スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

【中国】外商投資法が全人代で可決、外資保護に重点[経済](2019/03/18)

外資による中国投資の基本法となる「外商投資法」が15日、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で可決、成立した。外資に対して中国企業への技術移転を強要することを禁じ、知的財産権の保護を明記するなど、通商摩擦を抱える米国の要求に配慮したとも言える内容が含まれる。李克強首相は同日の会見で「法律という手段によって、いっそうの外資保護と外資誘致を図る」ことが同法の本質だと説明した。

2020年1月1日から施行する。同法は外資に対する投資の促進、保護、管理などを定めた全42条から成り、第1条では「対外開放をさらに拡大し、外資による投資を積極的に促進し、外資の合法権益を保護する」ために同法を制定すると宣言。第3条でも「国は対外開放の基本国策を堅持し、外国投資家による中国での法に基づく投資を奨励する」とうたっている。

外資による中国投資に対しては、投資前の段階から内国民待遇を適用する「参入前内国民待遇」とネガティブリストによる管理方式を採用する(第4条)。ネガティブリストによって参入が禁止または制限されない分野では、外資も内資と同等の扱いを受けられることが明確になった(同条、第28条)。

内国民待遇については、外資に対する投資上の許可手続き(第30条)や政府調達への参加(第16条)などでも外資を公平に扱うことを規定。外資企業には国による企業発展政策が平等に適用され(第9条)、業界などの規格制定作業への平等な参画が保障される(第15条)とした。

■苦情受理の制度を整備

同法は外資の保護に重点が置かれており、特に国として外資の知財やそれに付随する権益を保護し、行政による技術移転の強制を禁止する(第22条)と明記したことが注目される。これらの問題は米中協議における焦点の一つだったことから、米側の要求に対する回答とも読み取れる。

一方、同じ22条には「自由意志の原則と商業規則に基づく技術協力は奨励する」とあり、外資企業の「自発的」な技術移転に期待する中国側の思惑がうかがえる。李首相は会見で「外国の政府には、中国企業と国外企業の双方の自由意志による協力を公正な目で見るよう希望する」と述べた。

外資保護ではこのほか、国家による財産接収を行わない(第20条)ことや、地方政府が定めた外資政策や外資との契約はきちんと履行させる(第25条)ことを条文に盛り込んだ。法律や行政法規の根拠がないにもかかわらず、政府が外資の参入や撤退を制限したり、経営活動に干渉したりといった行為も禁じた(第24条)。

外資企業が抱える問題を行政に反映しやすくするよう、外資からの苦情対応制度を国として整備する。企業が行政機関から受けた権利侵害も、同制度を通じて解決を図る(第26条)。詳細な制度設計は明らかになっていないが、李首相は「公開、透明、有効」な制度を目指す姿勢を示した。

■外資への安全審査も

外資の管理については、「外商投資情報報告制度」(第34条)と「外商投資安全審査制度」(第35条)を立ち上げる。このうち外商投資情報報告制度は、企業登記システムと企業信用情報公示システムを通じて商務当局に投資の情報を報告するもので、義務に違反した企業には10万~50万元(約166万~830万円)の罰金が科される場合がある(第37条)。

外商投資安全審査制度は「国家の安全に影響またはその可能性がある」投資が対象で、詳細は規定されていない。

附則では外国との通商摩擦を想定しており、中国からの投資に差別的な禁止や制限を行う国に対しては、相応の対抗措置を取るとしている(第40条)。

同法には現時点で解釈が曖昧な条文もあるが、李首相は「この法律は政府の行為を規定するものだ」と指摘。今後は同法の精神に基づき外資の保護が図られるとして、李首相は「これから一連の関連法規や政策文書を整備し、外商投資法をスムーズに運用できるようにする」と説明した。

外商投資法は、「外資三法」と呼ばれる現行の「外資企業法」「中外合資経営企業法」「中外合作経営企業法」に替わるもので、施行に伴い外資三法は廃止される。外資三法に基づき設立された外資企業は、新法の施行から5年間は従来の組織形態を維持することが認められる。

改革開放の初期に制定された外資三法は、時代の流れに合わなくなり、「会社法」をはじめとする国内企業の法律法規とも矛盾するようになったため、新法の必要性は早くから指摘されていた。国務院(中央政府)は18年の立法作業計画に外商投資法を加え、同年12月に全人代常務委員会へ草案を提出。今年1月末の同委員会で草案を今回の全人代へ付議することが決まった。

法律の全文は全人代のウェブサイト<http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/2019-03/15/content_2083532.htm>で確認できる。

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント