スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

【カンボジア】大使館「短期渡航の中止を」[社会](2021/07/06)

カンボジアで新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、在カンボジア日本大使館が同国への短期渡航の計画を中止するよう、邦人に繰り返し呼び掛けている。医療機関の病床不足が懸念される中、感染者用隔離施設のインフラが十分ではないためだ。隔離経験者によると、施設は衛生環境が悪かったり、昆虫食が出されたりするケースもあるといい、日本人にとって同国での隔離は厳しさを極めるもようだ。

感染者用隔離施設の様子。隣の人とはパーテーションで区切られていない=6月、プノンペン(提供写真)

感染者用隔離施設の様子。隣の人とはパーテーションで区切られていない=6月、プノンペン(提供写真)

大使館は3日、在留邦人やカンボジアへの渡航を計画している人に宛てたメールで、「6月に入り再度、感染者数が増え始め、特に直近1週間は1日の新規感染者数が1,000人を超える日もあるなど、予断を許さない状況が続いている」と説明。日本政府は現在、カンボジアの感染症危険情報をレベル3(渡航中止勧告)にしており、短期渡航を検討している人には、「渡航をやめてほしい」と呼び掛けた。

大使館はさらに、「カンボジア国内で感染した場合、無症状であっても政府が指定した隔離施設に収容される」と説明。「こうした施設では大きな空間に簡易ベッドが並べられただけで、入居者同士を隔てるパーテーションはなく、プライバシーが一切ない」とし、「日本人にとっては厳しい環境に置かれることとなる」と注意を呼び掛けた。

5月以降は自己負担による医療機関での隔離も認められているが、感染者数の増加に伴い病床不足が深刻化。医療機関から受け入れを断られることもあるという。

最近は、感染した邦人からの隔離生活に関する相談が増えているが、「カンボジア国内における隔離措置は、カンボジア政府の公衆衛生当局による指導や措置に従う必要がある」と指摘。「医療体制が逼迫(ひっぱく)しており、柔軟な対応の余地がほとんどなく、当館による支援は非常に限られている」とした。大使館は5月にも、同様の注意喚起メールを送っている。

■隔離施設、ネズミやゴキブリも

実際に隔離を経験した邦人の話を聞くと、状況の厳しさがうかがえる。ある邦人女性は、子どもと一緒に首都プノンペンの大規模隔離施設に収容された。女性は施設内での食事について、「子どもが食べられない辛い料理や、脂っこい食べ物ばかりだった。昆虫が入った食事が出されることもあり、栄養があるとはいえ、食べることができなかった」とコメント。施設に医療従事者は常駐しておらず、問題がある場合は電話をかける必要があり、英語での意思疎通も困難だったという。

感染者用隔離施設で出された昆虫食=6月、プノンペン(提供写真)

感染者用隔離施設で出された昆虫食=6月、プノンペン(提供写真)

また、「掃除がずっとされず、放置されたごみにネズミやゴキブリがいるような不衛生な場所だった」と説明。「電気は24時間ついたままで、夜中も音楽やテレビの音が流れたままだった」とし、療養が困難な状況だったことを明かした。

隔離施設では差し入れなどの制限が設けられている上、届けられた品物は炎天下で数時間放置されることもある。食事を届けることは難しい状況だ。大使館は、「PCR検査などで陽性とされた場合は、帰宅できずそのまま施設などに収容される可能性がある」と説明。「差し入れや物品調達などについて、家族や関係者とよく相談するなど、事前の備えを心掛けてほしい」と呼び掛けている。

■デルタ株に警戒、帰国者から感染拡大

カンボジアは他国に比べ新型コロナの感染状況が落ち着いていたが、2月下旬以降にプノンペンでクラスター(感染者集団)が相次ぎ、陽性者が急増。プノンペンなどでは4月から5月にかけてロックダウン(都市封鎖)が実施され、厳格な外出・事業活動の制限が敷かれた。一時感染者数は減少したが、ロックダウンの解除後に再び感染が拡大し、6月末には累計感染者が5万人の大台を超えた。

地元紙によると、地方でも陽性者が増えており、観光地として有名な北西部シエムレアプなどでは、1日100人を超えた日もある。各地では中国製を中心とした新型コロナワクチン接種が急ピッチで進んでおり、3日時点で累計440万人以上が接種を受けたが、感染拡大に歯止めはかかっていない。

6月下旬以降は、インドで初めて特定された変異株「デルタ株」の感染者が20人以上確認された。陽性者のほとんどは、デルタ株の感染が急拡大しているタイから帰国した労働者で、政府は水際対策を強化している。

フン・セン首相は7月1日、全ての国境検問所からの入国者に簡易の新型コロナ検査を実施すると説明。陽性反応が出た場合はPCR検査を実施し、デルタ株の感染者とその濃厚接触者には21日間の隔離措置を取るとした。首相は、「デルタ株は感染力が高く、警戒を強める必要がある」と強調し、関係当局に迅速な対応を呼び掛けた。

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント