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【台湾】肺炎が企業の出荷に初影響[IT](2020/02/05)

台湾パソコン大手の華碩電脳(ASUS)が、ゲーミングスマートフォンの一部市場への出荷ができない状態に陥っている。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、中国での部品供給が滞った影響を受けた。新型肺炎によって最終製品の出荷に影響が出た台湾ブランドは初めて。同様のケースは今後も広がるとの見方が出ている。

ASUSはゲーミングスマートフォン「ROG Phone2」の出荷ができない状態に陥っている(ASUSのホームぺージより)

ASUSはゲーミングスマートフォン「ROG Phone2」の出荷ができない状態に陥っている(ASUSのホームぺージより)

4日付経済日報などが伝えた。出荷ができなくなったのはゲーミングスマホの「ROG Phone2」で、出荷に影響が出た市場は主にインド。ASUSのインド現地法人は、現地の消費者に対し「新型肺炎のまん延に伴いサプライチェーンが断裂し、出荷がしばらくできなくなった」と伝えた。中国の協力工場の生産が滞り、まずはインド市場への供給を停止することを決めたという。供給再開の時期には触れていない。

ASUSは今後の成長を押し上げる原動力の一つとして、ゲーミング分野に注力。ROG Phone2は売れ行きが好調で、昨年7月には中国で200万台の予約販売を記録し、インド市場でも高い人気を得ていた。各地で販売が伸びていただけに、今回の出荷停滞はASUSに冷や水を浴びせた形だ。

新型肺炎の感染拡大を受け、沿海部を中心とする中国の一部地方政府は春節(旧正月)連休後の企業の営業開始日を今月10日以降に先延ばしにすることを決定。業界では、休業延長が現地のサプライチェーンに影響を与えるだけでなく、物流にも支障が出るとみている。営業が再開したとしても、従業員が直ちに現場に戻れるかは未知数な上、工場内の消毒作業などに時間がかかることも考えると、実際の工場の稼働再開はしばらく先になるとの指摘もある。

電子部品の供給が今後も滞ると予想される中、台湾企業の3C(コンシューマー・エレクトロニクス、コミュニケーション、コンピューター)製品の出荷に遅れが出る恐れを懸念する向きも出てきた。

一方、パソコンの供給には当面影響が出ないもよう。業界関係者によると、卸売業者が抱えるパソコンの在庫は現在十分な水準で、メーカーが新製品を出すのは4月以降になることを踏まえると、新型肺炎による供給への影響は現時点では大きくないという。

■受動部品在庫が警戒水準

新型肺炎に伴う中国工場の生産停止を受け、国巨(ヤゲオ)と華新科技(ウォルシン・テクノロジー)の台湾受動部品大手2社では、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の在庫が警戒水準にまで落ち込んでいるようだ。

証券筋によると、業界では国巨の在庫日数が現在、警戒水準の45日にまで下がったとみている。華新科技は警戒水準を割り込む6週間に下がったという。

現在はリードタイムが3カ月以上に延びて、これ以上の品薄が広がれば、MLCCが一層の値上がりに向かうとみられている。

国巨が生産する抵抗器とコンデンサーは中国江蘇省蘇州市での比率が約7割、台湾が約3割で、華新科技は中国と台湾が半々とされる。中国では工場の生産停止や交通規制、人手の確保難など量産の正常化に向けた問題が山積みで、台湾工場の重要度が上がっている。

国巨をはじめとするメーカーの台湾工場では先月末以降、MLCCの問い合わせに関する電話が鳴りやまない状態という。

■休業延長ならアイフォーンに黒雲か

米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」の供給にも懸念が出ている。

4日付中央通信社は関係者の話として、iPhoneの組み立てを担う鴻海精密工業が「中国工場の稼働が10日以降に再度延びれば、アップルをはじめとする顧客への出荷に影響を与える」と考えていると伝えた。

関係者によると、鴻海は現在、ベトナムやインド、メキシコなど世界各地に持つ工場で中国工場の停止分の穴埋めを図っている。中国工場が10日に再稼働されれば、生産体制を強化して停止期間の生産量を挽回できるとみており、現時点では新型肺炎による影響は軽微。ただ10日以降に延びれば、出荷に影響が出るという。

鴻海とアップルはともにコメントしていない。

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