【香港】ワクチン接種で隔離期間短縮[社会](2021/05/10)
香港政府は7日、新型コロナウイルスの流入を防ぐため来港者に義務付けている強制検疫(隔離)について、同ウイルスのワクチンを接種済みの人に対しては期間を短縮すると発表した。日本からの渡航者は本来の21日間が14日間に、中国本土からの入境者は14日間が7日間にそれぞれ緩和される。12日から実施する。
政府が進める「ワクチンバブル」の概念に基づく規制緩和の一環。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が先月12日の会見で方針を打ち出していた。
香港では外国からの渡航者に対する隔離措置を、政府による5段階の感染リスク分類に基づいて実施している。このうち、リスクが「低い(D)」国については本来14日間の隔離期間を7日間に、「中程度(C)」と「高い(B)」に分類される国は21日間を14日間にそれぞれ短縮する。
Dに該当するのはオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの3カ国。日本を含む大部分の国はCに分類され、Bには米国、カナダ、ロシア、フランス、ドイツ、インドネシアなど17カ国が指定されている。
「非常に高い(A2)」に該当する英国とアイルランドからの入境者は、12日以降も21日間の隔離を受けなければならない。「極めて高い(A1)」のブラジル、インド、ネパール、パキスタン、フィリピン、南アフリカで直近の滞在歴がある人に対しては、引き続き民間旅客機で香港へ入境することを禁止する。
外国からの渡航者とは区別して扱われる本土、マカオ、台湾からの入境者については、隔離期間を本来の14日間から7日間に短縮する。
いずれのケースも、強制検疫の終了後は7日間の自己健康管理が求められ、所定の日にPCR検査を受けることが義務付けられる。隔離短縮が適用されるためには2回目のワクチン接種から2週間以上経過していることが条件で、対象となるワクチンの種類は政府がウェブサイトでリストを公表するとしている。
■変異株、域内拡散は認められず
政府は同日、香港で先月から相次いで域内感染が見つかった感染力の強い変異株「N501Y」について、広範囲に域内感染が広がっている状況は認められないとの見解を示した。
香港では同日までに市中で11件のN501Y感染例があるが、うち先月17日に市中で最初のN501Y感染例となったインド系男性(29)は来港後の隔離期間中にホテル内で感染したものであることが判明。残り10件のうち7件は同男性から感染が広がっており、3件は海外で感染していたものであることが分かった。
陳肇始(ソフィア・チャン)食品・衛生局長は「今回の変異株感染経路はほぼ明らかになった」と説明。政府は感染者らの滞在先や立ち寄り先で徹底したPCR検査を実施してきたが「現時点で爆発的な感染の広がりは見られていない」と述べた。
インド系男性から広がった今回の感染とは異なる変異株感染が起きている可能性については、政府衛生署衛生防護センター(CHP)が「現時点でそうした証拠はない」と否定した。
■感染住宅への強制検疫を緩和
変異株の感染が当初懸念されたほどの広がりを見せなかったことを踏まえ、政府は変異株感染者の居住地に対する強制検疫措置を改める。これまでは変異株感染者と同じ建物の居住者を全て濃厚接触者と見なし、政府が指定する検疫センターに移送して21日間隔離してきた。今後は同居者以外にこうした措置は取らず、定期的なPCR検査を受けるだけでよくなる。
また、隔離対象となる濃厚接触者に対しても、ワクチンを接種済みであれば隔離期間を短縮する。2回目の接種から2週間以上経過していることを条件に、通常の濃厚接触者は14日間の隔離を7日間に、N501Yの濃厚接触者は21日間を14日間にそれぞれ減らす。
■インド系男性ら2人を逮捕
政府は8日、市中で最初にN501Y感染が確認されたインド系男性とその友人女性(31)を逮捕したと発表した。感染経路を割り出すための当局調査に対し虚偽の供述をし、必要な情報を提供しなかった疑い。
当局の調査では、2人が参加した知人の集まりを介して複数のフィリピン人家政婦らに変異株感染が広がったことが分かっている。2人はこうした行動履歴を当局に対して速やかに明かそうとしなかったとされる。衛生署報道官は「こうした行為は極めて無責任であり、感染経路の割り出しに支障を来すとともに、公衆衛生を著しく脅かす」と非難した。