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「脱家電」をめざす、曲がり角にきた大手家電量販店の挑戦

【転載元】
日本クラウド証券株式会社
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かつて東京・秋葉原を中心に一世を風靡し、その後、全国に広まった大型家電量販店。

考えてみれば、昨年から4K放送が始まりテレビの販売台数の増加に期待がかかったが、数十万円もするテレビに対して、簡単に財布のひもは緩まなかったようだ。さらに冷蔵庫、洗濯機、パソコン、Blue-rayなどの家電もそうそう頻繁に買い換えるものではない。
テレビや洗濯機などが店頭で飛ぶように売れたのは過去の栄光で、最近、大型家電量販店の売り上げが伸び悩んでいることは、みなさんもご存じの通り。しかし曲がり角にさしかかっている大型家電量販店が、手ぐすね引いて現状に甘んじているわけではない。新たな市場への挑戦に動き始めているのだ。主要各社の動きを見てみよう。

家電商品の売り上げは、ずっと停滞状態

最近の家電量販店の経営状態はとても厳しい。インターネットによる通信販売の普及は、家電量販店にも大きな打撃を与えている。
家電は、そもそもかさのある商品が多いため、リアルな店舗ではある程度のフロア面積を持たなければならない。地価や家賃の高い大都市周辺では、その広さに見合った売り上げを確保するのはなかなか大変だ。その点、店舗をもたずに倉庫にストックしておくだけの通販業者は、リアル店舗分のコストが軽減できるため、家電量販店が通販業者が真っ向から戦うには、大きなハンデがあるのだ。コストの差は当然、販売価格にも現われ、安さが売りの家電量販店であるにもかかわらず、店頭に表示された価格はそれほど安くはない、という皮肉な状況が生まれている。

表を見てもわかるように、家電量販店の売り上げは、2011年ころまでは5兆円を超える勢いで右肩上がりだったが、その後はずっと足踏み状態が続いている。
加えて、少子化による若者世帯の減少で、結婚を機に家電を取りそろえるような風潮は大きく減少している。昨年から売り出されている4K、8Kなどの新しい機能を搭載したテレビも、思ったほどの売り上げに結びついていない。

とりわけ各社が心配しているのは、東京オリンピック後に見込まれる家電需要の落ち込みだ。大きなイベントのおかげでなんとかここ1~2年は持ちこたえても、その後に一気に冷え込むことは関係者の一致した見方だ。
そこで、大手家電量販店各社は、これまでの家電一本やりの業態から一歩踏み出して、新しい業種や販売システムに挑戦し、活路を見出そうとしている。以下、代表的な大手家電量販店の動きを紹介しよう。

住宅&家具関連に活路を求めるヤマダ電機

今年2月の中旬ごろ、業績低迷で苦しむ家具メーカーの大塚家具に助け舟を出すような形でヤマダ電機が業務提携をすると発表された。一見すると異業種間の唐突な組み合わせのようにも見えるが、実はそうでもない。
ヤマダはすでに住宅産業に進出を果たしており、住宅に家具はつきものなので、供給元としての大塚家具は相互に利益を共有し合える関係と判断したためだ。
ヤマダは、2011年に中堅住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収し、ハウスメーカーとしての一歩を踏み出した。今は子会社ヤマダホームズとして、住宅の新築やリフォームなどを手広く営業している。

全国のヤマダ電機店舗のうち約40店で「家電住まいる館」を開設。たとえば横浜の港北センター本店では「住まいなんでもご相談受付コーナー」を設けて、家電購入を目的に来た人に、家の新築からリフォーム、家具購入の相談にまでのっている。売り場はさながらショールームのようで、ソファやテーブル、コンロ、流し、トイレなど住まいに関するあらゆる商品がそろっている。とても家電量販店とは思えないフロアの姿だ。
ヤマダは、こうした住宅関連を合わせた新しい業態の店舗を、今後100店舗以上に増やす予定でいる。

あらゆる生活用品を売るビックカメラ

異業種との業務提携や新商品への挑戦では、ビックカメラも負けてはいない。
2012年の秋、東京新宿の三越デパートの跡地に、ファストファッションのユニクロとビックカメラが組んだ「ビックロ」が開店したときのインパクトは相当強かった。ひとつのビルが家電と衣料のコラボだけで運営されることなどありえるのかと、世の常識を打ち破ったからだ。そして、このコラボは見事に成功している。ただし、ここはフロア間の業務提携で、ビックカメラの家電量販店という立ち位置は変わっていない。

ビックカメラが本格的に異業種に挑戦しているのを世間にアピールしたのは、2017年の秋。東京秋葉原の中心地「中央どおり」に立つ旧ソフマック秋葉原本館を全面リニューアルし、「ビックカメラAKIBA」をオープンしたときだ。
1階の売り場をそれまでのスマートフォンなどから一転し、薬や日用品、土産、菓子、酒類など、まるで街の大手ドラッグストアのような店構えに替えてしまった。日本を代表する電気街のど真ん中の店舗に、家電商品がまったく見当たらないのには、みな驚いた。ビックカメラの脱家電への意気込みを示す証といえる。

1階に約200台の自転車がズラリと並ぶビックカメラ

ビックカメラの新事業への挑戦は、まだまだある。たとえば東京調布市の「ビックカメラ京王調布店では、1階に約200台の自転車がズラリ。電動マウンテンバイクからいわゆるママチャリまで、自転車ならなんでもそろう品ぞろえだ。
いっぽう、東京原宿の竹下通りにオープンした「ビックカメラセレクト原宿店」では、化粧品や日用品をメインに理美容家電や電動歯ブラシなど小物家電を融合させた店づくりを採用し、若い女性や国内外の観光客をターゲットにしている。
こうした新しい業種へのチャレンジは業績にも表れている。2018年の売上高は8440億円で、前年度比6.8%増。その中でも、ゲームが19.3%増、酒類が20.3%増、医療品・日用雑貨品が27.9%増、スポーツ用品が23.7%増など、軒並み非家電用品の売り上げが伸びている。
ビックカメラの新挑戦は、ここまで成功しているといえる。

アマゾンに対抗するヨドバシカメラ


大手家電量販店の一角であり、駅前の一等地に店舗を構えるヨドバシカメラは、昨年の12月に新宿西口本店の地下2階に、同社としては初となる「ヨドバシ酒店」をオープン。約1500種類の酒を並べて新事業への進出をアピールした。
しかし、ヨドバシカメラの真の狙いは、そのレベルではない。
ヨドバシカメラは、家電量販店のなかでは早くから通信販売に力を入れており、ウェブサイトのヨドバシドットコムで扱う商品はすでに500万点以上。家電製品はもとより、酒類は7000アイテム以上。化粧品から日用品、スポーツ用品、レジャー関連用品など、あらゆる生活関連物資を通販で扱っている。

また、その配送システムも話題で、ヨドバシエクストリームと呼ばれる独特の配送車が、ネット注文を受け付けるとすぐに稼働。基本的には即日配送で、しかも配送料は無料だ。ヨドバシのネット通販は早くて便利と有名だ。こうしたネット通販へのシフトは、あきらかにアマゾンを意識したものとされる。家電量販店を脱して、通信販売大手へと進出したいという意気込みの表れだ。

── 以上にあげたのは、大手家電量販店の新しい動きの例だが、中小の量販店でも新たな取り組みは始まっている。共通しているのは、このインターネットの時代に、大型店舗で声を張り上げて安売りをアピールしているだけでは、取り残されるのは目に見えているということ。
もしかして10年後、家電量販店は街から姿を消しているかもしれないともいわれている過酷な状況下にある。それほど、大手家電量販店では急激な変化が、いま起きている。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。

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