【ミャンマー】アマタ会長=日系をミャンマーに誘致したい[建設](2020/01/27)
タイの工業団地開発大手アマタ・コーポレーションのウィクロム会長は、ミャンマー最大都市を抱えるヤンゴン管区で新たに開発する「ヤンゴン・アマタ・スマート&エコ・シティー」に、日系企業を数多く誘致する意向だ。訪問先の首都ネピドーで24日、NNAなどとのインタビューに応じた。
アマタがタイとベトナムの計5カ所で展開する工業団地の入居企業1,300社のうち、日系は700社。「アマタに進出した日本企業の98%は成功している。多くの日系を連れてきたい」と語った。タイと日本の親和性に加え、親日的なミャンマー人の国民性もメリットとして挙げた。
■食品や輸出産業に期待
ミャンマーで特に日系企業に期待する分野として、第1に豊富な農業資源を生かした食品産業を挙げた。第2に、生産コストの低いミャンマーで、内需および中国南部、インド、バングラデシュ市場を開拓することを推奨した。「日系企業は、50~60年前からタイで生産した製品を現地や周辺国で販売することに成功してきた。同じコンセプトを持ち込めばよい」
第3が、タイ東部チョンブリ県レムチャバン港などを経由して、米国や欧州へ出荷する製品の生産だ。米国の保護主義的な姿勢がさらに強まった場合でも、「国内総生産(GDP)がまだ小さいミャンマーは、米国と関税の問題を抱えることはないだろう」と予測した。
ミャンマーでの開発を決めた理由として、日系誘致への期待のほか、隣接する中国の製造コストの上昇や、米中貿易摩擦および巨大経済圏構想「一帯一路」を背景とした、中国から大メコン圏(GMS)への生産移転の動きを挙げた。特にミャンマーはインド洋に面し、「GMSの西の玄関口」であることを評価しているという。中国が推進する西部ラカイン州のチャウピュー深海港の整備についても、「われわれにとってもよいことだ」と歓迎する姿勢を示した。
アマタは、向こう5年程度かけて第1期2,000エーカー(約800ヘクタール)を整備する。エコ・シティー開発自体の投資額は2億7,000万米ドル(約295億円)だが、関連事業も含めれば総額10億米ドルに上る。ウィクロム会長は、ミャンマーで大型開発を進める上での課題として◇インフラや公共サービスの未整備◇ミャンマーに対する国際社会からの政治的な批判◇未熟な労働力――を挙げた。
アマタは2017年にヤンゴン・アマタ・スマート&エコ・シティー開発に向けた調査に入ったが、「当初はミャンマー側の準備ができていなかった。インフラや公共サービスが整っていなかった」。電力については、タイ国営石油PTTが出力600メガワット(MW)のガス火力発電所を建設し、エコ・シティー内外に送電する。また情報通信インフラでは、KDDIミャンマーが協力する。
イスラム教徒少数民族ロヒンギャに対する迫害をめぐり、欧米などはミャンマー政府を非難している。ウィクロム会長は、「持続的な成長のために、ミャンマーの指導者も投資を求めている」として、政府が国際社会からの批判に対応するとの考えを示唆した。また、熟練労働者の育成に向けては、外部の職業訓練校と提携するという。