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【カンボジア】米縫製品の調達、中国から東南アにシフト[繊維](2019/08/15)

米国ファッション産業協会(USFIA)が7月に発表した調査によると、同協会の加盟企業の50%が、向こう2年でカンボジアでの縫製品の調達を拡大する方針であることが分かった。縫製品の輸出大国である中国の人件費上昇に加え、米中貿易摩擦の影響を回避する動きが加速していることを受け、世界最大のアパレル輸入国である米国では、中国から東南アジアへの調達シフトの流れが強まっている。

調査では、「向こう2年で各国・地域からの調達額や調達量がどのように変化するか」(複数回答)を問う設問で、カンボジアに関しては、回答企業の47%が「やや増える」、3%が「大きく増える」と回答した。両選択肢を合わせた回答は、国・地域別では4番目に多かった。

カンボジアは後発開発途上国(LDC)として、米国や日本向け輸出の税制優遇措置や、武器以外の全品目を数量制限なしに無関税で欧州連合(EU)に輸出できる「EBA協定」が適用されていることが、縫製品の生産拠点として強みとなっている。ただ、欧州委員会は2018年10月、野党弾圧や人権侵害を理由に、カンボジアへの関税優遇措置の停止手続きに着手したと通告。こうした事態を受け、USFIAの調査では、回答企業からカンボジアでの調達に関してコンプライアンスのリスクを懸念する声が聞かれたという。

調査全体では、ベトナムが80%(やや増えるが73%、大きく増えるが7%)、バングラデシュが60%(やや増えるが43%、大きく増えるが17%)、インドが54%(やや増えるが47%、大きく増えるが7%)の順で多かった。ベトナムは米中貿易摩擦の影響で、中国からの生産移管「チャイナプラスワン」の恩恵を受けていること、バングラデシュは他国と比較して人件費で優位性が高いことが理由とされる。

一方の中国は、「やや減る」が77%、「大きく減る」が7%で、減少するとの見方が8割を超えた。人件費などのコスト上昇や、米中貿易戦争によって、中国から米国への縫製品の輸出に高い関税が課されていることが要因とみられる。

■調達シフト、関税措置解除後も

「米通商法301条に基づく中国への追加関税措置による事業への影響」(複数回答)を問う設問では、77%が「調達先を中国から他のアジアの国に意図的に移した」、63%が「関税措置によって調達コストが上昇した」と回答し、多くの企業が関税措置によってなんらかの影響を受けていることが分かった。一方、「関税措置が解除されても、中国から他国への調達シフトは続く」と回答した企業も77%おり、米中貿易摩擦の状況が落ち着いても、中国からの調達の減少は続く可能性が高い。

ただ、報告書では、18年の米国の縫製品の調達先として中国は36%(量ベース)を占め最大で、その次に多いベトナム(13%)を大きく上回っていると指摘。現時点で中国と同様の生産規模を維持できる国はなく、納品の速度や柔軟性など、調達先としてのバランスが優れていることから、依然として中国の調達先としての重要性は高いとの見方を示した。今後も中国とベトナムに加え、その他の国に調達先を分散させる傾向が強まると分析している。

調査は4月~5月、米国のファッションブランド、小売・卸業企業で役員を務める39人を対象に行われた。うち71%が従業員数1,000人以上、29%が101~999人の企業の役員だった。

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