【インドネシア】排水処理を促進、日本の無償資金協力で[公益](2019/02/28)
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日本の非政府組織(NGO)APEXが、日本政府のNGO連携無償資金協力によりインドネシアで実施する「住民参加型高処理水質コミュニティ排水処理システムの広域的普及促進事業」について、贈与契約署名式が27日、在インドネシア日本大使館で行われた。今年3年目となる事業の供与限度額は62億3,372万ルピア(約4,909万円)。経済発展に伴い、衛生環境の悪化や水質汚濁が深刻化しているインドネシアで、効率的で処理水質が良い排水処理システムの普及を図る。
事業は2017年2月に開始。今年3月1日から3年目に入る。1年目は12基、2年目は17基を設置。政府開発援助(ODA)事業として採用される前にAPEXが独自に設置したものも合わせると、ジャワ島を中心に現在39基が稼働している。今年も15基以上をジャワ島内外に設置する目標を掲げている。
APEXの田中直(たなか・なお)代表理事は、インドネシアで一般的な排水処理システムは「嫌気性」と呼ばれるもので、電力が不要で操作も容易だが処理水質が不十分と説明。「嫌気性システムで処理した場合、汚染度を示す生物化学的酸素要求量(BOD)は100ppm程度。環境省は排水処理のBOD基準値を16年に100ppmから30ppmへ引き下げており、従来のシステムでは基準を満たせない問題が生じている」と話した。
田中代表理事によると、日本で一般的に用いられている活性汚泥法などの好気性処理ではBODが10ppm程度。処理水質は良いが、電力消費量が大きく、操作やメンテナンスが難しいため、インドネシアでの普及は難しい。そこでAPEXがインドネシアで導入を進めているのが、嫌気性処理と好気性処理を組み合わせたシステム。独自に開発した立体格子状の接触体回転円盤を用いることで、省エネルギーで省スペース、メンテナンスなども地域住民で管理できる簡便な設備を導入した。電力消費量は3~4分の1に抑え、BODも20ppm。魚の養殖が可能な水質レベルで、国内でも約5基が養殖用に使われているという。
APEXによると、インドネシアでは15年時点で国民の約32%が一般的な衛生設備を使えておらず、12%の人が屋外で排せつしている。このため国内の8割の河川が中程度以上の汚染レベルとなっている。田中代表理事は「環境問題や衛生面への意識が高い住民が多いようで、多くの地域から導入の要望がある。既に設置した地域でも、住民主体で維持費を集めるなどして運用されている」と述べた。