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【台湾】コロナ域内感染者、最多続く[社会](2021/05/17)

台湾で新型コロナウイルスの域内感染者数の増加が続いている。域内感染者は週末の14~16日にかけて3日連続で過去最多を更新。事態を重く見た政府は15日午前に臨時記者会見を開き、台北と新北両市の警戒レベル(第1級が最も緩く、第4級が最も厳格)を第2級から第3級に引き上げた。これまで活気にあふれていた台北の街からは人が減り、企業は週明けからの勤務について調整を迫られるなど、感染を抑え込んできたこれまでの日常が一変した。

警戒レベルが引き上げられた台北市では、繁華街である西門町の人通りが激減した=16日(中央通信社)

警戒レベルが引き上げられた台北市では、繁華街である西門町の人通りが激減した=16日(中央通信社)

警戒レベルが第3級に引き上げられ初めての日曜日となった16日午後、台北市中山区にある屋台街を訪ねた。通常であれば約100メートルほどの通りに軽食や果物などを販売する屋台がびっしりと並び、昼夜を問わず地元客でにぎわうが、この日は出店していた屋台も来店客もまばらだった。

「域内感染者が180人に達した15日から客の数が急激に減った。みんな感染を警戒して出歩かないんだと思う」。果物を販売する屋台で店番をしていた男性がこう話し肩を落とした。

屋台街の近くにあるスーパーチェーン最大手「全聯福利中心(PXマート)」の店舗を訪ねると、入り口に来店客数人が並び、店先に掲示されたQRコードを読み取っていた。来店客と連絡が取れるよう名前と電話番号の登録を求める「実聯制」だ。登録を済ませた後、手指のアルコール消毒と体温測定を済ませて入店する流れ。店員によると、警戒レベルが第3級に引き上げられた15日から始めたらしい。

15日の臨時記者会見後、台北市内のスーパーなどには客が殺到し、食料品などをまとめ買いする事態が起こったが、この日の店内は会計待ちの列もほぼなく落ち着いていた。ただ、商品の品出しが間に合わないのか、商品は段ボールに入ったままで、混乱の跡がうかがえた。

台北市中山区の屋台街はいつもの活気が失われていた=16日午後2時40分ごろ(NNA撮影)

台北市中山区の屋台街はいつもの活気が失われていた=16日午後2時40分ごろ(NNA撮影)

■コロナ禍が「身近」に

台湾域内の感染者数は14~16日に3日連続で最多を更新した。14日に29人だった域内感染者は15日には6倍余りとなる180人に急増した。16日は206人と前日から26人増えた。

域内感染者の居住地を見ると台北と新北の両市に集中していることが分かる。15日は164人、16日は186人が両市の居住者で、それぞれ全体の9割を超えた。

16日付自由時報によると、台北市の感染者は同市万華区の茶芸館(接待を伴う飲食店)関連が多い。台湾衛生福利部(衛生省)中央流行疫情指揮中心の陳時中指揮官は15日の台北市の感染者89人のうち、51人が茶芸館関連だったと明らかにした。一方、新北市の75人は同市五股区や蘆洲区、板橋区、新荘区などに分散していた。

陳指揮官は感染者が急増したことで「以前のように感染者一人ひとりの調査を詳細に行うのが難しくなった」と述べ、事態が変化していることを説明した。

陳指揮官ら政府高官は15日、台北と新北の両市で新型コロナウイルス感染症が急速に広がっているとして、両市の警戒レベルを第2級から第3級に引き上げると発表した。期間は同日から28日までに設定。感染防止措置を強化し、外出時の常時マスク着用や遠隔勤務導入などを求めた。

台北市に住む30代の台湾人女性は「今までは世界のコロナ禍のニュースを見ても、台湾とは関係ないことだと思っていた。それが急に身近なことになって、緊張している」と述べた。感染拡大の一因には、これまで抑え込みに成功していたことによる人々の慢心があったと指摘した上で「(政府が第3級の期限に設定している)28日までに(感染拡大が)収まってほしい」と期待を寄せた。

■台北と新北の公務員は時差出勤

台湾の政府機関や企業は週明けからの時差出勤や在宅勤務の導入を発表するなど、急速に悪化する感染状況への対応に追われた。

中央通信社によると、行政院(内閣)人事行政総処は16日、警戒レベルが第3級に引き上げられた台北と新北両市の公務員について、17日から時差出勤を実施すると発表した。

両市に居住または勤務する中央と地方の公務員が対象。28日まで、出勤は午前7時半~10時、退勤は午後4時半~7時に行う。ラッシュを避けることで、通勤時の感染リスクを下げるのが狙いだ。

大手企業では、モバイル端末向けIC設計世界大手、聯発科技(メディアテック)や台湾自動車販売最大手の和泰汽車(トヨタ自動車系)などが在宅勤務を実施する方針を明らかにしている。

郵便業務を行う公営企業の中華郵政は16日、内勤職員1人が新型コロナウイルスに感染したことを明らかにした。台北市金山南路と愛国東路にあるビル2棟は既に消毒を実施したが、2棟に勤務している職員は17日は別の場所で勤務すると説明した。

台湾の大手民間シンクタンク、中華経済研究院(中経院)の王健全副院長は「感染拡大局面が短期で終われば、株式市場と消費者心理に大きな影響はないが、(感染拡大の)衝撃が大きくなれば、今年の経済成長を左右する要素になる」と警戒感を示した。

台北市や新北市では多くの飲食店が持ち帰りのみの営業に切り替えた=16日(中央通信社)

台北市や新北市では多くの飲食店が持ち帰りのみの営業に切り替えた=16日(中央通信社)

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