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【日本】バイデン氏勝利に相次ぎ祝意[政治](2020/11/09)

米大統領選挙で7日(現地時間)、民主党のバイデン前副大統領の当選が確実となったことを受け、アジア各国・地域の首脳は8日、相次ぎ祝福のコメントを発表した。ただし、トランプ政権と激しく対立した中国は同日時点で反応を示していない。共和党の現職トランプ大統領は敗北を認めていないが、各国・地域はおおむね政権移行をにらみ、これまでの「自国第一主義」や対中関係などがどの程度変わるかに注目しているようだ。

バイデン氏当確を喜ぶニューヨーク市民の様子を伝える新華社報道の写真=8日、米国(新華社)

バイデン氏当確を喜ぶニューヨーク市民の様子を伝える新華社報道の写真=8日、米国(新華社)

貿易やハイテク分野を巡ってこの4年間、トランプ政権と激しく対立してきた中国。バイデン政権になることで米国の対中政策がどう変わるかが注目されるが、8日の日本時間午後7時時点でバイデン氏当確に対し習近平国家主席や中国政府から公式の声明は出ていない。

一方、中国国営通信の新華社など主要メディアは8日朝、米メディアによるとして「バイデン前副大統領が米大統領選で勝利を確実にした」と伝えた。中国国営中央テレビ(CCTV)も正午のニュースで、国内の主要ニュースの後にバイデン氏の勝利を報道した。

CCTVはバイデン氏による勝利宣言演説のもようを伝え、大統領就任後の最初の主な任務は新型コロナウイルス感染拡大の防止だと発言した部分を強調した。一方でトランプ大統領が敗北を認めていないことや、米国で両支持者の対立が深まっていることも報じている。

人民日報系の環球時報(電子版)は8日、米中経済関係について、中国の識者の見方を紹介した。復旦大学米国研究センターの信強副主任は、バイデン氏の大統領就任により両国関係は一息つける期間を持つことができるとの見方を示した。今年1月に合意に達した米中の貿易協議「第1段階」については、バイデン氏が撤回に動くことはないとしながらも、実情に合わせた調整が行われる可能性はあるとみている。

中国人民大学国際関係学院・国際政治学部の達巍主任は、バイデン新大統領の誕生後も、米国が核心技術について中国への圧力を弱めることはないと分析。ただトランプ氏の規制範囲は広すぎるとし、通信機器大手の華為(ファーウェイ)へのスマートフォン向けチップ供給制限の緩和や、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と通信アプリ「微信(ウィーチャット)」への禁止令は撤回されることも考えられるとした。

■香港メディア、影響には触れず

米中関係悪化の要因の一つともなった香港。中国政府が声明を出していないのに歩を合わせるように、香港政府も8日午後7時の時点で特に反応は見せていない。

また現地メディアもバイデン氏当確はニュースで取り上げたものの、香港への影響については特に触れていない。有力紙の明報は8日付の社説で、香港ではなく台湾への影響を論じた。米中対立激化の構造の中で、バイデン政権の対中政策がトランプ政権から大きく変わるとは必ずしも言えないとしながらも、台湾(蔡英文政権)の「親トランプ」イメージをバイデン氏が全く感じ取っていないとはいえないだろうと指摘。今後の米政府(バイデン政権)の対中政策「微調整」が引き起こす中台関係の変化は、台湾当局(蔡英文政権)にとって大きな試練になるだろうとの見方を示した。

星島日報の8日付社説も、同じく香港への影響については言及していない。その内容も、国際社会がバイデン氏の外交政策に関心を抱いているとはいえ、同氏の主な任務はやはり米国の内政問題、特に極めて深刻な新型コロナの感染拡大と経済の悪化への対応などと指摘するものになっている。

■「米国との関係は現状維持」台湾世論

台湾の蔡英文総統は8日午前、ツイッターへの投稿で、米大統領選での当確が報じられたバイデン氏に祝意を送った。今年1月に蔡総統が再選を果たした際に、バイデン氏が送った祝意に返信する形で投稿。双方の友情をより一層深め、国際社会に貢献できることを希望すると表明した。頼清徳副総統もツイッターで祝意を送り、新型コロナ対策などでの協力に期待を寄せた。

トランプ政権下で米国は台湾との関係強化に努めた。このため台湾では与党・民主進歩党(民進党)の議員などを中心にトランプ氏再選を望む声もみられたが、今のところ市民は冷静に捉えているようだ。

台湾学術団体の中華亜太菁英交流協会がバイデン氏優位が伝えられた今月5~6日に実施した世論調査(有効回答1,077人)によると、バイデン氏が当選した場合の今後4年間の台湾と米国との関係について、52.8%は「過去4年の状況を維持する」と回答。「関係悪化」は24.3%、「関係がさらに良くなる」は10.2%だった。

一方、米中関係については、「改善する」が47.1%と最も多いが、「現状維持」が33.5%、「悪化する」も11.2%あった。また、台湾と中国との関係については、50%が「現状を維持する」と答え、「改善する」は20.8%、「悪化する」は22.7%だった。

経済界では、台湾経済にも有益な側面があるとの声が出ている。電子機器受託製造サービス(EMS)大手、新金宝集団の許勝雄董事長は7日、バイデン氏の当選によって米中関係の緊張が緩和に向かうとした上で、「輸出に依存する台湾にとってはプラスに働く」との見方を示した。

台湾の蘇貞昌行政院長(首相)も「米国との関係はますます良くなる」と自信を示した=8日(中央通信社)

台湾の蘇貞昌行政院長(首相)も「米国との関係はますます良くなる」と自信を示した=8日(中央通信社)

■文大統領、同盟国を強調

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8日午前、バイデン氏に向けて、ツイッターで「韓米の同盟は強固であり、両国間の連帯も強い」とした上で、「両国間の未来の発展への期待がとても大きい。共に歩んでいきたい」との祝賀メッセージを送った。

韓国メディアもこれを一斉に伝えた。保守系大手紙の朝鮮日報は同日付の社説で、「過去4年間、トランプ政権の突出した行動で混乱もあった米国の対外政策は、同盟や自由経済体制を重視する伝統的な路線に戻るだろう」との見方を示した。対北朝鮮非核化交渉の方式については、「トランプ時代の『リアリティー平和ショー』は終了し、原点から再始動するしかない。実務交渉を通じた合意履行を段階的に踏む逆アプローチを取ることになるだろう」とした。その上で、米韓合同軍事演習など安保体制の正常化も求めた。

東亜日報は同日付の社説で、「トランプ時代の露骨な保護貿易主義に大きな変化を与えると予想されるものの、通常政策の根本的な転換を期待するのは難しい」と指摘。「特定の国を対象とした大規模な追加関税措置や、安全保障問題を盾にした非関税障壁などの力を土台にした一方的な態度が変わったとしても、米国の利益を優先する保護貿易基調は維持される公算が大きい」とみている。

韓国経済への影響については、中国・ファーウェイへの半導体輸出の禁止などを受けて「韓国の対中輸出への支障が相当期間にわたり継続する状況に備えなければならない」と指摘した。

■インド系初の副大統領に期待

インドのモディ首相は、副大統領時代のバイデン氏と撮影した写真をツイッターに公開し、インドと米国の関係強化に重要な貢献をしたと指摘した上で「再び緊密に協力して印米関係をより高みへと導くことを期待している」と祝福のコメントを投稿した。インド出身の母親を持つカマラ・ハリス副大統領候補に対しても祝辞を述べ、印米の結びつきがより強固になるとの期待を示した。

バイデン氏の当選が確実となったことを受け、アジア各地の首脳は相次ぎ祝福のコメントを発信した。写真は左上から時計回りに台湾の蔡総統、韓国の文大統領、インドネシアのジョコ大統領、インドのモディ首相の公式ツイッター

バイデン氏の当選が確実となったことを受け、アジア各地の首脳は相次ぎ祝福のコメントを発信した。写真は左上から時計回りに台湾の蔡総統、韓国の文大統領、インドネシアのジョコ大統領、インドのモディ首相の公式ツイッター

インド各メディアは、インド系米国人として初めて、ハリス氏が副大統領に就任することを大きく伝えた。PTI通信は、インド系米国人の団体インディアスポラの創設者でもある投資家ランガスワミ氏の「(インド系米国人にとって)大きな1日になった」とのコメントを、当確後直ちに紹介。同氏は、バイデン氏が過去に米印原子力協力の実現や、インドが米国の主要防衛パートナーとなることに尽力したと指摘し、国連安全保障理事会でのインドの常任理事国入りを後押しすることにも期待を示した。

バイデン氏が大統領に就任した際のインドへの影響について、PTI通信は専門職向け就労ビザ(査証)「H1B」の発給を含め、米国の入国規制が緩和される可能性を指摘。インドのIT技術者が申請者の大半を占めるH1Bビザの発給が増え、国別の就労ビザの制限撤廃が実現すれば、数万人のインド人が恩恵を受けるとの見方を伝えた。

■東南アジア各国も関係強化に意欲

インドネシアのジョコ大統領もバイデン氏とのツーショット写真をツイッターに投稿。インドネシアと米国が戦略的パートナーシップを強化し、経済や民主主義、多国間主義での協力の下、緊密に連携していくことへの期待感を示した。

シンガポールのリー・シェンロン首相は、自身のフェイスブックとツイッターでバイデン氏を祝福。ツイッターでは、2国間の連携を深め、アジア太平洋地域における米国の役割を高めるため、バイデン氏とその政権に協力することへの期待を表明した。

マレーシアのムヒディン首相とフィリピンのドゥテルテ大統領は、それぞれ公式ホームページでバイデン氏を祝福。ムヒディン氏は「米国との『包括的パートナーシップ』をさらに強化することを楽しみにしている」と述べ、バイデン氏との直接対話にも意欲を示した。ドゥテルテ氏はフィリピンと米国の2国間関係には長い歴史があるとした上で、「関係をさらに強化したい」とコメントした。

タイやベトナムでは、外電による報道などでバイデン氏の当確が伝えられた。タイとベトナムでは当確が報じられる前から、トランプ政権が離脱を決めた環太平洋連携協定(TPP)に関する分析記事が出ており、米国が復帰するかどうかについて、それぞれ不参加、参加の立場から動向に注視していることがうかがえる。

8日に5年ぶりの総選挙が行われたミャンマーでは、一部メディアが外電でバイデン氏の当確を伝えた程度で、自国の選挙に関する報道が中心だった。

バイデン氏の当確を受け、同氏とハリス副大統領候補の似顔絵を描くインドの美術教師=8日、インド西部ムンバイ(PTI)

バイデン氏の当確を受け、同氏とハリス副大統領候補の似顔絵を描くインドの美術教師=8日、インド西部ムンバイ(PTI)

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