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【韓国】入国制限で鮮魚輸送が停滞、無人化に活路[農水](2020/03/12)

新型コロナウイルスの感染拡大で、韓国から日本への鮮魚や活魚の輸出が困難になっている。これまでは、魚を生きたまま輸送できる「活魚車」を使い、両国間を結ぶフェリーで運ばれていた。ところが、両国政府が相手国からの入国を厳格化したため、運転手が入国できなくなり、このままでは鮮魚の輸出ができなくなる恐れがある。そこで日本の船主は、運転手なしで活魚車を輸送するという新たな試みを始めた。

鮮魚や活魚の輸出で関釜フェリーを利用する韓国の水産業者は多い(関釜フェリー提供)

鮮魚や活魚の輸出で関釜フェリーを利用する韓国の水産業者は多い(関釜フェリー提供)

山口県下関港と韓国の釜山港を結ぶフェリー「はまゆう」を運航する関釜フェリー(山口県下関市)と、福岡港と釜山港を結ぶフェリー「ニューかめりあ」を運航するカメリアライン(福岡市)は9日から、運転手なしでの活魚車の輸送を試験的に始めた。まずは1日1台からで、韓国の輸出業者と日本の輸入業者の間で「運転手なし」に関する合意があったという。

韓国の水産会社は、冷凍した魚は主にコンテナで日本に輸送するが、付加価値の高い鮮魚や活魚、冷凍マグロは、それぞれ活魚車と冷凍車を利用している。そのため、活魚車と冷凍車の運転手もフェリーに「旅客」として乗船するのが普通で、到着すると港で日本の活魚車に積み替える。

また、日本の活魚車がフェリーで釜山に渡った後、現地で鮮度の高い魚を調達してくるというパターンもある。

■旅客取り扱いを休止

ところが、横浜港に寄港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で新型肺炎の集団感染が発生したことを受けて、関釜フェリーが安全面を理由に「はまゆう」での旅客取り扱いを3月1日から休止。再開を予定していた15日まで、活魚車と冷凍車の運転手がフェリーに乗船できなくなる事態が発生した。

下関港が、釜山港など韓国から2016~18年の3年間に輸入した水産物は年平均8万3,000トンほど。同港が海外から輸入した水産物全体の7割以上を占める。韓国の水産業者は、博多港よりも東京や大阪に近い下関港に鮮魚や活魚を輸出することが多いという。

ただ、「『博多ルート』で代替できる」との見込みから、韓国水産業界では先行きに対して楽観的な雰囲気が漂っていた。福岡のカメリアラインはこれまで、月平均100台の日韓の活魚車を輸送してきた実績がある。

■事態が一変

しかし、日韓の政府が9日から、相互の入国を制限する措置をとったことで、事態は一変。下関ルートを含めたすべてのルートで、これまでの輸送手段が使えなくなってしまった。そこで関釜フェリーとカメリアラインは急きょ、運転手のいない活魚車の輸送に踏み切った。

ただ、韓国人運転手が乗船しない場合、活魚車を下船させる運転手を別に準備する必要があることから、運転手なしでの活魚車の輸送は旅客取り扱いが再開するまでの一時的な対策にとどまる見通しだ。活魚車は輸送中も電源をオンの状態のままにしておかなければならないため、安全面での懸念もある。

韓国政府も支援に乗り出した。韓国海洋水産省関係者によると、酸素・温度調節・ろ過機能などを備え、輸送の過程で人が介入する必要のない「水槽コンテナ」を投入する案を検討しているもよう。ただ、水槽コンテナのほとんどは長い輸送時間がかかる米国やベトナム向けにすでに使用されており、「日本向けに十分な物量を確保するのは簡単ではない」(同関係者)という。

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