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【フィリピン】大統領「接種拒否なら逮捕」[社会](2021/06/23)

フィリピンのドゥテルテ大統領は21日夜、新型コロナウイルスのワクチン接種について「国民は打つか、逮捕されるか選ばなければならない」と述べ、拒否する国民を逮捕する考えを示した。感染対策が長引いているにもかかわらず累計感染者は東南アジアで2番目に多く、指示に従わない国民に怒りをあらわにした。ただ逮捕には法整備が必要で人権侵害の懸念があるほか、非常事態の中で大統領の独裁色が強まっているとの批判も出ている。

ドゥテルテ大統領はワクチンを接種することが新型コロナウイルスの感染を収束させる唯一の解決策になるとの見解を示している(大統領府提供)

ドゥテルテ大統領はワクチンを接種することが新型コロナウイルスの感染を収束させる唯一の解決策になるとの見解を示している(大統領府提供)

ドゥテルテ氏は、国民に向けた演説で「公衆衛生上の危機にある。ワクチンが唯一の解決策だ」と強調した。さらに「政府の指示に従わない人が多い。ワクチンを打ちたくなければフィリピンから出て行け」と怒りをあらわにした。

接種を拒否する人がウイルスを運び、感染を拡大させる恐れがあるとも指摘した。内務・自治省に接種を拒否した場合の逮捕を指示するとともに、全ての自治体に接種を拒んだ人を集計するよう求める方針を示した。

大統領の発言は、ワクチン接種が必ずしも国民に受け入れられていないことへのいらだちが背景にある。世論調査機関ソーシャル・ウェザー・ステーションズ(SWS)が5月に発表した調査で、ワクチンを「接種したくない」と回答したフィリピン人は33%に上った。

ロケ大統領報道官は22日の会見で、大統領の発言に触れ「ワクチンの強制接種や違反者に罰則を科すことは可能だが、法整備や条例が必要になる」と説明した。人権侵害に当たるかどうかについては「国家が非常事態の場合、個人の自由よりも国家が優先されることがある」と話した。

元議員で人権問題に関する弁護士を務めるネリ・コルメナレス氏は、NNAに対し「ワクチンを強制接種させる法律はない。法学部の学生でも知っていることだが、大統領は自身の言葉が法律だと信じ込んでいるようだ」と批判した。

民主主義の後退にも懸念が高まる。コルメナレス氏は「政府のコロナ対策は成功しているとはいえないが、権力で国民の生活や安全、表現の自由を奪っている」と述べ、独裁色が強まっているとの見方を示した。

国内感染者は累計で140万人に迫り、東南アジアで2番目に多い。一方、政府のワクチン接種計画で必要回数の接種を終えた人は、20日時点で人口の約2%にとどまっている。

保健省によると、全国の10万人当たりの罹患(りかん)者数は、6~19日の1日当たり平均で5.91人と、その前の2週間の5.55人から増加。感染リスクを抑える目安である7人を下回っているものの、従来型よりも感染力が強い変異株を要因として中部ビサヤと南部ミンダナオを中心に感染が拡大していることが背景にある。

感染対策違反の逮捕を巡っては、ドゥテルテ氏が5月、外出時に義務付けているマスクを適切に着用していない場合は逮捕すると警告していた。内務・自治省は大統領の指示を受けて準備を進め、実際に逮捕者が増えた。

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