくみ

図を参照にしてもらうと一目瞭然だが、Uber Eatsの宅配代行サービスはいたってシンプルだ。

 1 客はスマホのアプリから飲食店とメニューを検索 
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 2 Uber Eatsが注文を受けて、内容を飲食店に伝える 
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 3 飲食店は注文内容のメニューを調理 
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 4 Uber Eatsは配達要員の登録スタッフにデリバリーを依頼 
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5 スタッフは飲食店で料理を引き取り、客のもとへ配達 

3者Win-Winのシステム

図で表した通りUber Eatsの宅配代行サービスのしくみはシンプルなものだが、料金のしくみもシンプルだ。
●Uber Eatsは注文した客から配達料を受け取る
●飲食店からは加盟店として手数料を受け取る
飲食店にとって手数料はばかにならないが、それでも宅配経験のない飲食店にすれば、新しい顧客を開拓するチャンスになるし、従業員を配達にまわしたり、雇うよりはずっと安くあがる。

さらに、注文を受けた料理の配達を担うのは、Uber Eatsが直接雇用している従業員ではなく、注文が入ったときにオファーに応えられる登録スタッフだ。これによってUberは無駄な人件費をかかえなくてすむ。

このように、客はスマホの画面をクリックだけで料理を届けてもらえ、Uberと飲食店は双方で利益を得られる。3者Win-Winのシステムが出来上がっているのだ。
最近の話題としては、Uber人気に触発されてか、スターバックスもUber Eatsに加盟。東京都内の3店舗で宅配サービスを試験的にスタートした。エスプレッソビバレッジをはじめ、スイーツやスナック類、タンブラーやコーヒー豆などが、Uber Eatsを通して購入できるという。

出前館は、宅配拠点に新聞販売所を加えて拡大

Uber Eatsの成功は、国内の既存の外食宅配サービス事業者を大いに刺激した。
夢の街創造委員会が運営する老舗の宅配ポータルサイト「出前館」は、以前から外食の宅配サービスを行っていたが、ここにきて「打倒Uber Eats」の動きを加速させている。

たとえば、大手外食チェーンへの積極的な働きかけも「打倒Uber Eats」の一環だ。
牛丼の「吉野家」や「カレーハウスCoCo壱番屋」、ギョーザの「大阪王将」などと次々に提携し、各社とも加盟店として加わった。一方で、地域の個人飲食店の取り込みにも地道に取り組んでいる。出前館サイドの発表によれば、加盟店は1万8000店にのぼり、前年比12.3%増。
2018年夏の調査によれば、直近1年間で1回以上注文したアクティブユーザーの数は269万人にものぼり、その伸び率は4.1%、配達拠点は120カ所を超えている。

また、出前館の取り組みとしてユニークな点は、一部の新聞販売所と契約を結んでいることだ。意外な取り合わせだが、これは朝晩の新聞配達時間をのぞいた昼間の時間帯はそのスペースを有効活用するというアイデアに基づくもの。新聞配達時間をのぞいた昼間などに、従業員には配達要員としてデリバリーを担ってもらおう……という出前館の配達拠点に新聞販売所を組み入れたものだが、新聞配達を行う側にとっても、空き時間を利用したいい副業となっている。

ライドオンエクスプレスや、ぐるなび、すかいらーくも


出前館のほかに、ライドオンエクスプレスや、ぐるなびの動きも注目されている。
ライドオンエクスプレスは出前寿司で有名な「銀のさら」と組んで、宅配サービスに積極的に乗り出した。またぐるなびは、出前、宅配、デリバリーの総合サイト「ぐるなびデリバリー」に加え、弁当を中心とした名店の味を手軽に注文できる「ぐるなびデリバリーPremium」を新たに展開している。

ちなみにこちらは宅配代行ではないが、すかいらーくは、グループ各社の「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」「夢庵」「魚屋路」など国内3200店舗のうち約1000店舗で、自前で料理の宅配サービスを始め、今後の宅配需要の拡大を見込んでいる。これは人材派遣会社と提携し、配達人員を柔軟に確保できるように体制を強化したもの。2020年までに宅配サービスを利用できる店舗を、5割増の約1500店舗へと一気に増やす強気の計画を打ち出している。

軽減税率が、宅配サービス拡大に追い風

市場調査会社のエヌビーティー・ジャパンによると、日本の外食宅配サービスの市場規模は、2016年が前年比7%増の3770億円。17年が前年比3%増の3857億円と伸びている。

市場が拡大している背景には、スマホで簡単に注文できる環境が整ったことに加え、買い物や調理、片づけといった手間を宅配で簡単に済まそうとしている人が増えているなど、共働き世帯増加も一因としてあげられる。共働き世帯の増加については、内閣府によると2017年で1188万世帯にのぼり、専業主婦世帯の約2倍にまで増えていることが明らかになっている。

もうひとつ外食宅配サービスにとって追い風になっているのが、10月の消費税増税だ。レストランなどでの外食は、ほかと同じく課税額が10%に引き上げられるが、料理のテイクアウトや宅配は食材などとともに8%に据え置かれることになっている。

── 同じメニューながら、店で食べるのと家で食べるのとで2%の差が生まれることなる。もちろん、宅配には手数料が加算される見込みなので、いちがいに安いと決めつけるのは早計だが、税率の据え置きは料金を支払う消費者側にすれば、最初の印象として「安い」という感覚を抱くことになる。さらにそこに「便利さ」が加われば、利用しない手はないからだ。
こうした点が、宅配サービスに大いに追い風になっているのは確かだが、この秋、いよいよ消費税があがる。その変化の中で、今後ますます外食の宅配サービスが増えていくことは間違いないだろう。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。

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