【台湾】日系大手チェーンが回復傾向[商業](2020/06/12)
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台湾で事業展開する日系大手チェーン店は現在、新型コロナウイルス感染症の流行によって落ち込んだ客足が回復に向かい、業績が持ち直している。新型コロナウイルスの域内感染者が2カ月出ていない中、市民の外出が増え、消費意欲が向上していることが背景だ。各社は感染防止策や販促活動などを打ち出して、消費者の呼び込みに動いている。【安藤千晶】
台湾で飲食や小売りを手掛ける日系の大手チェーン店は、一時期の落ち込みから脱して、一斉に客足が戻りつつある。
くら寿司の台湾法人、亜洲蔵寿司は、新型コロナウイルスの影響で2月から業績が悪化した。西川健太郎董事長兼総経理によると、4月の売上高は新型コロナウイルス発生前と比較し約4割減った。しかし、「5月から来客数が回復傾向にある」という。
亜洲蔵寿司は現在、全域で25店を展開する。直近で開店した1店を除く1店当たりの年間来客数は平均約30万人。
中華料理チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの台湾法人、王将餐飲服務の山本誠治総経理は、新型コロナウイルス発生後、一度落ち込んだ客足が、「5月には平日が感染拡大前と同水準に回復し、休日は約7割まで戻った」と明かす。
特に百貨店内に持つ店舗は、百貨店自体の来店者数の減少に引っ張られる形で客足が大幅に減少。だが、5月10日の母の日以降、百貨店の来店者数が持ち直したことで、店舗の客足も回復した。
実際、台湾の各百貨店では5月に入り、業績が回復している。百貨店大手の遠東百貨店の各店は、5月後半2週間の来店者数が新型コロナウイルスのまん延前の約9割に回復したと伝えられている。百貨店に入居する飲食店も同様に恩恵を受けた形だ。
現在餃子の王将は高雄市に2店、台北市に1店の直営店をそれぞれ構える。
ドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス(HD)の台湾合弁、台湾松本清は、台湾店舗の5月の売上高、来店者数がともに前月比で4割成長したと明らかにした。今年出店した5店の新店舗が売り上げに寄与した形で、域内店舗は12店に拡大した。
感染拡大前の今年1月と比較して売れる商品の構成にも変化が出ている。売上高に占める割合で見ると、化粧品が下がり、健康食品や総合ビタミン剤、マスク、食品が軒並み増加したという。
■集客に新たな戦略
亜洲蔵寿司の西川董事長は、新型コロナウイルスの感染が懸念される中、衛生面に配慮した皿にかぶせるカプセル状のカバー「鮮度くん」が客足増に奏功した一因とみる。
皿を手前に上げれば、鮮度くんが自動的に開く仕組みで、カバーに直接触れず皿を取ることができる。ウイルスや唾液などから寿司を守る役割をしている。
台湾での店舗は今後も引き続き増やす方針だ。西川董事長は、「毎年店舗数を5~10店増やす目標を掲げており、今年も変更の意向はない」と強調する。
王将餐飲服務は、新型コロナウイルスの影響緩和に向けた集客策として、新たな試みを多数導入。中華圏では大皿料理を分け合う文化があるが、感染の懸念払拭(ふっしょく)を目的に、4月から小皿料理をメニューに増やした。
5月18日からはサブスクリプション型割引サービス「常客券」の販売を始めた。100台湾元(約360円)で常客券を購入し、会計時に提示すれば毎回25元割り引く。購入から1カ月間有効で最大31回使える。割引サービスを通じて集客につなげたい考えで、まずは6月30日まで1カ月間の有効期限として試験導入した。
テークアウト用弁当の種類も増やした。テークアウトが売上高全体に占める割合はかねて5%だったが、新型コロナウイルス発生後は10%に増加。5月からは近隣へのデリバリーも始めた。
■出境解禁前後の需要捕捉へ
「日本を旅行できない状況だからこそ、日本の商品をたくさんの顧客に提供したかった」。台湾松本清は、新型コロナウイルスの逆風下で、店舗数を増やした理由をこう説明する。出境解禁までの日本製品の需要拡大を見込んだ動きだ。
台湾松本清は今後、日本旅行の解禁を見越し、台湾で集めたポイントを、日本でも利用できるようにすることを計画している。集めたポイントは、ポイント数に応じて会計時に値引きができる。
新型コロナウイルスのまん延後、台湾では電子商取引(EC)の需要が拡大している。ただ、同社担当者は「日本のドラッグストアの雰囲気を感じてもらいたい」といい、来店を重視し、まずは実店舗の拡大を目指す。今後は生鮮食品を含め、食品の販売も強化していく方針だ。