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歴史や価値とともに変化する「お値段」⑰ ─ 総理大臣の給料

【転載元】
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ものやサービスの値段は時代によって変わるものです。「高い」「安い」の基準になっている貨幣の価値も時代によって大きく変わります。

さまざまな分野のものやサービスの「お値段」を比較してみましょう。
7月21日に「第25回参議院議員通常選挙」が行われました。各党がさまざまな主張(マニフェスト)を掲げる中、国会議員の報酬と定数の3割カット、国家公務員の人件費2割カットなど「身を切る改革」を主張した党もありました。
この主張の背景には所得、立場、地方と都市、教育など、あらゆる面で格差が生じた社会の中で、昨今では年金における社会保障の格差が話題になっています。

そうしたさなかに行われた参院選だけあり、社会の中に厳然と存在する格差を縮める働きをしなくてはならない国会議員そのものが、給料をもらいすぎているのではないか……という問題を、議員自ら、党自ら、参院選において提起したものが「身を切る改革」でした。
そこで、今回は「お値段」とは少し趣旨が異なりますが、日本の総理大臣、国会議員の給料の変遷と、自治体の首長の給料の格差を見ていきましょう。

歴史や価値とともに変化する「お値段」⑫ ── 鉛筆など文房具のお値段
歴史や価値とともに変化する「お値段」⑬ ── ランドセルのお値段
歴史や価値とともに変化する「お値段」⑭ ── ピアノのお値段
歴史や価値とともに変化する「お値段」⑮ ── そばとラーメンのお値段
歴史や価値とともに変化する「お値段」⑯──食パンと牛乳のお値段

初代総理大臣の月給は800円(約240万円)

近代日本が西欧列強に追いつこうとさまざまな制度を整備し、内閣制度ができたのは明治18(1885)年のこと。
それまで政府は「太政官(だじょうかん)」と呼ばれていましたが、太政官制度が廃止され、新たに内閣制度が創設。初代総理大臣に任命されたのは伊藤博文でした。伊藤博文といえば、そう、昔の千円札に描かれていた人ですね。
その給料は、年額(年俸)9600円でした。月給に単純に割り算すると800円になりますが、いつものように「かけそば一杯」の値段を基準にその値打ちを考えてみると、明治20(1887)年のかけそばは一杯1銭。すなわち800円は、現在の貨幣価値ではおおよそ240万円という計算になります。

初代総理大臣から現総理までの給料の変遷


ただしこうした比較は、当時の日本の人口、経済規模、それ以降の物価上昇率といった要素を無視して、たんにかけそばの価格の倍率をもとにして計算したものですから、あくまで一つの参考にすぎません。
こうした要素を考えあわせると、伊藤博文の給料(月給)は800万円程度になるという説もあります。

給料が月額制になったのは大正時代に入ってからで、大正9(1920)年の総理大臣の給料(月給)は1000円でした。太平洋戦争後の昭和21(1946)年には月給3000円になっています。戦後の大きな経済成長に伴って、総理大臣の給料も上がります。総理大臣の給料も国家公務員「特別職の給与に関する法律」で決められ、昭和42(1967)年の給料は55万円。

平成に入ってからは、当時の金額でも月額200万円近くにまで上がり、平成元(1989)年の給料は189万2000円。ただし、この頃はバブル経済の影響で総理大臣の給料は上がっていましたが、同時に物価も高かったので、現在のデフレ化した物価(かけそば一杯300円で計算しています)をもとに比較すると、当時の実感とはやや離れた数字になってしまうようです。

そして、現在の内閣総理大臣の給料(月給)は約200万円。実際にはこれに文書交通滞在費月100万円などの手当が上乗せされ、ボーナス(期末手当)も出ます。ただし東日本大震災発生後、復興財源の助けに、という趣旨で給料の30%を返納することになっており、総理大臣の年収は、2019年現在は約4000万円です。

トランプ大統領は、月給1ドル?

日本の総理大臣の年収を高いと思うか、安いと思うかは、人それぞれ。
一国の運命を担う最高責任者ですから、このくらい当然で、むしろ安い、と考える人もいるでしょう。ちなみに、三権分立に即して衆議院・参議院の議長および最高裁判所長官も同額です。
国際的に見ると、2015年の時点で、アメリカのオバマ大統領の給料(年俸)は約4850万円だったとのことですから、日本は低い水準だとはいえません。

一方、もともと億万長者であるトランプ大統領は、給料として現在1ドルしか受け取っていないということです。これもまた、1ドルをどう受け取るかは、人それぞれでしょう。

失態が続く国会議員の給料は?

さて、国会議員の給料です。国会議員の給料・報酬は正式には「歳費」と呼びます。
日本で初めて国会が開設された明治23(1980)年の国会議員の報酬は、年額800円。月額では67円。最初に紹介した初代総理大臣の伊藤博文と比べるとかなり安いことがわかります。昭和22(1948)年まではこれも年棒制でした。

昭和23(1948)年には2万8800円に。計算すると現在の貨幣価値では57万6000円になります。
昭和61(1986)年には歳費額が100万円を超えました。現在では129万4000円。このほかにやはり「文書通信交通費」が月に100万円、このほかに各種手当が支給されますから月に約230万円。また、新幹線代など各種の経費も支給されます。

国会議員の不祥事や暴言、失言、辞任するかと思いきや雲隠れ……といった失態が相次ぎ、そうした厚顔ぶりに国民がさほど驚かなくなってしまった今日、「高い給料もらって、なんたる無様さ」という意見が出るのも無理のないところでしょうか。

首長の給料は、1位と最下位で倍近い格差が!

ちなみに明治24(1891)年、初めて東京「市」が設けられた際の給料は年俸4000円。その額は総理大臣の半分ほどだったのです。東京「都」になったのは昭和18(1943)年のこと。

この際の知事の給料(月給)は5350円。現在は145万6000円と条例で定められています。なお、大阪府知事の給料(月給)は現在152万円。ただしこれにもさまざまな手当の制度があり、必ずしもこれが実際の支給額というわけではないようです。

住民による直接選挙で選ばれる都道府県や市町村のトップ=首長の給料にも歴然とした格差があり、1位の自治体は横浜市長。次いで東京都知事と、偶然にも女性首長がトップ2を占めています。

平成28年4月1日時点の「地方公務員給料実態調査」= 全国の自治体別に首長の給料(月額)をまとめたランキング※によると、1位の神奈川県横浜市が159万9000円、2位が東京都知事で145万6000円。そして、最下位の499位は北海道の音更町と、長崎県の雲仙市が同率で85万9000円となっており、1位と最下位では、実に倍近い開きがあることが判明しています。
※同調査では、1787自治体から「首長の給与が高い500自治体」を発表

── 政治に対する不満と政治家に対する不公平感はいつの世にもあるようです。
年金問題がくすぶり続け、先行きの不透明感や閉塞感が社会を覆う中、参院選が導き出した“答え”をあなたはどうとらえているでしょうか。

≪記事作成ライター:帰路游可比古[きろ・ゆかひこ]≫ 
福岡県生まれ。フリーランス編集者・ライター。専門は文字文化だが、現代美術や音楽にも関心が強い。30年ぶりにピアノの稽古を始めた。生きているうちにバッハの「シンフォニア」を弾けるようになりたい。

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