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【フィリピン】比に日本の革新的技術を、4社が事例紹介[IT](2019/01/22)

日本貿易振興機構(ジェトロ)マニラ事務所は21日、マニラ首都圏マカティ市で日系企業の革新的な技術に関するセミナーを催した。東南アジア諸国連合(ASEAN)の電子化やイノベーションの推進に向けた取り組みのうち、フィリピンで事業を展開する4社が発表。各社は、自動車金融や義肢装具などに新技術を組み合わせ、新興国市場の需要を取り込もうとしている。

ジェトロマニラの石原氏は、日本技術のASEAN導入事例が増えることに期待を示した=21日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

ジェトロマニラの石原氏は、日本技術のASEAN導入事例が増えることに期待を示した=21日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

ジェトロマニラの石原孝志所長は「日本の経済産業省のイニシアチブに基づき、ジェトロはASEANで新分野の18事業を支援している」と指摘した。2017年に日本とASEANの各経済団体による「日ASEANイノベーションネットワーク(AJIN)」が構築され、具体例となる企業の取り組みを後押ししている。

自動車などの金融ソリューションのグローバルモビリティサービス(GMS、東京都港区)は、顧客の車両に特殊な機器を取り付け、ローンの支払いが滞ればエンジンを停止させる仕組みを紹介した。技術を用いて車両を担保とすることで、通常のローン与信審査に通過しない人でも金融サービスを受けられるよう敷居を下げた。

中嶋一将執行役員(GMSフィリピン副社長)は「『グラブ』などライドシェアサービスの事業者は、車両が担保となることで、返済期限を守るようになる」と説明する。延滞しても車両が動かなくなることで、3日以内にローン支払いをする人が多いという。

同社は、ASEAN初の拠点としてフィリピン法人を15年に設立。昨年にはカンボジア、インドネシアにも進出し、域内事業の拡大を進めている。

生体認証のリキッド(東京都千代田区)の落合建介カントリーマネジャー(フィリピン)は「約2年前からフィリピンの政府機関と指紋情報の採取などで協力している」と話す。実証実験では、指紋登録にかかる時間の速さや正確性などが確認できた。

落合氏は、政府機関のデータベース構築のソリューションとして生体認証システムを活用してもらい、ゆくゆくは金融機関、小売りや物流企業などへの導入を促していく構想を示す。昨年に国民ID(身分証明書、Phil―ID)の発行を規定したフィリピン身分証明制度法が成立し、顔写真と指紋情報が登録される見込みで、国民IDが構築されれば、事業拡大の追い風になるという。

空間情報システムのインフォマティクス(神奈川県川崎市)は、17年11月~19年1月に、フィリピンで地理情報システム(GIS)を導入する実証実験を実施。同社の空間情報クラウドコンピューティングシステム「ジオクラウド」の動作環境を確かめた。

営業部の松丸伸太郎リーダーは「農作物の被害状況の確認や、交通渋滞の把握といった分野で、ジオクラウドを活用できる」と説明。今後、フィリピンでもパノラマ画像の導入やドローンを使ったマッピングなどを試しつつ、同国への売り込みを進めていく。

■比誕生の日系企業、低価格化に挑む

3D義肢装具事業の展望を語るインスタリムの徳島氏=21日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

3D義肢装具事業の展望を語るインスタリムの徳島氏=21日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

フィリピンがきっかけでこのほど誕生した日系企業もある。昨年に設立された3Dプリント義肢装具のインスタリム(東京都世田谷区)は、青年海外協力隊の一員としてボホール州で活動していた徳島泰氏が創業した会社だ。

「義足が高すぎる」――。徳島氏は、従来から個人個人の体に合わせてオーダーメードで制作されてきた義肢装具が、1本当たり数十万円以上となっている現状を問題と考え、3Dプリンティングと機械学習技術を活用することで低価格化に挑もうとしている。まずはフィリピンの首都圏で、1本300~500米ドル(約3万3,000~5万5,000円)での販売開始を目指す。

今年4月には、フィリピン法人を設立する予定で、21年以降に他国に進出する計画だ。日本や中国、インドネシア、インドなどで販売にこぎ着けたい考えだ。

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