試験研究費の総額に係る税額控除制度
[平成31年4月1日現在法令等]
1 制度の概要
「試験研究費の総額に係る税額控除制度」は、その年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその年分の総所得金額に係る所得税額から控除することを認めるものです。
2 適用対象者
この制度の適用対象者は、青色申告書を提出する個人です。
3 適用対象年分
この制度の適用対象年分は、事業を廃止した日の属する年分以外の年分です。
4 試験研究費の額
この制度の対象となる試験研究費の額とは、製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費及び経費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用などの額をいいます。ただし、試験研究に充てるために他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額が試験研究費の額となります。
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5-1 税額控除額の計算(平成30年分・令和元年分)
(1) 試験研究費の総額に係る税額控除
税額控除額 = 試験研究費の額 × 税額控除割合
- (注1) 税額控除割合は、次の区分に応じて定める割合です。
イ 増減試験研究費割合が5%超の場合
9%+(増減試験研究費割合-5%)×0.3
【平成30年分及び令和元年分は14%が上限】ロ 増減試験研究費割合が5%以下の場合
9%-(5%-増減試験研究費割合)×0.1【6%が下限】ハ 事業を開始した年(相続又は包括遺贈により当該事業の承継した年を除きます。)及び比較試験研究費の額が零の場合
8.5% - (注2) 控除限度額は、次のとおりです。
イ 試験研修費割合が10%以下の場合
調整前事業所得税額の25%相当
ロ 試験研究費割合が10%超の場合
調整前事業所得税額の25% + 調整前事業所得税額 × ((試験研究費割合 - 0.10) × 2【10%が上限】)により計算した金額
(2) 中小企業技術基盤強化税制における税額控除
中小事業者については、上記(1)に代えて、次の算式により算出された額を控除することができます。
- イ 増減試験研究費割合が5%以下の場合
税額控除額 = 試験研究費の額 × 12%
控除限度額は、調整前事業所得税額の25%相当額となります。 - ロ 増減試験研究費割合が5%超の場合
税額控除額 = 試験研究費の額 × (12%+(増減試験研究費割合-5%) × 0.3)
【下線部は17%が上限】
控除限度額は、調整前事業所得税額の35%相当額となります。
(注) 試験研究費割合が10%超の場合の控除限度額は、以下のとおりとなります。
調整前事業所得税額の25% + 調整前事業所得税額 × ((試験研究費割合-0.10)×2【10%が上限】)により計算した金額
(3) 特別試験研究費に係る税額控除
試験研究費の額のうち、特別試験研究費の額(上記(1)又は(2)の適用を受ける特別試験研究費の額は除きます。)がある場合については、次のイ及びロにより算出された額の合計額を控除します。
- イ 特別試験研究費の額のうち、国の試験研究機関や大学その他これらに準ずる者と共同し、又はこれらの者へ委託して行う試験研究費の額×30%により算出された額
- ロ 特別試験研究費の額のうちイ以外の金額×20%により算出された額
控除限度額は、調整前事業所得税額の5%相当額となります。この税額控除限度額は上記(1)及び(2)とは別枠です。
(4) 試験研究費が増加した場合等の税額控除
令和元年分までの各年分において、適用年分の試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、その超える部分の金額に超過税額控除割合(試験研究費割合から10%を控除した割合に0.2を乗じて計算した割合をいう。)を乗じて計算した金額を控除します。
控除限度額は調整前事業所得税額の10%相当額となります。
5-2 税額控除額の計算(令和2年分以後)
(1) 試験研究費の総額に係る税額控除
税額控除額 = 試験研究費の額 × 税額控除割合
- (注1) 税額控除割合は、次の区分に応じて定める割合です。
- (注2) 税額控除額の控除限度額は、調整前事業所得税額の25%相当額が控除限度額となります。
- (注2-1) 令和2年分及び令和3年分において、試験研究費割合が10%を超える場合は、次のとおりです。
税額控除割合【14%が上限】 = 税額控除割合+(税額控除割合×控除割増率)
※ 控除割増率【10%が上限】=(試験研究費割合-10%)×0.5
税額控除額の控除限度額は、次のとおりです。
調整前事業所得税額の25%相当額 + (調整前事業所得税額 × (試験研究費割合-0.10)×2【10%が上限】)
イ 増減試験研究費割合が8%超の場合
9.9%+(増減試験研究費割合-8%)×0.3
【10%が上限。令和2年分及び令和3年分は14%】
ロ 増減試験研究費割合が8%以下の場合
9.9%-(8%-増減試験研究費割合)×0.175【6%が下限】
ハ 事業を開始した年(相続又は包括遺贈により当該事業の承継した年を除きます。)及び比較試験研究費の額が零の場合
8.5%
(2) 中小企業技術基盤強化税制における税額控除
中小事業者については、上記(1)に代えて、次の算式により算出された額を控除することができます。
税額控除額 = 試験研究費の額 × 税額控除割合
税額控除割合 = 12%
控除限度額は、調整前事業所得税額の25%相当額となります。
- (注1) 令和2年分及び令和3年分において、増減試験研究費割合が8%を超える場合は、次のとおりとなります。
- (注2) 令和2年分及び令和3年分において、試験研究費割合が10%を超える場合は、次のとおりとなります。
税額控除割合【17%が上限】 = 12%+((増減試験研究費割合-8%)×0.3)
控除限度額は、調整前事業所得税額の35%相当額となります。
<税額控除割合>
イ 増減試験研究費が8%を超える場合((注1)に該当する場合)
税額控除割合【17%が上限】 = A+(A×控除割増率)
※ A=(注1)の税額控除割合12%+((増減試験研究費割合-8%)×0.3)
※ 控除割増率【10%が上限】=(試験研究費割合-10%)×0.5
ロ 増減試験研究費が8%以下の場合
税額控除割合 = 12%+(12%×控除割増率)
※ 控除割増率【10%が上限】=(試験研究費割合-10%)×0.5
<控除限度額>
調整前事業所得税額の25%相当額+(調整前事業所得税額×{(試験研究費割合-10%)×2【10%が上限】}
(3) 特別試験研究費に係る税額控除
試験研究費の額のうち、特別試験研究費の額(上記(1)又は(2)の適用を受ける特別試験研究費の額は除きます。)については、次のイ、ロ及びハにより算出された額の合計額を控除します。
- イ 特別試験研究費の額のうち、国の試験研究機関や大学その他これらに準ずる者と共同し、又はこれらの者へ委託して行う試験研究費の額×30%により算出された額
- ロ 特別試験研究費の額のうち新事業開拓事業者等と共同して行う試験研究又は新事業開拓事業者等に委託する試験研究で、革新的なものに係る試験研究費の額(イの額を除きます。)×25%により算出された額
- ハ 特別試験研究費の額のうちイ及びロ以外の金額×20%により算出された額
控除限度額は、調整前事業所得税額の10%相当額となります。この税額控除限度額は上記(1)及び(2)とは別枠です。
6 用語の説明
- (1) 「増減試験研究費割合」とは、増減試験研究費の額の比較試験研究費の額に対する割合をいいます。
- (2) 「増減試験研究費の額」とは、適用年の試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した額をいいます。
- (3) 「比較試験研究費の額」とは、適用年前3年以内の各年分の試験研究費の額を平均した額をいいます。
- (4) 「調整前事業所得税額」とは、次の算式により計算した金額をいいます。
総所得金額に係る所得税額(※1) ×事業所得の金額
i+ii(※2)- i…事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得、雑所得の合計額
- ii…総合課税の長期譲渡所得の2分の1の金額と一時所得の2分の1の金額の合計額
※1 「総所得金額に係る所得税額」は、配当控除後の額をいいます。
※2 上記の算式中の分母は、損益通算や純損失等の繰越控除等をする前の黒字の所得金額の合計額です。
- (5) 「試験研究費割合」とは、適用年分の試験研究費の額の平均売上金額に対する割合をいいます。
- (6) 「平均売上金額」とは、適用年分及びその年前3年以内の各年分の売上金額の平均額をいいます。
- (7) 「特別試験研究費の額」とは、試験研究費のうち国の試験研究機関や大学その他の者と共同して行う試験研究などに係る試験研究費の額で一定のものをいいます。
7 適用要件
この制度の適用を受けるためには、適用を受ける試験研究費の額等、控除を受ける金額を確定申告書に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。
(旧措法10、旧措令5の3、旧措規5の6、平29改正法附則44、措法10、措令5の3、措規5の6、平31改正法附則29)
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出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1270.htm)