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マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題~私たちができること~

【転載元】
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ストローをきっかけとして、世界的な環境問題として関心を集めているマイクロプラスチックごみ。

コスト、資源、環境汚染、健康への影響など問題は山積みですが、地球の未来のために、美しい海を守り続けるために、なんとかしなければならないという思いが人々を動かしています。
マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題は地球規模の課題であり、早急に検討しアクションをとらなければなりません。一人あたりの使い捨てプラスチックごみの量が世界で2番目に多いとされた日本でも、さまざまな取り組みが始まっています。各国が解決に向けて進む中、現段階での日本における対応についてお知らせしておきましょう。

増え続け、行き場を失いつつある日本のプラごみ

日本で増え続けるプラスチックごみは年間900万トンといわれています。お菓子の袋にレトルト食品や漬物、納豆など、冷蔵庫の中をのぞいてみても「プラ」という表示がないものを探すほうが大変なくらい、プラスチック製品があふれていますね。特に1990年代半ばから急激に増えたのがペットボトルでした。ビンよりも軽く、丈夫で便利なことから、小売店はもちろんコンビニや自販機など、どこでも手に入るため重宝されているのはご存じの通りです。

プラごみが多いとはいえ、「ペットボトルについてはリサイクルされているのでは?」と思う方も多いはず。確かに、各家庭におけるペットボトルのリサイクルは徹底されていて、回収率は80%程度。なのに、使い終わったペットボトルがごみとなって海や川に流出し、その量が増え続けているのはなぜなのでしょうか。
理由は、回収が追いつかないほどの消費量……に他なりません。

空港や駅、オフィス、大学、遊園地、公的施設などで使われたペットボトルは家庭とは違い、水でゆすいであるわけではありません。キャップやラベルも外されていないので、リサイクルされずにプラごみとして処理されています。そのようなプラごみはこれまで中国などへ輸出していましたが、中国が輸入禁止の措置を決めたことで、行き場を失いつつある状況です。輸出できなくなったプラごみをいかに自国で処理するのか……そのヒントは、ヨーロッパにありました。

回収率97%のノルウェーに学ぶ

ヨーロッパでは、ペットボトルにデポジット制を取り入れている国が多くあります。
例えば、北欧のノルウェーでは、ペットボトル回収率はなんと97%!
同国ではペットボトルはあらかじめ預かり金(デポジット)を上乗せした額で販売されていて(日本円にして約16~33円)、飲み終わった後のペットボトルを専用の機械に入れると、上乗せ分が返金されるしくみを採用しているのです。

しかも、この専用の機械はペットボトルだけでなく、缶やビンを自動で仕分けることができます。また、ジュースなどの液体が残っている場合は回収せずにはねるため、デポジットは戻ってこないのだとか。つまり、きちんとリサイクルをしない人には「罰金」となるわけです。
このようなデポジット制が成り立つのは「プラスチック容器は貸しているもの」という概念があるからなのだそう。

また、ノルウェーではプラスチック製造業者に環境税が課されており、リサイクルするたびに課税率が減るというシステムです。製造業者全体でリサイクル目標値の95%に達した場合はなんと税金が免除されるといいます。もちろん、回収されたプラごみは品質によって繊維製品や新しいペットボトルなどにリサイクルされています。

このような循環型のしくみが日本に当てはまるかどうかわかりませんが、成功している国があるのであれば、手本として学ぶことは多いと思われます。

「世界の都市ランキング3位」からわかること


民間のシンクタンク「都市戦略研究所」が発表する「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」によると、日本は2018年で3年連続の3位という結果でした。
3位に甘んじている理由は、「経済」、「研究・開発」、「文化・交流」、「居住」、「交通・アクセス」の5つの分野では高めのポイントであるのに対し、「環境」において大きく順位を落としているためです。
日本のプラごみ対策や温室効果ガス排出削減など、環境問題への対応が遅れていることは明らかで、世界的な評価の低さが表れています。

ある街頭インタビューで海外からの旅行者に日本の感想を尋ねたところ、その多くがプラスチックバッグ(レジ袋)の過剰供給を口にしていました。何かひとつ小さなものを買っても、どこのショップでも当然のようにレジ袋に入れて渡されることに旅行者は違和感を感じているようです。そして、「レジ袋が有料でないことが信じられないし、必要かどうかを聞かれないことが不思議でならない。日本は環境問題に対して後進国並みだ」と言葉を継ぎます。

コンビニや自販機が当たり前に設置され、プラスチック製ストローをまだ提供している店舗が多い日本。私たちは利便性の高い生活を送っている代わりに、気づかぬうちに日本をプラスチック天国にし、プラスチックごみを過剰に排出、ひいてはマイクロプラスチックごみを大量に生産していたのかもしれません。

日本政府や自治体の取り組みは

G7サミットで「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった国、というレッテルを貼られてしまった日本は、環境NGOなどから批判を浴びていました。環境省はその汚名を返上しようと、憲章以上の数値目標を盛り込む方針を示していましたが、2018年10月19日、「プラスチック資源循環戦略」の素案が次の通りまとめられました。

「プラスチック資源循環戦略」の素案
■小売店のレジ袋の有料配布を義務化し、使用量を2030年までに25%削減する
■バイオマス原料のプラスチックを2030年までに年間200万トン導入する
■すべてのプラスチック製容器・包装について2030年までに6割を目処にリサイクルかリユースする
■プラごみの焼却熱を2035年までに100%有効利用する

レジ袋の有料化を義務づけるなど、今ごろか……という声も漏れ聞こえてきそうですが、これまでは小売店ごとに割引やポイントサービスなどの独自の対応がされてきました。今後は一律化されるので、消費者もエコバッグを常備するなど、ライフスタイルを再考するきっかけになるかもしれません。
引き続き、環境省ではプラスチック資源循環戦略小委員会を開き、2019年6月までに「プラスチック資源循環戦略」を策定する予定です。

また、各自治体や企業もさまざまな対応を検討しはじめています。
2018年8月、東京都は「プラスチック部会」を設置。レジ袋の無償配布の廃止や不法投棄対策などを議論してきた都廃棄物審議会が立ち上げたもので、使い捨てプラスチックの削減を促すしくみや再利用などを進めるべく、専門家などが議論をする予定。年内に中間まとめを発表し、2019年夏頃までに最終答申をまとめるとしています。

2018年9月には、化学業界の5団体が「海洋プラスチック問題対応協議会」を設立。プラごみが環境にどのような影響を与えるか、影響を緩和させる対策について研究するほか、ごみの排出が増えているアジアの新興国でプラごみの管理体制を整える支援を行う予定です。

私たちがまずできること=“4R”の徹底

私たちがプラスチックごみを出さないためにできることは、いったい何があるでしょうか。
基本は、なるべく使い捨てプラスチック製品を使わないこと、コンビニや小売店でも安易に受け取らず「NOレジ袋」「NOストロー」を伝えることです。

そして、利用せざるを得ない場合の大原則が次の4Rです。今後は4Rを実践することで、循環型の社会をつくっていく必要があるといえるでしょう。
■4R……リデュース(Reduce):プラごみを減らす
■4R……リユース(Reuse)詰め替え製品を購入し容器などを再使用する
■4R……リサイクル(Recycle):プラごみは分別回収を行い再生させる
■4R……リペア(Repair):修理して再度使う

2014年に発足したNPO法人「プラスチックフリージャパン(PFJ)」はプラ製品の削減を目指し、レジ袋、ペットボトル、カップ、ストローの使い捨てプラスチックの4大製品を使わないように呼び掛けてきました。マイボトル、マイバックの利用推進だけでなく、今後はマイストローも提案することに。これには個人でも賛同する人が増えており、ストローはステンレス製やアルミ製、紙製など、さまざまな代替品に切り替えられているのだそうです。

── マイクロプラスチックごみが警告する海洋汚染について、自分たちの将来の危機的な問題としてとらえること、そして、自らが考え、行動するときがきている……と切に感じます。

参考URL:朝日新聞、環境省、都市戦略研究所、NHK、プラスチックフリージャパン、ハフポスト、他

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。

【転載元】
日本クラウド証券株式会社
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