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【タイ】日本食材、タイ輸出が15%減[食品](2020/07/09)

日本からタイへの食材輸出が落ち込んでいる。「牛肉」「魚」「果実」「アルコール飲料」を合わせた2020年1~5月の輸出額は71億7,100万円で、前年同期に比べて15.4%減少した。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、タイ国内の飲食店の営業が3月下旬から1カ月余り禁止されたことなどが影響したとみられる。飲食店の営業は5月3日から段階的に認められたものの、消費マインドの本格回復が見通せない中、日本の食材輸出の先行きにも不透明感が漂う。

日本財務省の貿易統計によると、20年1~5月の日本からタイへの「魚(冷凍)」の輸出額は12.5%減の61億7,700万円。冷凍の魚の場合、缶詰などの加工用の輸出も含まれるため、一概にタイの消費市場の落ち込みだけが輸出の減少の原因とは考えられない。一方、大半がタイの消費市場向けと考えられる「魚(生鮮および冷蔵)」「牛肉」「アルコール飲料」も軒並み2桁減となっており、9.8%減の果実も含め、新型コロナによる影響はやはり大きいようだ。夜間外出禁止や外出自粛に伴う消費の減退、飲食店閉鎖に伴う食材需要の減少が、日本からタイへの食材輸出を大きく落ち込ませたと考えられている。さらに、航空便数の減少に伴う輸送費の高騰も追い打ちとなった。

日本貿易振興機構(ジェトロ)・バンコク事務所で食品を担当する福田かおる氏は、「1~5月の日本からタイへの食材輸出の落ち込みが、新型コロナの影響のみによるものかは分からないが、関係事業者などから聞いている内容を踏まえると、その影響は確実にあったと感じている」と話す。牛肉、鮮魚、アルコール飲料などの品目では、今後もしばらく影響が続くと予測しているという。福田氏は、「タイ政府が5月以降、新型コロナ感染防止のための行動制限を段階的に解除している中、飲食店での需要が徐々に戻っているとの情報がありつつも、予断を許さない状況が続いている」と説明した。

■断トツ人気の日本料理

ジェトロが13年に実施した調査によると、タイ人に「一番好きな外国料理」を尋ねた質問で、66.6%が「日本料理」と答え、2位の「中華料理」の12.8%、3位の「韓国料理」の6.8%に大きな差をつけた。「日本食を好きな理由」を尋ねた質問では、「味の良さ」が37.1%、「健康に配慮」が26.0%、「洗練されている・高級感」が12.6%と上位を占め、日本料理と食材は、ポジティブなイメージとともに、タイに着実に受け入れられてきた。

19年時点で3,637軒の日本食レストランが軒を連ね、農林水産物・食品輸出額で、香港、中国、米国などに次ぐ7位を占めるタイ市場だけに、新型コロナの影響による急激な輸出の落ち込みは、生産者や輸出企業にとって痛手だ。

高級スーパーマーケットの果実売場では以前は日本産果実が目を引いたが、消費者の購買力低下から現在は存在感が薄くなっている=7日、タイ・バンコク(NNA撮影)

高級スーパーマーケットの果実売場では以前は日本産果実が目を引いたが、消費者の購買力低下から現在は存在感が薄くなっている=7日、タイ・バンコク(NNA撮影)

■ジェトロ、消費喚起へあの手この手

生産者や輸出企業からは、事態の打開に向けて、販路・需要の確保・開拓を求める声が高まっており、そうした声に応え、ジェトロ・バンコク事務所では、「日本産食材活用支援事業」を7月から始める。

同事業では、◇消費者参加型のSNSキャンペーン◇フードデリバリーサービスとの連携◇割引特典・割引クーポンの配布――など複数の施策を展開。一連のPR施策を通じて、バンコク首都圏の1,000万人のタイ人に訴求することを想定している。飲食店などの参加費用は無料だが、日本産食材や酒類を使用していることを日本政府が認定する制度「日本産食材サポーター店」であることや、年間収入が3億バーツ(約10億3,000万円)以下または従業員数が100人以下の中小企業であることなどが参加条件だ。

また、海外の電子商取引(EC)サイトによる日本商品の買い取り販売にも取り組む。タイでは、コンビニエンスストア「セブン―イレブン」を運営するCPオール傘下のEC事業者、トゥエンティーフォー・ショッピングと提携。日本食品の買い取り販売を支援する。トゥエンティ―フォー以外のEC事業者との連携も検討している。

このほか、10月には「バンコク日本産農水産物・食品輸出商談会2020」を主催する。ジェトロ・バンコク事務所は、オンラインベースでの個々の商談はこれまでにも支援してきたが、ジェトロ主催の「商談会」の開催は今回が初めて。福田氏は、オンラインでの商談会について、「画面上から伝わる情報量は、対面での商談に比べると少なく、『バイヤーの細かい反応を見る』『最適な状態でサンプル提供を行う』『強固な関係構築を行う』といった面では、出品者がもどかしさも感じるかもしれない」と指摘。一方で、「現地に足を運ぶためのコストのハードルは低く、バイヤー・出品者双方にとって大きなメリットになる」と強調した。

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