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非居住者に係る外国税額控除

[平成31年4月1日現在法令等]

1 非居住者に係る外国税額控除とは

 非居住者は、国内源泉所得についてわが国で課税されますが、国内に恒久的施設を有する非居住者がその恒久的施設に帰属する所得(恒久的施設帰属所得)について外国の法令で所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)の課税対象とされる場合、わが国及びその外国の双方で二重に所得税が課税されることになります。

 この国際的な二重課税を調整するために、恒久的施設を有する非居住者が恒久的施設帰属所得につき外国所得税を納付することとなる場合には、一定の金額(以下「所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その外国所得税の額をその納付することとなる年分の所得税の額から差し引くことができます。これを、「非居住者に係る外国税額控除」といいます。

(注) その外国所得税の額が所得税の控除限度額を超える場合には、一定の金額(以下「復興特別所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その超える金額をその年分の復興特別所得税額から差し引くことができます。

2 非居住者に係る外国税額控除の対象となる外国所得税の範囲

(1) 外国所得税に含まれるもの

 外国所得税とは、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税をいい、外国又はその地方公共団体により課される次のものを含みます。

  1. (1) 超過所得税その他個人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
  2. (2) 個人の所得又はその特定の部分を課税標準として課される税の附加税
  3. (3) 個人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、個人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
  4. (4) 個人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、個人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税

(2) 外国所得税に含まれないもの

 外国又はその地方公共団体により課される税であっても、次のものは外国所得税に含まれません。

  1. (1) 税を納付する人が、その税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することができる税
  2. (2) 税を納付する人が、税の納付が猶予される期間を任意に定めることができる税
  3. (3) 複数の税率の中から税を納付することとなる人と外国若しくはその地方公共団体又はこれらの者により税率を合意する権限を付与された者との合意により税率が決定された税のうち一定の部分
  4. (4) 外国所得税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税

(3) 外国税額控除の対象とならない外国所得税

 外国所得税であっても、次のものは、非居住者に係る外国税額控除の対象にはなりません。非居住者に係る外国税額控除の対象となる外国所得税の額を、以下「控除対象外国所得税の額」といいます。

  1. (1) 通常行われる取引と認められない一定の取引に基因して生じた所得に対して課される外国所得税の額
  2. (2) 非居住者の居住地国において課される外国所得税の額(非居住者が支払をうけるべき利子、配当その他これらに類するものの額を課税標準として源泉徴収の方法により課される外国所得税の額で、その居住地国の法令の規定又は租税条約の規定により、その居住地国の外国所得税額以外の外国所得税の額から控除しないこととされるものを除く。)
  3. (3) 非居住者の居住地国以外の国において課される外国所得税の額のうち、その外国所得税の課税標準となる所得について租税条約が適用されるとしたならばその租税条約の規定による限度税率を超える部分(又は免除することとされる金額)に相当する金額
  4. (4) 外国において課される外国所得税の額のうち、外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律の規定により、軽減することとされる部分に相当する金額又は免除することとされる額に相当する金額

3 非居住者に係る外国税額控除の計算方法

(1) 非居住者に係る外国税額控除額の計算は、次の場合に応じて、それぞれ次の金額となります。

  1. (1) 控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額に満たない場合
     外国税額控除額は、控除対象外国所得税の額となります。
  2. (2) 控除対象外国所得税の額が所得税の控除限度額を超える場合
     外国税額控除額は、所得税の控除限度額と次のイ(1)又はロ(2)のいずれか少ない方の金額との合計額となります。
    1. イ 控除対象外国所得税の額から所得税の控除限度額を差し引いた残額
    2. ロ 復興特別所得税の控除限度額

(2) 所得税の控除限度額及び復興特別所得税の控除限度額は次に算式により計算します。

  1. (1) 所得税の控除限度額=その年分の恒久的施設帰属所得に係る所得税の額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の恒久的施設帰属所得金額)
  2. (2) 復興特別所得税の控除限度額=その年分の恒久的施設帰属所得に係る復興特別所得税の額×(その年分の調整国外所得金額/その恒久的施設帰属所得金額)
  1. (注1) 「その年分の恒久的施設帰属所得に係る所得税の額」とは、配当控除や(特定増改築等)住宅借入金等特別控除などの税額控除、災害減免額を適用した後の恒久的施設帰属所得に係る所得税の額をいいます。
  2. (注2) 「その年分の恒久的施設帰属所得金額」とは、純損失の繰越控除や雑損失の繰越控除の規定を適用しないで計算した場合のその年分の恒久的施設帰属所得金額をいいます。
  3. (注3) 「その年分の調整国外所得金額」とは、純損失の繰越控除や雑損失の繰越控除の規定を適用しないで計算した場合のその年分の恒久的施設帰属所得金額のうち国外所得金額に係るものをいいます。ただし、その年分の国外源泉所得が、その年分の恒久的施設帰属所得金額に相当する金額を超える場合には、その年分の恒久的施設帰属所得金額に相当する金額に達するまでの金額とします。

4 国外所得金額とは

 非居住者に係る外国税額控除の控除限度額の基礎となる国外所得金額は、非居住者の恒久的施設帰属所得金額のうち次のいずれかに該当するものをいいます。なお、租税条約の適用を受ける居住者について、その租税条約において異なる定めがある場合における国外源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めることとされています。

  1. (1) 国外にある資産の運用又は保有により生ずる所得
  2. (2) 国外にある資産の譲渡により生ずる所得として一定のもの
  3. (3) 国外において人的役務の提供を主たる内容とする一定の事業を行う者が受ける人的役務の提供に係る対価
  4. (4) 国外にある不動産、国外にある不動産の上に存する権利若しくは国外における採石権の貸付け(地上権又は採石権の設定その他他人に不動産、不動産の上に存する権利又は採石権を使用させる一切の行為を含みます。)、国外における租鉱権の設定又は非居住者若しくは外国法人に対する船舶若しくは航空機の貸付けによる対価
  5. (5) 所得税法第23条第1項(利子所得)に規定する利子等及びこれに相当するもののうち次に掲げるもの
    1. (1) 外国の国債若しくは地方債又は外国法人の発行する債券の利子
    2. (2) 国外にある営業所に預け入れられた預金又は貯金(所得税法第2条第1項第10号に規定する一定のものに相当するものを含みます。)の利子
    3. (3) 国外にある営業所に信託された合同運用信託若しくはこれに相当する信託、公社債投資信託又は公募公社債等運用投資信託若しくはこれに相当する信託の収益の分配
  6. (6) 所得税法第24条第1項(配当所得)に規定する配当等及びこれに相当するもののうち次に掲げるもの
    1. (1) 外国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息
    2. (2) 国外にある営業所に信託された投資信託(公社債投資信託並びに公募公社債等運用投資信託及びこれに相当する信託を除きます。)又は特定受益証券発行信託若しくはこれに相当する信託の収益の分配
  7. (7) 国外において業務を行う者に対する貸付金(これに準ずるものを含む。)で当該業務に係るものの利子(一定の利子を除き、一定の債権の買戻又は売戻条件付売買取引から生ずる差益として一定のものを含みます。)
  8. (8) 国外において業務を行う者から受ける次の使用料又は対価でその業務に係るもの
    1. イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料又はその譲渡による対価
    2. ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含みます。)の使用料又はその譲渡による対価
    3. ハ 機械、装置その他一定の用具の使用料
  9. (9) 国外において行う事業の広告宣伝のための賞金として一定のもの
  10. (10) 国外にある営業所又は国外において契約の締結の代理をする者を通じて締結した外国保険業者の締結する保険契約その他の年金に係る契約で一定のものに基づいて受ける年金(年金の支払の開始の日以後に当該年金に係る契約に基づき分配を受ける剰余金又は割戻しを受ける割戻金及び当該契約に基づき年金に代えて支給される一時金を含みます。)
  11. (11) 次の給付補填金、利息、利益又は差益
    1. (1) 所得税法第174条第3号に掲げる給付補填金のうち国外にある営業所が受け入れた定期積金に係るもの
    2. (2) 所得税法第174条第4号に掲げる給付補填金に相当するもののうち国外にある営業所が受け入れた同号に規定する掛金に相当するものに係るもの
    3. (3) 所得税法第174条第5号に掲げる利息に相当するもののうち国外にある営業所を通じて締結された同号に規定する契約に相当するものに係るもの
    4. (4) 所得税法第174条第6号に掲げる利益のうち国外にある営業所を通じて締結された同号に規定する契約に係るもの
    5. (5) 所得税法第174条第7号に掲げる差益のうち国外にある営業所が受け入れた預金又は貯金に係るもの
    6. (6) 所得税法第174条第8号に掲げる差益に相当するもののうち国外にある営業所又は国外において契約の締結の代理をする者を通じて締結された同号に規定する契約に相当するものに係るもの
  12. (12) 国外において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約(これに準ずる契約として一定のものを含みます。)に基づいて受ける利益の分配
  13. (13) 上記(1)から(13)までに掲げるもののほか、その源泉が国外にある所得として一定のもの

5 非居住者に係る外国税額控除の繰越控除

 非居住者に係る外国税額控除は、外国所得税を納付することとなる日の属する年分において、わが国の税法において課されるべき恒久的施設帰属所得に係る所得税額について、その年分の恒久的施設帰属所得金額に対する調整国外所得金額に対応する部分の金額を限度として非居住者に係る外国税額控除を認めるものです。

 しかしながら、国外源泉所得が生じた年とその国外源泉所得に係る外国所得税を納付することとなる年が常に一致するとは限りません。このように、国外源泉所得の発生年と外国所得税の納付年とにずれが生じ得ることを踏まえ、控除対象外国所得税の額と所得税の控除限度額との差額のうち一定額を翌年以降3年間繰り越すことのできる外国税額控除の繰越控除が設けられています。

(1) 控除対象外国所得税の額が控除限度額を超える場合

 その年において納付することとなる控除対象外国所得税の額が、その年の所得税の控除限度額及び復興特別所得税の控除限度額と地方税の控除限度額(その年の所得税の控除限度額の30%)との合計額を超える場合、その年の前年以前3年内の各年の所得税の控除限度額のうち、その繰り越される部分として一定の金額(以下「繰越控除限度額」といいます。)があるときは、繰越控除限度額を限度として、その超える部分の金額をその年分の所得税の額から控除します。

(2) 控除対象外国所得税の額が控除限度額に満たない場合

 その年において納付することとなる控除対象外国所得税の額が、その年の所得税の控除限度額に満たない場合、その年の前年以前3年内の各年において納付することとなった控除対象外国所得税の額のうち、その年の繰り越される部分として一定の金額(以下「繰越控除対象外国所得税額」といいます。)があるときは、その所得税の控除限度額からその年に納付することとなる控除対象外国所得税の額を控除した残額を限度として、その繰越控除対象外国所得税額をその年分の所得税の額から控除します。

6 外国所得税の額に異動が生じた場合

(1) 外国所得税の額が減額された場合

 非居住者に係る外国税額控除の適用を受けた年の翌年以後7年内の各年において、その適用を受けた外国所得税の額が減額された場合においてその減額されることとなった年分における非居住者に係る外国税額控除の適用関係は、次のとおりです。

  1. (1) その減額されることとなった日の属する年(以下「減額に係る年」といいます。)において納付することとなる外国所得税の額(以下「納付外国所得税額」といいます。)からその減額された外国所得税の額(以下「減額外国所得税額」といいます。)に相当する金額を控除し、その控除後の金額につき非居住者に係る外国税額控除を適用します。
  2. (2) 減額に係る年に納付外国所得税額がない場合又は納付外国所得税額が減額外国所得税額に満たない場合には、減額に係る年の前年以前3年内の各年の控除限度超過額から、それぞれ減額外国所得税の全額又は減額外国所得税のうち納付外国所得税額を超える部分の金額に相当する金額を控除し、その控除後の金額について非居住者に係る外国税額控除を行います。
  3. (3) 減額外国所得税額のうち上記(1)及び(2)の外国税額控除の適用額の調整に充てられない部分の金額は、外国所得税額が減額された年分の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入します。

(2) 外国所得税の額が増額された場合

 非居住者が外国所得税の額につき非居住者に係る外国税額控除の適用を受けた場合において、その適用を受けた年分後の年分にその外国所得税額の増額があり、かつ、非居住者に係る外国税額控除の適用を受けるときは、増額した外国所得税の額は、その増額のあった日の属する年分において新たに生じたものとして非居住者に係る外国税額控除の計算を行います。

7 非居住者に係る外国税額控除を受けるための手続

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 非居住者に係る外国税額控除の適用を受けるためには、次の書類を確定申告書、修正申告書、更正請求書(以下「申告書等」といいます。)に添付をする必要があります。この場合に外国税額控除の額の計算の基礎となる控除対象外国所得税の額等は、一定の場合を除き、その書類にその控除対象外国所得税の額等として記載された金額が限度となります。

  1. (1) 外国税額控除に関する明細書(非居住者用)
  2. (2) 外国所得税を課されたことを証する書類
  3. (3) 外国の法令により課される税の名称及び金額、その税を納付することとなった日及びその納付の日又は納付予定日、その税を課する外国又はその地方公共団体の名称並びにその税が外国税額控除の対象となる外国所得税に該当することについての説明を記載した書類
  4. (4) 上記(3)の税を課されたことを証するその税に係る申告書の写し又はこれに代わるべきその税に係る書類及びその税が既に納付されている場合にはその納付を証する書類(納税証明書や更正決定に係る通知書、賦課決定通知書、納税告知書、源泉徴収票などを含みます。) など

 また、5で述べたような繰越控除限度額や繰越外国所得税額がある場合で外国税額控除の繰越控除をするときは、それらに係る年のうち最も古い年以後の各年について、その各年の控除限度額やその各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した『外国税額控除に関する明細書』と申告書等を提出し、かつ、非居住者に係る外国税額控除の繰越控除の適用を受けようとする年分の申告書等にこれらの控除を受ける金額を記載するとともに、『外国税額控除に関する明細書』を添付する必要があります。

 なお、このときの非居住者に係る外国税額控除の額の計算の基礎となる控除対象外国所得税の額等は、一定の場合を除き、その各年分の申告書等に添付した上記の書類にその控除対象外国所得税の額等として記載された金額が限度となります。

(所法165の4、165の6、所令292の7~292の9、所基通165の4-1、165の6-1、復興財確法13、14、復興所得税令3)

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出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1241.htm)