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飼い主の高齢化でペット減少するも、堅実に拡大し続ける「ペットビジネス」

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ペットブームが続いている。

街を歩けば実に多くの犬を連れて散歩している人とすれ違い、裏路地には猫がのんびり昼寝をしている風景によく出会う。猫がまったり街中を闊歩する姿は平和の象徴のようにも見えるが、そのペット周辺には、さまざまなビジネスが繰り広げられている。

日本では犬・猫ともに1000万頭近くがペットとして飼育されているといわれ、ペットフードやペットサロン、動物病院などに代表されるペットビジネスもその規模を安定的に拡大している。
今回は日本のペット事情をひも解き、それに伴うペットビジネスの現状について探ってみよう。

ペットとの共生は紀元前から

人類が動物を飼う習慣は、古くから存在していたようだ。犬が家畜となったのは1万5000年前ごろとされている。イスラエルでは、人間と犬が一緒に埋葬された1万2000年前の遺跡が発掘されている。
一方、猫が家畜化されたのは、穀物を栽培するようになってから。穀物を食い荒らすネズミの退治用に猫が飼われ出したと考えられる。エジプトで発見された紀元前4000年の遺跡で、猫の骨が発掘されている。

日本で、人が犬と一緒に生活するようになったのは、やはり1万年以上前のことで、縄文時代とされている。『日本書紀』にも、神として犬が登場するシーンがある。

猫が登場するのはやや遅れて、奈良時代とされる。中国から仏教の経典などが日本に持ち込まれるようになると、猫も一緒に連れてこられたようだ。紙を食べ荒らすネズミの退治用だったと考えられる。
また、平安時代の貴族たちは小鳥を飼う習慣があったようだ。美しい鳴き声は、優雅な生活にマッチしたのだろう。

江戸時代中期になると、庶民の間にはペットブームも起こり、ペット用の動物を扱う店や飼い方の指南書のようなものも売られていた。日本のペットビジネスのルーツは、江戸時代にさかのぼるのだ。

子どもの数より多いペット数。近年の日本のペット事情とは

最近のペット事情はどうなっているのだろうか。
一般社団法人ペットフード協会によると、2016年の犬の飼育頭数は約987万8000頭、猫の飼育頭数は約 984万7000頭と推計されている。犬猫合わせて2000万頭近くがペットとして飼育されているわけだ。
ちなみに、2017年、15歳未満の子どもの数は1571万人(男子805万人、女子767万人)なので、ペットの数は、犬猫だけでも子どもの数をはるかに上まわっているのが現状だ。

まさにペットブームと言えそうだが、実はここ数年、犬の飼育頭数は減少傾向にあるという。2008年の1310万1000頭をピークに、毎年約50万頭ずつ減少し、2016年には1000万頭を切っているのだ。

この原因には、犬自身の自然減少が考えられるが、加えて飼い主の高齢化も原因のひとつとなっている。長年、犬を飼い続けてきた飼い主自身が高齢となったケースだ。犬の散歩や世話が難しくなり、犬を手放すことが増え、日本社会の少子高齢化問題がペット減少につながっているというわけだ。そうした中、今後は猫の飼育頭数のほうが犬より増えていく傾向にあると考えられている。

ペットビジネスの市場規模は安定成長


日本のペット関連市場は、2016年度は1兆4683億円程度(矢野経済研究所調査)と見られている。
その内訳はフード類が約3割、ペット用品が約2割、生体販売、ペットサロン、医療、保険などのサービスが残りの5割を占める。
おおむね年率1%程度で安定的に成長してきており、国内市場が縮小する中でも有望な市場だといえるだろう。

ペットビジネスは「ペット共生生活産業」ともいわれ、飼い主の需要の広がりとともにその規模を拡大してきた。「ペットは家族の一員」という考え方が一般的になり、サービスのラインアップもまさに「ゆりかごから墓場まで」へと広がっていることが、市場を活性化させる要因のひとつになっている。

また、ペットは家畜と違い、人間が食べるものではない。人間の食に直結する市場ではないために、商品やサービスにかかる規制が少ない。これが新規参入のハードルを下げている。異業種から参入する企業も多く、それも市場拡大を推し進める要因になっているのだ。

最新ペットビジネスはここまできている

ペットのトリミングなどの美容業務を行ったり、ペット向けホテルとしてペットの一時預かりを行う「ペットサロン」(第一種動物取扱業者の保管業種)の数は、約2万4000店(2015年)。全国的に増加傾向にある。

また、2015年のペット保険保有契約件数は106.5万件(富士経済調べ)で、加入率は全体の5.3%となっている。この加入率はスウェーデン80%、イギリス20%などといわれ、欧米での加入率が高い。今後、日本でも伸びる可能性が高い業界といえる。
ペットビジネスは、人間に対するサービスと同じように、実に多岐に渡る分野で新しいサービスが生まれているのだ。

実際にどのような新しいペットビジネスがあるのかを見てみよう。

●完全オーダーメイドのペットホテル
宿泊中のペットの予定を完全オーダーメイドで作成することができるホテル。散歩の回数や時間、ごはんやおやつの種類やタイミングなど自由に設定し、スケジュールを決められる。完全個室のスイートルームもあるし、宿泊中のペットの様子をメールで配信するサービスもある。

●ペットのための信託サービス
飼い主が亡くなった場合、その遺産を飼っていたペットのために使うというもの。遺産の一部を管理会社に信託し、そこからペットの飼育にかかる費用を支払う。

●老犬ホーム・老猫ホーム
介護が難しい大型の老犬や老猫を預かるサービス。

●ペット版 “民泊”
ペットの飼い主と、預かり手のマッチングサービス。飼い主がWeb上で日時や場所など、ペットに関する情報を入力すれば、預かってくれる人を見つけられる。

●日本動物高度医療センター
日本初の上場企業となった動物病院。同社川崎本院には、放射線治療装置、PET-CT、MRIなどの最先端の検査機器が完備されている。また、循環器・呼吸科、脳神経・整形科、眼科、腫瘍科など11の専門の診療科がそろう。

●ペット見守りサービス
ペットが写っている映像を飼い主のスマホに届けるサービス。飼い主が外出先からスマホで自宅のペットの様子を確認可能。また、ペットのごはんやトイレの回数などをグラフで確認し、ペットの行動変化も把握できる。

●ロボット型おもちゃ
Wi-Fiに接続してスマホ専用アプリで操作ができるペット用おもちゃ。ボール型の本体はカメラやスピーカーが搭載され、外出中にペットの様子をスマホで確認し、ペットに話しかけることも可能。ペットがボールを遊んで転がせば、入れておいたペット用のおやつを出す仕組みも。

家族化と高齢化がカギになる、今後のペットビジネス


これからの日本のペットビジネスは、「家族化」と「高齢化」という2つのキーワードがポイントとなる。ペットは「家族の一員」として扱われること、そしてペットも飼い主もますます「高齢化」していくことが、これからの大きなカギとなることは間違いない。

一方で、内閣府が行ったペットに関するペットに関する世論調査では、以下のような結果になっている。
【ペット飼育がよい理由】
●「生活に潤いや安らぎが生まれる」51.2%
●「家庭がなごやかになる」42.5%
●「子どもたちが心豊かに育つ」40.6%
●「防犯や留守番に役立つ」28.1%
●「育てることが楽しい」24.7%

さらに 【ペット飼育の問題点】では、
●「最後まで飼わない人がいる」58.2%
●「捨てられる犬やねこが多い」55.5%
●「他人のペットの飼育により迷惑がかかる」30.6%
●「ペットの習性などを知らないで飼っている人がいる」22.7%

そして、【ペット飼育による迷惑】では、
●「散歩している犬のふんの放置など飼い主のマナーが悪い」58.1%
●「ねこが敷地内に入り、ふん尿をしていく」40.9%
●「鳴き声がうるさい」36.1%
●「犬の放し飼い」30.9%

いずれにせよ、現在はペットを取り巻く環境が変化する過渡期なのかもしれない。飼い主が高齢化すれば散歩を代行するサービスがもてはやされることになるだろうし、ペットの健康により高い注目が集まるようになれば、獣医の検診サービスや首輪型ウェアラブルデバイスが重宝されることになる。
人生のパートナーとしての役割をペットのトレンドをうまくつかむビジネスが、市場を活性化していくことは間違いないだろう。

≪記事作成ライター:三浦靖史≫
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、歴史、観光など、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車など。

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