スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

長く続く企業はどんな経営をしているのか?老舗企業の経営者にインタビュー




企業が長い期間存続するのは、とても難しいもの。創業から10年で9割以上の企業が倒産するというデータもあるほどです。そんな厳しい環境の中でも存続する企業は、どのような経営を行っているのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、株式会社宮田運輸四代目の宮田博文社長、株式会社折勝商店四代目の石山勝規社長、そしてザメディアジョングループ代表の山近義幸社長の3名。時代を超えて愛され続ける企業をつくる経営のコツを聞いてきました。

(聞き手:早川周作・経営コンサルタント/構成:Tokyo Edit 大住奈保子)

経営理念とその背景にあるストーリー

(早川)企業にとって経営理念はとても大切なものだと思います。みなさんの会社の企業理念と、それができた背景をお聞かせください。

山近)経営理念は29年前の創業時から変わらず「ご縁と感謝の経営」です。社員たちもこの経営理念を守って仕事に取り組んでくれていると思います。

創業がバブルの時期(昭和62年)だったこともあって業績もよく、当初は少し浮かれていた面がありました。しかし、われわれは決して立派な経営者ではありません。それでもご一緒していただけるというのは、本当にありがたいことですよね。そんな方々とのご縁を大切にしたいという気持ちから、この経営理念ができたのです。

弊社とのご縁がまた他のご縁につながり、それがまた返ってくる――。そんな“ご縁のキャッチボール”で縁が広がっていくことが、たまらなくうれしいんです。だから私個人としても、この経営理念には深く共感しますね。

宮田)弊社の企業理念は「全世界と幸せを分かち合う」です。社会に夢・感動・喜びを提供する幸福創造企業として永続的に発展するというのが、会社として目指すところです。
その第一歩となるのが、従業員にとって安心できる環境づくりです。今は世間一般的に「何かあったらみんなで責め立てる」という風潮があるような気がしています。そうではなく、困ったヤツがいればみんなで助ける。そんな環境をまずは会社の中で作って、ゆくゆくは社会全体にも広げていきたいと考えております。

従業員を大切にするということは、その人の「心」を大切にすることです。人はみんな、良心という美しい心を持っています。経営者はどんなことがあっても、その良心が信じ切る。これが大切だと思います。
うちはやんちゃな社員も多いのですが(笑)、入社することで彼らが少しでも生きる目的や意味を見いだせるようになってくれたらという思いで経営をしております。

石川)われわれの企業理念は「目の前のお客様に圧倒的に尽くしぬく」です。
売上などの数字以外のところで、目の前のお客様に何ができるか。その方にどれだけの時間を費やせるか。どれだけ自分をさらけ出して、自分のものをその方に与えられるか。これらを徹底的に考え抜いてほしいという思いを、この企業理念に込めています。

経営・事業承継において苦労したこと

(早川)これまで長い間事業を続けてこられた間には、さまざまな壁があったかと思います。経営や事業承継において、苦労されたことをお教えいただけますでしょうか。

石川)代表になった当初は、何を軸に経営をしたらいいのかが見えていませんでした。そのためか、社員をしっかりまとめることができずに苦労しましたね。

先代まではミーティングというものがまったくない会社だったのですが、私の代からはミーティングを行うことにしました。しかしいざ当日になってみると、会議室には17名の社員のうち4名しかいません。ほかの社員は「必要ないと思ったので」「われわれは製造業なので、製造をしているほうが効率的じゃないですか」と来なかったんです。そんなバラバラの状態からのスタートでした。

先代のやり方は、その当時の従業員との絆があったからこそ生きたものです。私が代表になったときに、同じやり方をしてもダメだと思いました。どうすれば従業員の信頼を得て、ともに同じ道を進んでいけるのか。それを模索するのが、事業継承を考える上でいちばん難しかったですね。

他にも東日本大震災の時期は飲食業が軒並み低迷しましたので、弊社も「この先どうしていけばいいんだろう」という危機感をおぼえました。でも、今から不安からくる決定事項はあまりいい結果を生まないものです。不安を消すために何かを行うのではなく、ポジティブに転換していくことが、経営者に求められる手腕なのではないかと感じています。

宮田)幹部を集めて長期・中期目標を立てて「よし行くぞ」と思った矢先に、死亡事故を起こしてしまったんです。実際に配達に行ったのは他の社員でしたが、そういう状況を作ってしまったのは私です。経営者になりたての不安に加えてこのような悲しい事故が起き、毎日心はざわついていました。

私は物心ついた頃からトラックが大好きでした。でも大好きなトラックが悲しみを生んでしまうこともある。悲しい現実を目の当たりにして「この仕事を続けていていいのか」と悩み苦しみました。しかし周りの人たちのやさしさに触れ、生かされたわれわれにできることはまだまだあるのではないかという気持ちになりました。

事故は一社だけが気をつけてもなくなりません。社会全体が気をつけることが大切です。こうした発想から生まれたのが、トラックの車体に運転手の子どもたちが描いた絵やメッセージを貼り付けるという取り組みでした。
この取り組みをきっかけに、またみんながやさしくなれる社会をつくれるんじゃないかと思っています。今後はこれを世界にも広げていきたいですね。

山近)弊社でも裁判はもちろん、本当にピンチだという局面は何度も経験しました。創業直後には、28名いた社員が全員辞めてしまったこともありました。当時は本当に孤独でしたし、怖かったですね。

でも、私自身はそれを“危機”だとはとらえずに来たように思います。普段からさまざまなピンチを乗り越えた経営者の先輩方からお話を伺っていたこともあり、絶望的にならずにすんだのかもしれません。「これは神様からの何らかのメッセージだ」ととらえて、常に次のことを考えていましたね。

それからは新卒採用を人材戦略の柱に据え、入社から9か月間は助走期間ととらえて、経営陣直々に企業理念をしっかりと伝えるようになりました。入社前の学生と自然体で接する機会を設けようと、全国の大学生の現場同行を受け入れる「カバン持ちインターンシップ」という取り組みも行っています。
こうしたと取り組みが定着率の高さにもつながり、企業としての成長につながったのではないかと考えています。

仕事の効率を上げるストレス解消法

(早川)経営者に限らず、精力的に仕事に取り組むためにはリフレッシュも必要かと思います。みなさんのストレス解消法をお教えください。

山近)私は経営者の方々とお酒を飲みながらお話しするのが一番のストレスを解消法で、年間200名近くの方々と会食させていただいています。お話を聞いて経営者として足りない自分を実感しつつも、多くのことを学ばせていただいています。
また、壮大な自然や歴史に触れると「自分の悩みなんて小さなものだな」と思えて、気が軽くなりますね。

宮田)やはり神様にお祈りすることは大切だと思います。先ほどお話しした悲しい事故をきっかけに、各事業所にしっかりと神棚をお祀りするようになりました。朝起きると自宅と事業所の神棚に向かって手を合わせ、世界人類の幸せを祈るということを習慣にしております。この習慣が不安や恐れを、理想や愛に変えてくれる気がしています。

石川)自分の身に起こる危機は、その人が乗り越えられるものしか起きないとよく言われますよね。だから、苦境が訪れたときはくじけてしまうのではなく、なぜこれが今私の身に起きているのかという意味を考えるようにしています。

悩むということは、現実に向き合って生きていないということでもあると思うんです。一生懸命やってダメなら仕方がないし、過去は変えられないから悩んでいないでがんばろう。そう考えるようにすると、不安が消えていく気がしています。


藤岡 俊雄
1961年 大阪府生まれ 2002年 株式会社シーエフエス設立 代表取締役として教育事業を展開 2010年~2016年 450社を対象に私塾代表世話人として、全国経営者、東北・関東・中部・関西・中四国・九州と 6ブロックにて塾を開催 2012年 経営実践研究会を創設し理事長就任。各地にて勉強会を開催 2014年 公益資本主義推進協議会、理事、副会長に就任、1100社の会員企業を構築する 2016年 2年の任期満了によりアドバイザーとなる 2016年 経営実践研究会組織つくりをスタートさせる 2017年 全国日本道連盟、幹事長に就任 2017年 (公財)Social Management Collegeプロデューサー 現在、経営実践研究会において、経営者やNPOやソーシャルビジネスを行う企業を組織し、社会変革に挑戦している。 また、企業が本業を通じた社会貢献を行いサスティナブル・カンパニーとなり、企業の社会化を通じ、持続可能な明る い社会を構築するべく講演会や実践活動を展開している。座右の銘「人を幸せに導けるのは、人しかいない」


株式会社宮田運輸
代表取締役社長 宮田博文(みやた・ひろふみ)
大阪府出身。高校卒業後、宮田運輸に入社。トラックドライバー、所長などを経て4代目社長に就任。



株式会社折勝商店
代表取締役社長 石山勝規(いしやま・かつのり)
1977年、北海道生まれ。株式会社折勝商店の本社・工場がある東京都文京区湯島で育ち、明治大学経営学部へ。在学中、2代目の父が倒れた際に同社に入り、経理部門を経験。その後大学に戻り、卒業後再入社。2011年、4代目として同社代表取締役に就任。現職。


ザメディアジョングループ
代表 山近義幸
山口県出身。広告代理店、タウン誌の会社への勤務を経て、ザメディアジョンを設立。法人化と同時に就職および採用支援事業に進出した。大卒人材ベンチャー企業特化型の採用アウトソーシング会社としてまったく新しいビジネスモデルに取り組んでいる。

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント