同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき
[平成30年4月1日現在法令等]
役員又は使用人に退職手当等を支払うとき、同じ年に既に他の会社などから退職手当等を支払われていることがあります。 また、一つの会社を退職するとき、会社のほかに企業年金基金などから退職手当等とみなす一時金が支払われることもあります。このように、他の支払者からその年中に支払済の退職手当等がある場合には、支払者は他の支払者が支払った退職手当等も含めて、源泉徴収税額を計算しなければなりません。
退職手当等の支払を受ける者は、その支払を受ける時までに、支払者に対して「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要がありますが、その年中に他の支払者から支払済の退職手当等がある場合には、申告書にその支払済の退職手当等の支払者の氏名(名称)、退職手当等の額、源泉徴収された税額、支払年月日及び勤続年数などを記入し、その支払済の退職手当等の「退職所得の源泉徴収票」を添付して提出する必要があります。なお、複数の支払者に同時に申告書を提出する場合には、申告書にその提出の順位を記載することとされています。
退職手当等の支払者が、その年中に他の支払者から支払済の退職手当等が記載された退職所得の受給に関する申告書の提出を受けた場合には、次のとおり源泉徴収税額の算出を行います。
- (1) 支払済の他の退職手当等の額と今回の退職手当等の額を合計し退職所得の収入金額とします。
- (2) 支払済の他の退職手当等の勤続期間と今回の退職手当等の勤続期間のうち最も長い勤続期間により勤続年数を算出します。ただし、その最も長い期間以外の期間のうちにその最も長い期間と重複していない期間がある場合は、その重複しない部分の期間を最も長い期間に加算して勤続年数を計算します。この勤続年数に1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げます。
- (3) 上記(2)の勤続年数を基にして退職所得控除額を算出します。なお、本年分の退職手当等が前年以前に支払われた退職手当等の勤続期間を通算して計算されている場合や前年以前4年間(確定拠出年金の老齢給付金を受給した年分は前年以前14年間)に他の支払者から支払われた退職手当等がある場合には、本年分の退職手当等の勤続期間と前年以前に支払われた退職手当等の勤続期間とが重複する期間の年数(1年未満の端数は切り捨てます。)に基づき計算した退職所得控除相当額を控除した残額が退職所得控除額となります。
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(4) (1)の退職所得の収入金額から(3)の退職所得控除額を控除した残額に2分の1を乗じて課税退職所得金額(千円未満切捨て)を算出します。
なお、退職手当等の収入金額のうち、役員等としての勤続年数が5年以下の者が、役員等としての勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けたものについては、計算過程で2分の1にしません。
- (5) (4)の課税退職所得金額に、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」を適用し税額(1円未満切捨て)を算出します。
- (6) (5)の税額から支払済の他の退職手当等の源泉徴収税額を控除して、今回の退職手当等の源泉徴収税額を算出します。なお、控除後の額がマイナスとなる場合には源泉徴収税額はないことになります。この場合、マイナスの金額の還付を受けるためには、退職手当等の受給者本人が確定申告をする必要があります。
具体的な源泉徴収税額の計算の仕方については、次の設例を参考にしてください。
設例
- 甲さんは、平成30年にA社とB社を退職します。勤続期間及び受給する退職手当は次のとおりです。
- A社 就職日:平成21年4月1日 退職日:平成30年3月31日
退職手当支給月:平成30年5月
退職手当支給額:400万円
「受給に関する申告書」を支払者へ提出します。 - B社 就職日:平成23年4月1日 退職日:平成30年7月31日
退職手当支給月:平成30年9月
退職手当支給額:180万円
「受給に関する申告書」及びA社から交付を受ける退職所得の源泉徴収票を支払者へ提出します。
1 A社の場合
甲さんにとって、その年最初の退職手当の受給となるので、A社は以下のとおり勤続年数(就職日から退職日)を計算し退職所得控除額を計算した上で、源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します。
イ 勤続年数の計算
勤続年数は、平成21年4月1日から平成30年3月31日ですから9年となります。
ロ 退職所得控除額の計算
退職所得控除額は、次の表のとおりです。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
40万円×9年=360万円
退職所得控除額は、360万円になります。
ハ 課税退職所得金額の計算
退職手当支給額から、上記ロで計算した退職所得控除額を差し引いた金額を2分の1にします(2分の1にした金額に千円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。)。
(400万円-360万円)×1/2=20万円
課税退職所得金額は、20万円になります。
ニ 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額の計算
上記ハで求めた課税退職所得金額に応じて、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の「税額」欄の算式に従い源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を求めます(求めた税額に1円未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てます。)。
20万円×5%×102.1%=10,210円
A社が源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、10,210円となります。
2 B社の場合
甲さんにとって、その年2か所目の退職手当の受給となりますので、B社では既に支払を受けたA社からの退職手当も含めて源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します。
イ 勤続年数の計算
最も長い勤続期間はA社ですので、A社の勤続期間にA社と重複しないB社の勤続期間を加算します。これは、甲さんの最も古い就職の日から今回の退職の日までの期間と同じになりますので、最も古いA社の就職の日平成21年4月1日からB社の退職の日平成30年7月31日までの9年4か月となります。1年未満の端数は1年に切り上げますので、勤続年数は10年になります。
ロ 退職所得控除額の計算
上記退職所得控除額の表に基づき計算すると
40万円×10年=400万円
退職所得控除額は400万円になります。
ハ 課税退職所得金額の計算
A社とB社の退職金を合計した金額から、上記ロで計算した退職所得控除額を差し引いた金額を2分の1にします(2分の1にした金額に千円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。)。
{(400万円+180万円)-400万円}×1/2=90万円
課税退職所得金額は、90万円になります。
ニ 源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額の計算
上記ハで求めた課税退職所得金額に応じて、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の「税額」欄の算式に従い所得税及び復興特別所得税の額を求めます(求めた税額に1円未満の端数がある場合にはその端数を切り捨てます。)。
90万円×5%×102.1%=45,945円
A社の退職金について源泉徴収された所得税及び復興特別所得税の額10,210円を差し引きます。
45,945円-10,210円=35,735円
B社が源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、35,735円になります。
(通法118、119、通令40、所法30、120、122、201、203、所令69、所規77、所基通201-2、復興財確法28、31)
出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm)