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【台湾】コロナ警戒第3級から1カ月[社会](2021/06/16)

台北と新北の両市を対象に新型コロナウイルス感染症の警戒レベル(第1級が最も緩く、第4級が最も厳格)が第2級から第3級に引き上げられて15日で1カ月がたった。外出自粛や集会の制限など市民生活への影響を伴うさまざまな措置が導入され、両市の新規感染者数は5月下旬のピーク時から大幅に減少した。ただコロナ対策を担う中央流行疫情指揮中心は「警戒を緩めることはできない」として、引き続き感染拡大防止に注力する方針を示している。

5月15日の新規感染者数は台北市が89人、新北市が75人だったが、指揮中心が過去の感染者数の修正分を発表し始めた22日以降、当日と追加の発表分の合算で200人を上回る日が続くようになった。ピーク時には台北市が308人(5月26日)、新北市が384人(5月22日)に達した。

だが警戒レベルが引き上げられて約3週間たった6月上旬から減少が顕著になり、台北市では6月6日以降、新規感染者数が100人を下回る日が続いている。新北市でも同日以降200人を下回り、15日は過去1カ月間で最も少ない65人となった。

今回の感染拡大局面では台北市万華区の茶芸館(接待を伴う飲食店)関連で多数の感染者が確認されたが、6月6~12日の万華区の感染者数は64人と、最も多かった5月16~22日の587人と比べて急減した。

両市では警戒レベルが第3級に引き上げられた15日以降、外出時の常時マスク着用が義務付けられたほか、室内で5人以上、屋外で10人以上が集まることが禁止された。企業の間では在宅勤務を導入する動きが広がり、NNAが実施したアンケートでは、台北と新北に拠点を置く日系企業の9割超が5月中旬以降に勤務体制を見直していた。

中央通信社によると、指揮中心の陳時中指揮官は「感染者数はここ数日間比較的落ち着いている」と述べ、特に台北と新北両市で事態が好転しているとの認識を示した。

一方で、台北市の柯文哲市長は一層の抑え込みに向けて感染者の早期発見に力を入れる方針を示している。14日の記者会見では「十分な量のワクチンがない状況下では政府が対策を打ち出さない限り、警戒レベル第3級を解除することはできない」と話した。

■接種率は1桁

ワクチン接種が喫緊の課題となる中、15日からは高齢者を対象にした接種が台北と新北両市を含む各地でスタートした。自由時報によると、台北市士林区にある新光呉火獅紀念医院(新光医院)の接種会場には早朝から多数の高齢者が付き添いの家族らとともに訪れた。

台北市では14日午後8時までに85歳以上の高齢者約3万2,000人がワクチン接種を予約した。柯氏は「ワクチン接種がコロナ禍を乗り越える最終的な手段」とみているが、中央通信社のまとめによると、台北市の接種率は6月10日時点で5.65%にとどまっている。新北市の接種率は2.91%と台湾全域(3.23%)より低い水準にある。

台湾政府がこれまで手に入れたワクチンは日本から提供を受けた124万回分を含めて計211万6,600回分。台湾政府は追加確保を急ぐ構えだが、専門家からは変異株に対応するため欧米で開発が進められている第2世代のワクチンを確保するよう求める声も上がっている。

■両市以外で警戒強化呼び掛け

新型コロナの警戒レベルは現在全域で第3級に設定され、期限は今月28日までとなっている。指揮中心は12~14日の端午節連休で人の移動が一定程度あったとして、感染状況を警戒する必要があると呼び掛けている。

指揮中心の陳宗彦副指揮官は15日の記者会見で、台北と新北両市の感染状況は次第に落ち着いてきているものの「その他の県市は注意が必要だ」と強調。連休で人が移動したため、向こう2週間は警戒を強め、感染拡大防止措置を厳格に行わなければならないと説明した。

陳氏は感染状況が落ち着きつつある時でも、感染者の追跡調査や早期発見に努める必要があるとして地方政府に協力を呼び掛けた。

台湾各地で高齢者を対象にした新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった=15日、新北(中央通信社)

台湾各地で高齢者を対象にした新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった=15日、新北(中央通信社)

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