【インドネシア】緊張と拍子抜けと、コロナ禍の入国体験記[社会](2020/12/28)
年末年始の休暇に向けて、インドネシア政府が新型コロナウイルス感染防止策の強化を発令する中、赴任のために日本から入国を果たした。新規感染者数の高止まりを受け、防止策はどこまで徹底されているのか。政府の通達からだけでは分からない現場の実情を、体験を基に報告する。【和田純一】
赴任日が22日に決まり、準備万端整えていた。ところが前日の21日未明、インドネシア政府が急きょ入国規制を強化し、PCR検査の陰性証明書の有効期間を3日に短縮したと知らされた。入国後に再検査する可能性もあるという。
それまでは入国7日前以内に検査を受ければよく、5日前に受けて陰性証明書も入手していた。それが無効となり、21日中に新たな証明書を取得するしかない。検査病院に駆け込み、何とか再検査と即日の証明書発行に協力してもらった。
■意外に混んでいた出発カウンター
22日朝、羽田空港の国際線ターミナルへ向かう。全日本空輸や日本航空の出発カウンターが閑散としていた一方で、搭乗するガルーダ・インドネシア航空のカウンターには、予想以上の人が列をなしていた。インドネシアへ帰国する技能実習生が50人程度、搭乗手続きをしていたのだ。
受付カウンターでは、やはりインドネシア入国後にもPCR検査が必要と言われた。検査と宿泊先のプランは3種類から選択できる。◇検査料・宿泊料は有料だが、検査結果を1日で取得できるプラン。料金は合計210万ルピア(約1万6,000円)◇検査料は無料で、有料の指定ホテルに滞在(結果が出るまで5日程度)◇検査料・宿泊料とも無料で、指定の隔離施設に滞在(同)――で、到着後に説明があるという。技能実習を終えて帰国するインドネシア人男性に聞くと、入国後は無料の隔離施設に滞在すると決まっているようだった。
搭乗ゲートの案内画面には、インドネシア政府指定の電子ヘルス・アラートカード(e―HAC)のQRコードが掲示されている。滞在先の情報や健康状態を入力して、入力完了のQRコードを取得し、入国時に提示する。入国後に紙で記入することも可能だ。
ガルーダのGA875便は、間隔を空けた座席配置で、6割程度の搭乗率。機内食も普段通り提供された。客室乗務員は、マスクと手袋を着用していた。
■入国後のPCR検査に身構えたが
首都ジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ国際空港に到着。互いに距離を取って降りるように案内されたものの、なかなか守られない。薄暗いロビーで待つよう指示され、20分ほど待ち、別の階へ移動した。長い廊下を進むと、椅子を等間隔に並べた場所にたどり着いた。着席して、所定の書類に名前や滞在先などの基本情報を記入する。インドネシア語のみの書類もあり、外国人には優しくない。
順番に次の列へ案内された。PCR検査の陰性証明書と、e―HACのQRコードを提示。体温測定をし、先ほどの用紙に測定結果を記入する。次の列へ移動し、記入済み用紙と陰性証明書を提出し、受付印を押されて終了。周囲には、何か質問されている人も見えたが、問題はなさそう。一部、防護服の職員もいたが、基本的にはマスクと手袋の着用だけだった。
その後、入国審査へ。外国人は少なく、スムーズに進む。事前に取得していた電子ビザの書類を提出。入国の理由も特別聞かれない。手荷物の受け取りを終えると、再度、陰性証明書の提示を求められたが、ものの数秒、確認しただけだ。
いつ入国後のPCR再検査について案内されるかと身構えていたが、何もないまま、出口までたどり着いてしまった。出口の手前で、またも陰性証明書の提示を求められたが、こちらも手早く終了。再検査について尋ねると「すでに陰性証明があれば問題ない」との返事。入国までの緊張感は何だったのかと、拍子抜けしてしまった。
22日夕方時点で、現場では新たな入国規制は運用されていなかった――これが結末だ。着陸から空港の出口までの所要時間は、1時間半程度。空港施設の外も目立った混雑はなかった。入国後は、もともと滞在予定だった宿泊先で自主隔離期間を過ごす。現状、政府への定期報告などは必要ない。
■インドネシア流を教えられた?
コロナ禍での海外渡航は、出発前の健康管理や入国までの手続き、状況により変化する規制など、心配の種は尽きない。今回に限って言えば、PCR検査の陰性証明書さえ持っていれば、インドネシア入国は問題ないと思える。
とはいえ、急な規制の変更に対応するため、大使館などが発信する最新情報の収集に努める必要がある。実際、今回の入国後、またも新たな追加措置が発表された。
感染症対策は最優先だ。ただ、入国に際しては過度な心配は不要ではないか。赴任初日から「柔軟であれ」というインドネシア流の処世術を教えられたように思った。