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【ミャンマー】一帯封鎖して抗議者を拘束[社会](2021/03/11)

ミャンマーの最大都市ヤンゴンでは10日、国軍の治安部隊がクーデターに抗議する国鉄(MR)職員と家族1万人近くが住む公営住宅を封鎖した。国軍は8日にも別の場所で、デモ隊を捜査するための地域封鎖を実施。路上でのデモ鎮圧以外に強制捜査や拘束を加速しており、在留邦人の間では不安が高まっている。3月に入ってからの欧米、日本の大使らとの会談では、依然として自らの正当性を強調しているもようだ。

ヤンゴン市内では、治安部隊のトラックが日常的に見られるようになっている=10日(NNA)

ヤンゴン市内では、治安部隊のトラックが日常的に見られるようになっている=10日(NNA)

国軍側は10日午前、ヤンゴンの中心部に近いミンガラタウンニュン郡区で、国鉄職員の住む公営住宅や鉄道の駅などを含む一帯を封鎖。同郡区に向かう幹線道路に銃を持った治安部隊員が立ち、往来を止めた。国鉄職員は、軍政に抗議するために業務を放棄する市民不服従運動(CDM)を、労働組合を挙げて継続している。

公営住宅には、CDMに参加する職員約800人とその家族らを含め1万人近くが居住。住民によると、治安部隊は「CDMを続けるなら、立ち退け」と迫った。会員制交流サイト(SNS)や地場メディアの動画で、多くの人が身の回り品を詰めたかばんを持ち、幼い子どもを抱えながら、集合住宅を出る様子が確認されている。

住民の女性、モー・モー・ミャさん(38)も、子ども3人のとともに友人宅に避難。取材に「残っている人はごく一部。CDMに参加していた夫は、拘束から逃れるために別の場所に逃げた」と話した。

国軍側は8日にも、サンチャウン郡区の一部地域を翌日未明まで封鎖した。治安部隊が各戸の居住者記録を使い、デモ隊の居場所を捜査し、30人以上が拘束された。

情報統制のために国軍が圧力をかけている民間メディアには、次々と強制捜査が入っている。8日に免許を剥奪された独立系の「ミッジマ」を含む2メディアの社屋が10日までに強制捜査を受け、拘束者もいるもようだ。

■拘束・指名手配、2千人近くに

ミャンマーの政治犯支援協会(AAPP)によると、クーデターの発生後、拘束もしくは指名手配された人は、今月9日までで1,939人。解放者はそのうち、わずか2割にとどまる。アウン・サン・スー・チー氏が党首の国民民主連盟(NLD)は地域幹部の突然の逮捕が相次ぎ、これまでに2人が拘束後に死亡した。暴行があったとみられている。

治安部隊とデモ隊の衝突は多くの場所で起きており、邦人が巻き込まれるケースも出ている。北部ラインタヤ郡区では、デモ隊を制圧中の治安部隊が邦人の乗っていた車に入り込み、銃を突きつけるケースが発生。日本人だと認識されたことで、攻撃をまぬがれたという。

現場にいる必要がある工場など一部の業種を除き、大半の日系企業は自宅作業としている。建設関連の男性駐在員は「とにかく巻き込まれないように、外出は食料の買い出しなど最小限に控えている」と話した。日本政府は9日、「今後、事態が急変する可能性がある」とした上で、急な用務がない場合は商用便での帰国を検討するよう推奨する「スポット情報」を出しており、日本に退避する人が増える可能性がある。

治安部隊の銃撃で先週3日に15人の死者が出た北オッカラパ郡区では、10日もデモ現場で200人程度が拘束され、発砲によるけが人も出た。ヤンゴン中心部に築かれたバリケードの脇で雑貨店を営む女性(55)は「毎日、治安部隊が来るたびに隠れることの繰り返しだ。メディアの弾圧で、新聞は1紙しか売っていない」と話した。

■国軍、外交団に従来の姿勢変えず

国軍当局は3月に入り、各国の外交官らと会談する姿勢をみせている。5日にはソー・ウィン副司令官が米国のトーマス・ラズロ・ヴァイダ大使とオンラインで、8日には外相に任命されているワナ・マウン・ルウィン氏が日本の丸山市郎大使と首都ネピドーで直接、会談した。9日には欧州連合(EU)軍事参謀部の海軍中将もソー・ウィン副司令官と電話会談。各国は、暴力の早急な停止やスー・チー氏らの解放を求めている。

ただ、外交筋によると「会話、協議という姿勢ではない」状態で、従来通り「総選挙の不正があったために、憲法にのっとり緊急非常事態を宣言し、全権を掌握した」と自らの正当性を主張し続けている。

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