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【フィリピン】全特区企業、年内に操業再開[経済](2020/11/24)

フィリピン経済区庁(PEZA)のプラザ長官は23日、新型コロナウイルスの影響で操業を停止していた同庁の全ての登録企業が、年末までに操業を再開できるとの見通しを示した。コロナにより落ち込んでいた取引先からの発注が戻り始め、各社の生産は持ち直しつつあるようだ。PEZAは環境配慮型の経済特区開発など新たな構想の下、コロナ下でも投資誘致を強化していく方針も示した。

フィリピン経済区庁は年末までに全ての入居企業が操業を再開するとの見通しを示している=カビテ州(NNA撮影)

フィリピン経済区庁は年末までに全ての入居企業が操業を再開するとの見通しを示している=カビテ州(NNA撮影)

輸出加工型企業に税優遇を付与するPEZAには、日本企業をはじめ多くの製造業が登録している。プラザ長官は同日のオンライン会見で「大半の企業が操業を再開している。年末までに全企業の生産再開が期待できる」と述べた。ただ生産量などがコロナ前の水準に戻る時期については「コロナがいつ収束するのかによる」と明言を避けた。

コロナの影響で操業を停止した3,015社のうち、今月6日までに87%に相当する2,627社が再開した。従業員148万1,500人のうち、71%が職務に復帰している。現在も操業を停止している企業は、原材料の調達が困難なことや取引先からの発注が停止していることなどが理由という。

在宅勤務を含めて操業を再開している企業を産業別に見ると、ITビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)が84%、製造業が89%だった。地方別ではルソンが86%(2,200社)、ビサヤが94%(384社)、ミンダナオが93%(43社)だった。

政府が3月中旬から敷いた厳格な外出・移動制限措置では、PEZAの登録企業は感染対策など一定条件を満たせば操業が認められた。ただ、多くの企業が感染防止のため人員を絞り工場の稼働率を下げるなどの対応に追われた。

コロナの影響でPEZAの投資認可額は減少している。今年1~10月は前年同期比26.9%減の726億4,500万ペソ(約1,560億円)となり、件数ベースでも45.4%減の248件だった。

一方、足元では今月4日に前月比3.5倍となる総額146億4,600万ペソの投資計画を承認。プラザ長官は「イスラエル企業が中国からの生産移管を検討している」と述べ、投資に回復の兆しが出ているとの見方を示した。

■入居企業の負担軽減

PEZAは、コロナで打撃を受けた入居企業の負担軽減にも動いている。年間売上高の30%に相当する規模まで在宅勤務を認めていたが、この割合を90%に引き上げ、来年9月12日まで適用した。付加価値税(VAT)の免除は適用しないものの、登録した土地以外での事業所の設置も認めた。

新型コロナ対策費用については、内国歳入庁(BIR)が税額控除することを承認。従業員への臨時宿泊施設費用、送迎用のシャトルバスサービス、港湾使用料、個人防護具、消毒機器などが含まれ、法人税を支払う代わりに総所得(GIE)の5%を収める優遇措置に適用できるようになった。

PEZAは今回、コロナ下での投資誘致の方針も打ち出した。具体的には(1)環境配慮型の都市・街作り(2)環境配慮型の経済特区開発(3)全国的な経済特区の地図作成(4)食料・物流ハブ(拠点)の開発(5)地方の経済特区開発――など10本を柱にする。フィリピンを東南アジア域内の生産ハブ(拠点)にする構想の下、投資誘致の強化を進める。

フィリピン経済へのPEZAの貢献度は高い。1995年~2019年で見ると、経済特区の数は408カ所、企業数は4,587社、雇用創出効果は160万1,500人に上る。総投資額は3兆8,720億ペソ、総輸出額は8,151億米ドル(約84兆5,400億円)だった。

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