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【中国】中国のコロナ対策90兆円規模[経済](2020/05/29)

中国の李克強首相は28日、第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第3回会議の閉会後に記者会見し、中国が新型コロナウイルスに関連して打ち出した経済対策が6兆元(約90兆2,700億円)規模に上ることを明らかにした。このうち約7割を消費刺激に充て、内需によって経済の立て直しを図る。インフラ投資には約3割を投じる。

恒例の全人代の閉幕後記者会見に臨む李克強首相。今年は新型コロナを警戒しインターネット経由で行われた=28日、北京市(新華社)

恒例の全人代の閉幕後記者会見に臨む李克強首相。今年は新型コロナを警戒しインターネット経由で行われた=28日、北京市(新華社)

李氏が22日の政府活動報告(施政方針演説に相当)で示した経済対策について、会見に出席したメディアが「2019年の中国の国内総生産(GDP)に対して4%程度の規模」との試算を示し、「エコノミストの予想よりも少ない」と指摘したことに対して回答した。

李氏によると、中国が新型コロナに際して打ち出した経済対策は大きく分けて2本の柱から成る。一つは今年の財政赤字を昨年から1兆元拡大するとともに、「新型コロナ対策特別国債」を1兆元発行するもので、合わせて2兆元の規模。

もう一つは社会保険料の減免や失業保険料の還元などを含む企業経営コストの削減策で、この部分については明確な金額を示さなかったものの「前者の約2倍」になると述べた。2本柱を合わせれば約6兆元に達する計算となり、李氏は「40兆元余りのGDPに対する比率は2桁だ」と強調した。

李氏はさらに、一連の経済対策は「企業の困難緩和、市場の活力刺激」を目的としたもので、「これらの資金を雇用、民生、市場主体の保障に使い、国民所得を支える」と説明。全体の約7割が直接的に国民所得の下支えに通じる用途に充てられることになるとし、「こうすることで消費を促進し、市場を活性化させることができる」と述べた。

インフラ建設も経済対策の一部となるが、李氏は「重点は雇用と民生で、インフラ投資に依存するものではない」と強調。増発する専項債(レベニュー債)などによってインフラ建設に投じる資金は2兆元で、「経済対策全体の2~3割の規模だ」とした。投資対象も第5世代(5G)移動通信システムなどの「新型インフラ」や「新型都市化」、民生関連の重要プロジェクトが中心になるという。

■追加措置も「迷わず」

政府活動報告でGDP成長率の目標値を設定しなかったことについては、新型コロナで世界経済が深刻な打撃を受ける中で「中国経済も影響を受けないわけにはいかない。現実的な判断だ」とした。一方で今年の政策目標に掲げた「六つの保障」のうち、特に重点を置く雇用、基本的民生、市場主体の「三つの保障」を実現できれば、「今年の経済成長率はプラスになり、一定の成長幅が必要になる」と述べた。ある程度のプラス成長に転じることが事実上の目標であることを示唆した形だ。

その上で、追加の経済対策を講じる可能性にも言及。「我々にはまだ政策の余地がある。財政、金融、社会保険など、いずれも政策の準備がある」として、経済情勢に大きな変化が生じれば「直ちに新しい政策を打つ。迷うことはない」と明言した。

このほか、米国との対立に関する質問には「中米関係には新たな問題と挑戦が生じているが、中米関係は重要だ」と指摘。「互いの核心的利益を尊重しながらウインウインを目指すべき」との立場を示した。

李氏は会見の最後に「中国は巨大な市場であり、我々の経済対策は消費市場をさらに拡大する。中国は引き続き投資の沃土(よくど)でありたい。海外商品の輸入を拡大したい」と述べ、国内経済の回復に向けて海外との経済協力を重視する姿勢をアピールした。

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