【香港】経済斜陽化論の火消しに躍起[経済](2020/05/26)

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中国が香港版「国家安全法」の制定に動き出したことを受けて、香港では25日も資金流出懸念などを背景に香港ドル金利が上昇するなどの混乱が続いた。香港政府は、規制が少なく法治が徹底した香港の良好なビジネスや投資環境は、同法によってかえって強化されると主張。株価が一時急落するなど市場に動揺が広がったことには「米国が中国に『金融戦争』を仕掛けている可能性がある」とけん制し、香港経済「斜陽化論」に反論した。

香港版国家安全法について香港政府高官らは「経済にプラス」と強調するが、懸念の声も強い(NNA撮影)

香港版国家安全法について香港政府高官らは「経済にプラス」と強調するが、懸念の声も強い(NNA撮影)

政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は24日に更新した公式ブログで、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が制定を進める香港版国家安全法への自身の見解を詳細につづり、必要性を強調した。

陳氏は同法について、国家の分裂や中央政府の転覆、テロ行為やテロ組織、外国および域外勢力による香港への干渉を禁じるものだと説明。香港での反中・反政府行動が、一部では銃器の保管や爆弾の製造に発展し「テロリズム」の様相を見せていることで、経済に暗い影を落としていると非難した。

欧米や日本のメディアでは、香港版国家安全法の制定によって、外資系企業の投資への信頼感や、国際金融センターとしての香港の地位が揺らぐとの見方が多い。しかし陳氏は、米中両国の対立激化や複雑な国際環境を考慮した場合、仮に香港に国家安全保障上の抜け道があれば、香港が(対中国)攻撃のツールに使われかねないと述べ、香港での反中・反政府行動の背後には「(米国など)外国勢力の関与がある」とする中国当局の見方に同調。国家安全法は「香港社会の極端な二極化や動乱状態を回避し、社会の安全と安定につながる」と強調した。社会の安全と政治の安定は国際金融センターに不可欠な条件だとして、同法を正当化した。

■「米国による金融戦争」をけん制

香港金融管理局(HKMA)の初代総裁で、現在は行政会議(行政長官の諮問機関)のメンバーとして林鄭月娥(キャリー・ラム)政権を支える任志剛(ジョセフ・ヤム)氏も、「火消し」の戦列に加わった。

25日付香港経済日報などによると、任氏は、香港版国家安全法制定をきっかけにした香港の金融市場の混乱について、米国が同法を口実に対中強硬姿勢を一段と強め、「金融を中国抑え込みの新たな武器として使おうとしている」ことが背景にあると指摘。米国の証券市場から中国企業を閉め出すなどの制裁を強めれば、米国で既に上場しているか、または今後上場を計画したりしている中国企業は香港取引所(HKEX)での上場を選ぶようになると予測した。

任氏はさらに、中国は米国への対抗措置として人民元の国際化を加速し、「米ドルのくびきからの脱却を図っていくだろう」と指摘。そうなれば世界最大のオフショア人民元市場である香港は今以上に国際金融センターとしての機能を発揮していくだろうとの見方を披露した。

中国は実際、広東省と香港、マカオで一体的な経済圏を目指す「粤港澳大湾区」で人民元取引を拡大する方向を打ち出しているほか、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の沿線国との取引でも人民元決済を進める方針を打ち出している。人民元の活用が今より広がれば、香港の機能がより強化されるとの読みがあるようだ。

■著名エコノミスト「ペッグ制揺るがす」

政府サイドから「楽観論」が流れる一方で、民間などには香港経済へのマイナス面を危惧する声も強い。

官営メディアのRTHKによると、香港の著名なエコノミストの一人で、シンクタンク・ACEビジネス経済センターの所長を務める関シャク照(アンディー・クワン、シャク=火へんに卓)氏は、香港版国家安全法が香港ドル相場を米ドル相場に一定の値幅内(1米ドル=7.75~7.85HKドル)で固定する「米ドルペッグ制」を揺さぶりかねないとの見方を示した。

関氏は、同法が投資家や香港市民の香港経済に対する信用危機を引き起こす可能性があると指摘した。外資系企業の香港撤退や、香港人の移民ラッシュが起きれば、香港ドルが他の通貨に大量に交換され、通貨当局が保有する外貨準備が急激に減少し、ペッグ制を維持できなくなるとの見方だ。また、治安維持を目的に香港警察が地域封鎖や頻繁な所持品検査など強硬な措置を取れば、消費は激減し、香港は「死の街」になりかねないとも憂慮した。

外資系経済団体では、在香港米国商工会議所(アムチャム・ホンコン)のほか、香港のドイツ系企業でつくる香港ドイツ商工会議所も22日、「一国二制度」の維持に疑念を生じさせるいかなる動きにも重大な関心を示さざるを得ないとの声明を発表した。香港の欧米系経済団体は、2019年後半の激しい抗議運動につながった「逃亡犯条例」改正案にも強い懸念を表明していた。

■激化する米中対立、経済の不安要因にも

米議会では既に、香港版国家安全法制定の動きに対抗して、新たな対中制裁法案が提出されている。オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は米テレビ局の取材に対し、同法が施行されれば新たな対中制裁を科す考えを示した。

英国のパッテン元香港総督などが始めた香港版国家安全法非難の署名運動は、24日までの時点で23カ国の議員など政界関係者から200筆超を集めた。同法に対しては米国が特に強硬な姿勢に傾いており、米中対立の激化が新型コロナウイルス不況に見舞われる香港経済の傷口をさらに広げるリスクも指摘されている。

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