【中国】清明節の観光・消費が活況[観光](2021/04/07)
中国の清明節連休(3~5日)の観光・消費市場が活況だ。国内を旅行した人の数は1億人を超え、前年から2倍以上を記録。新型コロナウイルス感染症がまん延する前の2019年同期の水準に戻した。春節(旧正月)の移動自粛による反動需要が生まれた形。労働節(メーデー)連休(5月1~5日)も伸びるとみられ、第2四半期(4~6月)の経済成長率を押し上げる原動力の一つとなりそうだ。
政府の統計データから清明節の国内旅行が大きく伸びたことが見て取れる。
文化観光省によると、清明節連休に国内旅行をした人の数は前年同期比2.4倍の1億200万人(延べ人数、以下同)。19年同期の94.5%の水準だった。観光収入は前年同期から約3.3倍の271億6,800万元(約4,568億4,000万円)に急伸。19年同期の56.7%となった。
20年同期の国内旅行者は61.4%減の約4,300万人。コロナ禍が大きく響いた。19年同期は10.9%増の約1億1,200万人。今年は19年同期の水準にまで回復した形だ。観光収入は19年が10.9%増の478億9,000万元、20年が80.7%減の82億6,000万元だった。
中国新聞社電などによると、中国社会科学院旅遊研究センターの呉若山研究員は、「今年の春節は新型コロナウイルス対策として、多くの都市で移動自粛が呼び掛けられた。春節の旅行、消費意欲が蓄積されたまま、清明節に需要が放出された」と指摘した。
今年の清明節連休はアウトドア・郊外旅行、農村旅行、マイカー旅行が人気。文化観光省直属の研究機関、中国旅遊研究院によると、調査対象者の57%はアウトドア・郊外旅行、32.5%は花鑑賞の旅行をそれぞれ選択。マイカー旅行の比率は60%だった。文化・レジャー活動に参加した人は93.4%で、博物館や図書館、美術館の来場者も目立って増えたという。
交通機関の利用も拡大した。交通運輸省によると、連休期間の公共交通機関の旅客数は2.4倍の延べ1億4,452万人。このうち航空旅客数は約3.6倍の延べ432万8,000人となり、19年同期からは10.7%減った。平均搭乗率は8.1ポイント上昇の73.4%で、19年同期に比べると7.1ポイント下がった。
■旅行予約も19年同期並みに
オンライン旅行会社(OTA)大手で米ナスダック上場の携程旅行網(トリップ・ドットコム・グループ、旧シートリップ)は5日、連休期間の旅行関連予約が前年同期から4倍に急伸したと明らかにした。携程は「清明節は省をまたぐ今年初の旅行ピークとなった。多くの業務が19年同期を上回っており、観光市場の回復傾向が鮮明化している」と指摘した。ホテル予約数は19年同期から2割以上増えたという。
阿里巴巴集団(アリババグループ)系旅行サイト「飛猪(フリギー)」では、連休期間の旅行関連予約が5.5倍以上に伸びた。農村部での宿泊予約は17倍、観光地などの各種入場券の予約は21倍にそれぞれ急伸した。
OTAの去ナ兒網(ナ=口へんに那)は10日までに連休期間のホテル予約数が前年同期の5.5倍となった。19年同期比では2.5倍だった。人気の旅行先は北京市、上海市の順で、地方の大都市にも人が集まった。
■ネット決済は1.7兆元
活況な観光市場を背景に、消費も伸びたようだ。「支付宝(アリペイ)」や「微信支付(ウィーチャットペイ)」などの第三者決済機関と銀行との決済業務を手掛ける網聯清算によると、3~4日に同社プラットフォームが処理したインターネット決済は48.9%増の1兆7,200億元。1日当たりでは8,600億元の計算となる。決済回数は34.7%増の30億7,900万回に上った。
中国の銀行間決済ネットワークである中国銀聯(チャイナ・ユニオンペイ)は6日、連休3日間の取引額が前年同期比3.6%増の9,036億元だったと発表した。このうち飲食店は9.2%、宿泊施設は7.5%それぞれ増えた。
映画の興行収入は5日夜までの3日間で8億1,400万元となり、清明節期間の過去最高額を更新した。
■大都市好調
実際に大都市を中心に消費が上向いた。北京市商務局によると、百貨店やスーパー、専売店、飲食店、電子商取引(EC)など市内の重点100社を合わせた連休期間の販売額は前年同期比12.6%増の21億5,000万元。19年同期比では6.4%増えた。
市内182カ所の観光地を訪れた人の数は5倍の608万7,000人。19年同期の98.7%となり、19年の水準をほぼ戻した。
上海市では2~4日のオンラインを除く消費額が35.3%増の257億3,000万元だった。19年同期に比べても5.6%増加した。市外からの旅行者による消費額は2倍の29億6,000万元を記録。市内の重点商圏13カ所に位置する百貨店、ショッピングモール48店を訪れた人の数は2.5倍の165万8,000人となった。
旅遊研究センターの呉研究員は、清明節に加え、5月の労働節が消費、観光市場を刺激し、第2四半期の経済成長率を押し上げる要因になると分析した。