【インド】感染拡大が加速の一途[社会](2020/07/17)

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インドの新型コロナウイルスの累計感染者数は、早ければきょうにも100万人に達する。感染拡大のペースは加速の一途をたどる。飲食店やショッピングモールに客足が戻らない中で、消費の中心はオンラインや近場の小規模商店へと移行。消費者と企業の間では「新常態」への適応が進みつつある。日系企業はウィズコロナの長期化を見据えた上で、社内で感染者を出さないことを最優先にしながら、生産と売り上げの回復・拡大を目指している。

インド保健・家族福祉省によると、16日午前8時時点の累計感染者数は96万8,876人となった。前日からの新規感染者数は3万2,695人。同じ幅で増加した場合、きょう17日の発表で累計が100万人を超える。政府は3月下旬から全土封鎖に踏み切り、感染拡大の防止に努めてきたが、感染拡大のペースは加速し続けている。

■再封鎖が急増、日系に影響

6月以降は全土で大幅な封鎖措置緩和が始まり、感染が深刻なコンテインメントゾーン(封じ込め地区)以外ではモールや飲食店も営業を再開した。だが、感染拡大に歯止めがかからないことから、今月に入ってから、独自の判断で再び封鎖を行う州や都市が急増。日系の事業活動にも影響を及ぼしている。

1~2週間から長い地域では1カ月、もしくは週末のみといった形で再び封鎖を始めたのは◇南部カルナタカ州◇西部プネ◇南部トリバンドラム◇東部ビハール州◇北部ウッタルプラデシュ州◇北東部グワハティ――など。このうち、カルナタカ州は州都ベンガルール(バンガロール)を中心に14日の午後8時から22日の午前5時まで封鎖を実施。トヨタ自動車のインド法人トヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)は、同州ビダディに持つ工場の稼働を封鎖に合わせて停止した。

各地が厳格な封鎖に逆戻りすることで、日系を含む企業の活動に再びの混乱が予測される。日系自動車メーカーの関係者はNNAに対して、「(各地の再封鎖は)最近急に増え始めたので、影響はまだ試算できない。販売や流通面の問題もあるが、一番の心配は実需がどうなるか。再封鎖で、消費者心理がこれ以上損なわれないと良い、というのが一番(の願いだ)」とコメントした。

■「従業員の感染」相談が増加

日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューデリー事務所の村橋靖之所長によると、日系企業からは最近、「従業員に感染者が出た」という相談が増えている。ウィズコロナの長期化と感染者数の拡大に伴い、地場企業の工場ではクラスター(集団感染)の発生やそれによる稼働停止といったケースも複数見られるようになった。村橋氏によると日系の間では工場の稼働を止めるほどの事例は発生していない。各社は標準作業手続書(SOP)に準じて細心の注意を払い、苦心しながら稼働を続けている。

■長期化を覚悟し戦略変更

感染拡大が進む中、一方では消費者の間で新常態への適応が進み、明るい兆しが見え始めた業界もある。マリコなど地場の一部の日用消費財(FMCG)メーカーは、「6月の販売がコロナ前の水準まで回復した」と明らかにしている。

亀田製菓のインド合弁会社でインド版・柿の種「KARI KARI(カリカリ)」を生産・販売するダワット・カメダの河野純・取締役も「生産も注文もだいぶ増えてきた」と語る。電子商取引(EC)と小規模・零細商店で消費が伸びていることや、封鎖の段階的な解除で、リライアンス・リテールなどの小売りチェーンの店舗開業率が4~5月の4割以下から6割超へと拡大したことが要因だ。カリカリの販売地域は4月下旬時点の4都市から、10都市前後へと拡大した。

河野氏によると、自粛の長期化で消費者のマインドが変化し、環境の変化への順応が進んでいる。「ぜいたく品を含め必需品以外のモノを買いたいという需要を感じられるようになった。一方で多くの消費者の間で、外に出ずに商品を受け取りたい、もしくは近場で買いたいという意識が(依然として)強い」。ダワット・カメダはこの変化に呼応し、販売の重心を大手小売りチェーンからEC・小規模商店へと移行した。ECは米系アマゾン・インディアを中心に販売。地場フリップカートとも取り扱いの交渉を進めている。

河野氏は最もつらいのは「先が見通せないこと」と語る。「場当たり的な対応を迫られることも多いが、それでも1年はこの状況が続くだろうという仮説を立てて、変化に応じて戦略を変更しながら事業を行っている」

社会的距離を保ちながら営業するパン屋=6月26日、インド・北部グルガオン(NNA撮影)

社会的距離を保ちながら営業するパン屋=6月26日、インド・北部グルガオン(NNA撮影)

■まずはコロナ前の水準へ

村橋氏は目下の日系企業の活動について「少しでも早く企業活動を平常に戻すことを、各社が目指している」と話す。「感染が秋までに落ち着くことはないだろう。この状況が長く続くことを認識し、(コロナ前の)通常の状態へと戻す方法を模索している。感染者を出さないようにSOPをどうしていくか、生産や売り上げをどう上げていくのか。各社が必死で取り組んでいる」とコメントした。

インドの感染のピークがいつになるのかは不透明だ。オーストラリアの医療分野の調査機関ジョージ・インスティテュート・フォー・グローバル・ヘルスのオーメン・ジョン(Oommen John)上席研究員はNNAに対して、「(ピーク時期の)予測は難しい」と話す。

「規制を緩和すれば感染拡大が加速することは目に見えていたが、封鎖を続けることも不可能だった。多くの国が達成できたように、インドも経済活動と感染拡大防止を両立できる」との見方を示す。両立に向けて必要なのは(1)効率的な医療施設(2)適切な情報発信と情報把握(3)公衆の規律(4)国民一人ひとりが「社会的責任」を理解すること――。現在は一部の病院に多くの人が押しかける事態が起こっているため、「テストが受けられる施設や、治療に特化した病院がどこにあるか、適切な情報発信と情報把握が特に重要」との認識を示した。

医療崩壊の懸念については「インドの医療体制は強固とは言えないものの、崩壊は起こっていない。人工呼吸器といった設備の数は2カ月前と比較して格段に増えている。的確な管理がなされていれば、秩序を保つことが可能だ」とコメントした。

医学研究機関のインド医学研究評議会(ICMR)によると、インドの新型コロナの累計検査数(サンプルベース)は、15日時点で累計1,273万9,490件に上る。15日には32万6,826件の検査が行われた。(天野友紀子)

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