【タイ】ホテルが遠隔勤務プラン提供[観光](2021/01/19)
タイ国内での新型コロナウイルス感染症の再流行を受けて、感染リスクが最も高いとされる首都バンコクなど28都県の民間企業に在宅勤務が要請される中、バンコクのホテルは相次いで遠隔勤務(リモートワーク)向けのプランの提供を開始している。タイの観光業を支えてきた外国人旅行者の回復が見通せない状況であることに加え、国内でも旅行を自粛する動きが強まっていることから、各ホテルは活路を模索している。
オークラニッコーホテルマネジメント(東京都港区)がバンコク・トンロー地区で運営する「ホテル・ニッコー・バンコク」は、客室を1日単位で貸し出すデイユースと4泊5日の宿泊パッケージの2種類のリモートワークプランを提供している。
デイユースの場合は、チェックインが午前8時、チェックアウトが午後8時で、最長12時間にわたり客室を利用できる。料金は1,200バーツ(約4,100円、税金・サービス料込み)。4泊5日の宿泊パッケージもチェックインとチェックアウトの時間は同じで、4,900バーツで提供している。
利用可能な客室は「スーペリア」(客室面積36平方メートル)で、1室当たりの最大利用人数は2人。駐車場や高速インターネット、プール、コピーサービス(1日最大20ページ)を無料で利用できるほか、ホテル内の一部のレストランで20%の割引を受けられる特典が付く。
ホテル・ニッコー・バンコクの担当者によると、仕事の合間にホテル内のプールやレストランを利用でき、快適な環境で仕事ができることが受けており、4泊5日の宿泊パッケージが人気という。「利用者はほぼ100%タイ人で、年齢層は20~40代が中心。月曜日の朝にチェックイン、金曜日の夜にチェックアウトし、週末は実家や自宅に帰るスタイルが多い」と話す。また、高架鉄道(BTS)ライトグリーンライン(スクンビット線)のトンロー駅前に立地していることから、オフィスに行かなければならない場合に交通の便が良いことも人気の理由の一つという。
同ホテルは、昨年3月にタイ政府が新型コロナ感染症対策として非常事態宣言を発令し、在宅勤務を導入する企業が増えた時期に初めてリモートワークプランを提供した。「入国規制により外国人旅行者が激減し、国内でも婚礼やミーティングなどの需要が減退する中、今年に入り再び在宅勤務が要請されたことを受けて、空いている客室をオフィス代わりに提供することにした」(同担当者)。今回は1月末までの提供を予定しているが、需要によっては延長も検討しているという。
■駐在員の需要も取り込み
このほかの外資系ホテルも昨年提供していたリモートワークプランを見直し、新たに提供している。
バンコク・ナナ地区にある「ハイアット・リージェンシー・バンコク・スクンビット」は、午前7時から午後7時まで高層階の客室を利用できるデイユースプランを提供。料金は1,350バーツからで、今年5月末までの提供を予定している。客室のほか、コピー機などが設置されたホテル内のビジネスセンターやプール、ジムなどを利用でき、ホテル内の飲食店で15%の割引を受けられる。
バンコク・チットロム地区にある「インターコンチネンタル・バンコク」は、リモートワークプランとして、客室「グランデ・デラックス」(客室面積45平方メートル)と「コーナー・スイート」(同67平方メートル)を提供している。それぞれ半日から1カ月利用できる4種類のプランがあり、料金は1,900バーツから8万9,000バーツ。別料金で朝食や昼食を追加することもできる。同ホテルの担当者によると、「日本人を含む外国人駐在員にも人気がある」という。
■首都の客室稼働率、12月時点で12%
タイ国政府観光庁(TAT)によると、タイ国内のホテルの客室稼働率は、昨年1~2月は60~70%台だったが、新型コロナ感染症対策として外国人の入国が制限され、国内でも経済・社会活動が制限されたことにより、4月には2%まで落ち込んだ。その後、国内旅行者の増加に伴い回復基調にあったが、12月19日にバンコク西郊サムットサコン県の水産市場でクラスター(感染者集団)が発生したことを受けて、国内旅行を自粛する動きが強まり、同月の客室稼働率は33%にとどまった。
なかでも外国人旅行者への依存度が高いバンコクのホテルは甚大な影響を受けており、客室稼働率は昨年1月の85%から同3月には21%まで下落。5月に7%と底を打ち、それ以降は回復基調にあったが、12月は12%と全国平均を大幅に下回った。バンコクは新型コロナの感染リスクが最も高い「レッド」(高度管理地域)に指定されており、国内旅行者の低迷も続くと見込まれる。
代替隔離施設(ASQ)として海外からの帰国者・入国者に隔離パッケージを提供し、活路を見いだしているホテルが多いが、外国人旅行者の本格的な回復が見通せず、国内旅行者も減少傾向にあることから、当面厳しい状況が続くと予測される。