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【マレーシア】隔離違反で感染拡大に危機感[経済](2020/08/10)

マレーシア政府は8日、「新常態(ニューノーマル)」導入キャンペーンを開始した。一部の入国者が隔離措置に従わず、新型コロナウイルス感染症のクラスター(感染者の集団)が発生しているため、導入を念押しする。ムヒディン首相は、一人一人の市民が政府の定める新型コロナ対策の標準作業手順書(SOP)を順守しなければ、経済・社会活動を大幅に制限した、当初の活動制限令に戻さなければならなくなると、危機感をあらわにした。

ムヒディン氏は8日、出身選挙区であるジョホール州パゴで演説し、「当初の活動制限令に戻すことを誰も望んでいないが、SOP違反者がいれば、政府は戻さざるを得なくなる」と説明。新型コロナや活動制限令が国内経済に甚大な打撃を与えたことを指摘し、そうならないために、政府が定めるSOPを一人一人が順守するよう呼びかけた。

政府は同日、保健省が策定した「地域社会の新常態導入」のパンフレットを発表した。パンフレットは、新型コロナの感染抑止で地域社会や各世帯、学校、宗教施設が果たす役割について26ページにわたり説明。新型コロナ対策を草の根で実施していく。新常態導入キャンペーンは、全国の政府機関が、民間企業、非政府組織(NGO)と協力して進める。

政府が、新型コロナの感染が再び拡大することに危機感を抱くのは、先月13日にインド南部シバガンガから帰国した永住者が自宅待機期間中に出歩き、クダ州で自身が経営するレストランで従業員や客に感染が広がったため。

保健省は7日、「シバガンガ・クラスター」がクダ州だけでなく、ペルリス、ペナン両州に拡大していると明らかにした。同クラスターは、9日時点でクダ州で31人、ペルリス州で11人、ペナン州で3人の計45人の陽性を確認している。

感染拡大を受け、クダ州が、今月3日から州内4地域で地方自治体による封鎖措置「強化された活動制限令(PKPD)」を敷いているほか、ペルリス州も、8日から2つの村にPKPDを敷いた。期間はそれぞれ28日間となる。

■9月以降、感染データに基づき決定

スターによると、新常態導入キャンペーンの会長を務める、イスマイル・サブリ・ヤアコブ上級相(治安担当)は8日、8月末までの回復活動制限令を延長するかどうかについて、感染者数のデータに基づいて決定する考えを示した。

同相は「今月31日まで新規感染者数ゼロが続けば、1988年感染症予防管理法を使う必要はなくなる」と述べ、回復活動制限令を延長しない可能性があることを示したが、具体的に新規感染者ゼロが続く期間には言及しなかった。

キャンペーンは、村長やモスク(イスラム教礼拝所)、宗教指導者などと協力し、マスメディアやソーシャルメディア、看板、ポスター、宗教行事、説明会などを通じて、年内いっぱい実施する。

■日本から入国の2人陽性

保健省は9日、国内で新型コロナの感染者を新たに13人確認したと発表した。内訳は輸入症例が9人、国内感染が4人。輸入症例のうち2人は日本からの入国者で、マレーシア人と外国人が1人ずつ。国内感染のうちペナン州の2人がシバガンガ・クラスターからだった。

輸入症例は、日本からのほか、中国、インドから入国したマレーシア人と外国人が1人ずつ、イエメン、カタールからのマレーシア人が1人ずつ、インドネシアからの外国人が1人。国内感染は、シバガンガ・クラスターのほか、ペナン州と行政都市プトラジャヤで、いずれも感染が疑われる検査対象者(PUI)から発生したクラスターで1人ずつ見つかった。

9日時点の累計感染者数は9,083人。同日には、感染者9人が退院し、回復者は8,784人となった。感染者数に占める回復者数の割合は96.7%で、前日から0.1ポイント低下した。死者数は125人のままで、感染者数に占める死者数の割合は1.4%で、前日から横ばい。

現在、集中治療室(ICU)で1人が治療を受けているが、人工呼吸器は装着していない。

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