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人員も店舗も省力化 ── 生き残りをかけてインフラ改革を推進する銀行業界

【転載元】
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いま、三大メガバンクをはじめとする国内の大手銀行で、人員や店舗網のスリム化が加速している。

カウンターの向こうで大勢の行員が働く従来型の大型店舗は減り、デジタル技術で省力化した少人数の軽量店舗や、相談特化型の小型店舗が次々と登場。ネットバンキングやスマホ決済など、フィンテックサービスの導入が年々進み、実店舗への来客数が大幅に減っているためだ。

ネットショッピングが普及し、リアル店舗へ買い物に行く人が減ったように、銀行も「わざわざ足を運んで現金をやり取りする場所」ではなくなりつつある。こうした顧客行動の変化やキャッシュレス社会の流れを受け、銀行業界では「非対面チャネル」「店舗レス・軽量化」へのシフトが急速に進む。

もちろんその背景には、技術革新と同時にコスト削減という厳しい懐事情もある。長びく超低金利、金融市場の環境の変化、人口減などの諸課題に直面し、生き残りをかけてインフラ改革に取り組む銀行業界の“いま”にフォーカスする。

店舗網の縮小・再構築を進める「三菱UFJ」「みずほ」

今年5月、業界最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、2023年度までに三菱UFJ銀行の従来型店舗を半減させ、窓口業務を自動化した「セルフ型」の次世代店舗に転換すると発表。今後6年間でセルフ型を70~100店まで増やしつつ、銀行全体の総店舗数は2割カットするという。

セルフ型の店舗には従来型のような窓口はないが、公共料金の支払いができる高機能ATMや、住宅ローンなどの相談に対応するテレビ電話を設置。1店舗あたり2~3名の案内係のみで運営でき、広い事務スペースも不要なため、従来型と比べて大幅な省力化とコストカットが可能となる。

さらに、MUFGでは独自のデジタル通貨「MUFGコイン」の実証実験や、資産運用の相談などに対応するAIの開発も進めており、非対面チャネルを拡充しつつ、対面チャネルには先端技術を投入して、業務運営の効率化につなげていく狙いだ。

みずほフィナンシャルグループも店舗網の再構築を推進しており、すでに傘下の銀行・信託・証券のサービスを一体化した共同店舗を約190店展開。さらに、2024年度までに共同店舗を220店に増やす一方、総店舗数は現在の約500店から400店程度にまで削減するという。グループ全体の拠点数を減らしてコスト削減を図りつつ、店舗の共同化を進めて幅広い金融ニーズにワンストップで対応していく方針だ。

小型店や相談特化型の店舗を展開する「三井住友」「りそな」

一方で店舗数は減らさず、店舗機能・規模の見直しやデジタル化で業務効率化を図る銀行もある。

三井住友フィナンシャルグループは、店舗数を維持しつつ機能を見直すリテール改革により、2017年からの3年で2000億円のコスト削減を目指している。まずは、2019年度までに全国の約430店舗を「ペーパーレスの次世代店舗」に移行させ、事務処理作業の約7割を削減。電子端末を活用した業務効率化で事務スペースを縮小し、少人数体制の小型店や個人客専用の機能特化型店舗を増やしていくという。

そのひとつとして今年7月に開設した三井住友銀行・汐留出張所(東京都中央区)は、現金を扱わない相談特化型のコンセプト店舗で、仕事帰りの会社員も利用しやすいよう平日19時まで営業。資産形成・運用などの相談に予約制で応じるほか、専門家によるマネーセミナーなども定期的に開催している。

同じく、りそな銀行も相談特化型の小型店舗を首都圏に23店展開しており、来年度はさらに45店に拡大する予定だ。同行では、不安も多い資産運用などの相談や、スマホ操作に不慣れな高齢者の窓口として、実店舗での対面サービスは不可欠と考え、今後もできるかぎり店舗数を維持していく方針という。顧客一人ひとりとの接点を大切にするこの姿勢は、かつて経営破たんに陥り、顧客目線に立った大改革で起死回生を果たした「りそなイズム」の原点ともいえるだろう。

時代の変化とともに、自らも変わり続ける銀行が勝ち残る

マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツが「銀行機能は必要だが、将来、いまのカタチの銀行は不要になる」と発言し、金融・経済界から一笑に付されたのは1994年のこと。それから20年以上が経過した現在、当時は誰も相手にしなかったゲイツの予言が、にわかに現実味を帯びてきたことは確かだろう。

いま日本の銀行は、日銀の金融緩和によって長期的に金利収益が低迷し、人口減が加速する中で先行きも見通せない状況に置かれている。そこにデジタライゼーションというIT技術の飛躍的な進化が加わり、フィンテックなどのテクノロジーによって金融サービスの概念が大きく変化。Amazonや楽天をはじめとする他業種のプレイヤーも次々と市場参入し、金融マーケットにゲームチェンジを起こそうとしている。

そうした中、かつて駅前の一等地に構えていた大型店舗は、銀行にとって経営を圧迫する負の遺産となりつつある。ここに来て各行ともにインフラ改革を急ピッチで進めているが、50~100年後の未来、銀行自体がどのようなカタチに変わっているのかは、おそらくゲイツにも予測できないだろう。その存在がリアルなのか、バーチャルなのか、あるいはまったく未知な第三の空間に存在するのか……。

いずれにしても、長きにわたって不倒・不変・安定という神話に支えられてきた銀行業界は、いまドラスティックな変革を迫られている。そして、営業効率化とサービスの質的向上という相反する課題を一挙に乗り越え、時代の流れとともに自らも変わり続ける銀行だけが、勝ち残っていくことは間違いないだろう。

※参考/日本経済新聞、朝日新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。

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