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【中国】アリババへ締め付け強まる[IT](2020/12/25)

中国国家市場監督管理総局(市場監管総局)は24日、電子商取引(EC)大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)に対し、独占行為があった疑いで立件に向けて調査していると発表した。アリババ傘下の金融会社、バ蟻科技集団(アント・グループ、バ=むしへんに馬)への指導も行う。中国政府はネットサービス大手による市場の寡占を警戒しており、影響力の特に大きいアリババに対する締め付けが強まっている。

市場監管総局は「通報に基づいて」アリババの独占行為を調査していると公表した。自社のネット通販サイトで商品を販売する業者に対し、競合するサイトへの出店を制限する「二選一(二者択一)」の行為があったとしている。

アリババはこれを受けて、「当局の調査に積極的に協力する。業務は全て正常に行われている」とする声明を出した。

一方、中国人民銀行(中央銀行)も同日、人民銀、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)、中国証券監督管理委員会(証監会)、国家外貨管理局がアントに対して「金融の監督管理、公平な競争、消費者の権益保護を着実に実行するよう求める行政指導を行う」と発表した。近日中に実施するとしている。

アントは電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を運営している。同社は人民銀の発表を受けた声明で、「当局からの行政指導を行うとの通知を今日受け取った。真剣に学習し、監督当局の要求を厳格に順守する」とした。

アントは11月5日に上海と香港の両取引所に上場し、史上最高額となる350億米ドル(約3兆6,200億円)を調達する予定だったが、直前に延期となった。上場直前になって証監会と人民銀、銀保監会、国家外貨管理局の4機関がアントの井賢棟董事長ら幹部や、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏を呼び出して指導し、アントによると「上場条件を満たさない可能性がある」との指摘を受けた。

アントは支付宝の決済情報などに基づく信用情報を活用した小口融資などの金融サービス収入を大きく伸ばしている。当局はアントの上場条件として、銀保監会と人民銀が11月2日に発表したオンライン小口融資に関する新たな規制への対応を求めているとされ、上場の実現時期は見えていない。

■規制強化の姿勢鮮明に

アリババは中国ネット通販最大の販促イベント「双十一」で年々成約額を伸ばし、今年の双十一取引額は過去最高の4,982億元(約7兆9,000億円)に達した。同社の事業は通販サイトによる小売りの規模が大きいが、そこから派生する各種ITサービスも展開。ネット通販に欠かせない電子決済ではアントが支付宝を運営し、世界で10億人超のユーザーを抱える。

アリババが事業を拡大する中、中国政府は最近になり、ネットサービス大手への規制を強化する姿勢を鮮明にしている。

市場監管総局は14日、アリババや騰訊控股(テンセント)の傘下企業など3社に対し、独占禁止法違反で50万元の罰金を科すと発表。過去の企業買収の際の報告義務違反だが、同局はネットサービス大手による他社買収を通じた独占を防ぎ、業界全体の健全な発展を促す効果があると目的を説明している。

中国共産党と中央政府は16~18日に開かれた21年の経済運営方針を決める中央経済工作会議で、重要任務の一つとしてネットサービス大手を念頭に「独占と資本の無秩序な拡大を防ぐ措置を強化する」と表明した。プラットフォーム企業の独占、データ収集・使用の管理、消費者権益の保護といった面で法律法規を整え、規制を強化して独占や不当な競争行為に堅く反対するとした。金融のイノベーションは周到で慎重な監督管理を前提として進行するべきだとも説明した。

また市場監管総局は11月、「プラットフォーム経済の独占禁止ガイドライン」の草案を公表し、意見公募(パブリックコメント)を始めている。草案では、プラットフォーム企業が出店者に対し他のプラットフォームへの出店を制限するといった行為を禁じることなどを盛り込んだ。

共産党機関紙の人民日報(電子版)は24日、今回の市場監管総局によるアリババへの調査について「中国がネット分野の独占禁止の監督を強化するための重要な措置であり、業界の秩序の規範化やプラットフォーム経済の健全な発展の促進に有利だ」と政府の対応を評価する論評を配信した。

浙江省杭州市にあるアリババの本社

浙江省杭州市にあるアリババの本社

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