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【タイ】非常事態宣言を1カ月再延長[社会](2020/05/27)

タイ政府は26日の閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための非常事態宣言を6月末まで再延長することを決めた。3月26日に発令し、当初は4月末までの予定だったが、期限を5月末に延長していた。新規感染者数は連日1桁台で推移しているものの、段階的に経済活動の制限を緩和する中で流行の第2波を防ぐために再延長が必要と判断した。近く制限緩和の第3弾を実施する方針で、29日に詰めの協議をする。

タイのプラユット首相(中央)は26日の閣議で非常事態宣言の1カ月延長を決めた(タイ政府提供)

タイのプラユット首相(中央)は26日の閣議で非常事態宣言の1カ月延長を決めた(タイ政府提供)

閣議後の会見でナルモン政府報道官は、非常事態宣言の再延長について「公衆衛生上の理由であり、政治的な意図はない」と説明。新規感染者数が減少していることから、政府の権限が強まる宣言の延長ではなく、感染症法で対応できるとの批判が出ていたことを念頭に述べたもようだ。

宣言の延長に伴い、6月以降も外国人の原則入国禁止や夜間外出禁止令などの措置が続くとみられる。外国人の入国を巡っては、タイ民間航空局(CAAT)が今月16日に、国際線旅客機の乗り入れ禁止措置を6月末まで延長すると発表していた。

一方、タイ政府は非常事態宣言を発動しつつ、段階的に経済活動の制限を緩和している。緩和の第1弾として飲食店や理髪店・美容室などが5月3日に、第2弾としてショッピングモールやデパートといった大型商業施設などが同17日に営業を再開。17日からは夜間外出禁止令の開始も1時間遅らせ、午後11時~午前4時としている。

タイ政府のこれまでの発表によると、緩和の第3弾は6月1日に実施する計画で、閉鎖が続いている映画館や遊園地、マッサージ店、展示場などの営業再開の可否を29日に判断する見通し。クラスター(感染者の集団)が確認された、ムエタイ(タイ式キックボクシング)スタジアムの再開や夜間外出禁止令のさらなる短縮なども検討する。

営業が再開されたものの客足が戻っていない平日の商業施設=21日、タイ・バンコク(NNA撮影)

営業が再開されたものの客足が戻っていない平日の商業施設=21日、タイ・バンコク(NNA撮影)

タイの26日の新規感染者数は3人。3月中旬に感染者が急増し、一時期は連日100人を超えたが、4月27日以降は1日を除いて1桁台もしくはゼロで推移。店舗の営業再開後も今のところ集団感染は発生していない。

■非常事態宣言の延長に反対論も

新規感染者が減少する中での非常事態宣言の再延長には、反対の声も相次いだ。26日付バンコクポストによると、反対する人たちは非常事態宣言が発令される前に適用していた感染症法で対応できると主張。非常事態宣言下では、当局による令状なしの逮捕・拘束、報道の検閲や集会の禁止をすることが可能となるため、宣言の長期化は民主主義的な観点から懸念が強まっている。

これに対して、プラウィット副首相は、政治的な意図はなく、第2波の発生を警戒していることを強調した。

政府の新型コロナウイルス感染症対策センター(CCSA)のタウィーシン報道官も26日の会見で、「感染症法での対策では十分ではなかった。非常事態宣言では各省の部局が対策の足並みをそろえやすい」と説明。感染症法よりも多くの法律との整合性を図ることもできるとした。

一方、タイ保健省疾病管理局(DDC)のタナラック副局長は、バンコクポストに対して人口100万人当たりの新規感染者が5人以下であれば、都市封鎖は不要だとの見解を述べた。高架鉄道(BTS)はラッシュ時には混雑し始め、在宅勤務をやめた企業もあるが、感染は広がっていないと指摘。100万人当たりの感染者が10人を超えれば封鎖が必要になるとの考えを示した。

プラユット首相は26日の閣議後、定例の記者会見を行わず、代わりに午後6時過ぎにテレビ演説を放映した。テレビ演説では「これまでは感染拡大の抑制がよくできている」と評価する一方、国民や経済界は多くの困難を抱えているとの認識を示した。

その上で、これまでに新型コロナの影響について経済団体などと協議してきたことを説明し、政府としても中小企業から政府調達を行っていることなどをアピール。非常事態宣言の再延長の理由については触れなかった。

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