ストロー廃止で何が変わる?マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題(後編)

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「ストロー廃止で何が変わる? マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題」として前編・中編でお送りしてきたわずか数カ月の間に、この問題は刻々と変化を見せています。

ストロー廃止で何が変わる? マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題(前編)
ストロー廃止で何が変わる? マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題(中編)

当初はストローに焦点をあてた報道が相次いでいましたが、問題の本質はプラスチックごみ(以下、プラごみ)全体に波及してきました。問題点が明らかになるにつれ、各国や都市でプラごみ対策が進展し、規制のスピードが速くなっているためです。
マイクロプラスチックごみになる可能性が高いことを踏まえ、レジ袋(プラスチックバッグ)をはじめとした、使い捨てのプラスチックトレーやカップ、ナイフやフォークなどの使用規制や廃止に取り組む国や地域、企業。一方で、急な法律改正による対応に苦慮する業者や店舗も多く、コスト面だけでなく、従来とは違う取り扱いに困惑している様子がうかがえます。利用者や買い物客が不便を強いられていると感じることも多々あるようです。
プラごみに関する世界の動きについてご紹介します。

使い捨てプラごみ排出国のNo.1は?


マイクロプラスチックごみの元凶ともいえる、使い捨てプラごみの発生量が一番多い国はいったいどこなのでしょうか。ある報告書から見ていきましょう。
地球規模の環境保全で指導的役割を果たす国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)が6月に発表した報告書「使い捨てプラスチック(Single-use plastics)」によると、2014年に世界で最も多くプラごみを排出していた国は中国で約4000万トン(2014年)とダントツでした。続いてEU28か国、米国、インド、日本となっています。

ごみの量が半端ではない中国。街中はもちろん、川や湖、山など、ありとあらゆるところにごみが落ちている光景はネットでもおなじみです。ところが、ごみの量を一人あたりで換算すると、日本よりも少ない値になります。
なんと1位は米国の約45キロ、そして、日本が約32キロで2位という結果になってしまうのです。
中国は世界第1位の人口13.6億人(2014年)ですから、計算上はやむを得ない数字かもしれません。ちなみに、米国の人口は3.1億人、日本は1.2億人です。

1日、約5億本ものストローが使い捨てに

米国のファーストフード店やスーパーマーケットでは、使い捨てプラスチックの容器やフォーク、スプーン、ストローやレジ袋が湯水のように使われ、プラスチック大国と化していました。屋外での食事を好み、“to go”という「お持ち帰り」文化が根づいている米国では、使い捨てプラスチック用品は生活に密着していたのです。

特にストローは2003年のSARS流行後、感染症に敏感になった人々が一斉に買い求め、使用することが当然となっていたことから、1日でおよそ5億本もの本数が使い捨てられてきました。スターバックスやマクドナルドなどの企業やシアトルの取り組みにより、米国のプラごみが今後どう推移していくのか……世界の手本となってほしいところです。

ペットボトルなど、プラごみが増え続ける日本

日本でもプラごみは増え続けており、特にペットボトルの消費量の増加は1990年代半ばからと言われています。ペットボトルが登場した当初は1.5リットルなどの大型サイズしかありませんでしたが、規制緩和により500ミリリットル以下の容量が許可されると、次々に少ないサイズでの飲料や調味料などが発売されました。ちまたに自販機が増え、コンビニが台頭したことも消費が増えた要因でしょう。今の子どもたちは、瓶に入った牛乳やジュースを知らないかもしれませんね(画像は、日本海のとある海岸を覆う大量のゴミ)。

瓶よりもはるかに軽く、割れる心配がないペットボトルは扱いやすく持ち歩くのに便利だとして、当然のように受け入れられ、瞬く間に日本中に広まっていきます。結果、街中にあふれたのがプラごみでした。現在80%以上の回収率でリサイクルがされていますが、消費量が多く追いついていないのが実状です。

中国で広がる、プラごみ買い取り禁止の余波


ごみの総量1位の中国はこれまで、世界中から大量のごみを買い取り、それをリサイクルすることで経済成長を遂げてきました。輸入していたのは資源ごみで、主にプラごみです。石油原料よりもはるかに安い貴重な資源として、プラごみ輸入量は2000年代に入ると年間200万トンを超え、世界中のプラごみの6割にのぼるほどに。

ところが、このリサイクルが中国全土に重大な環境汚染をもたらしました。輸入されるプラごみは分別されず汚れたままのため、手作業で洗浄しなければなりません。その際に使う薬品や汚泥がそのまま川に流され、環境汚染が進んだのです。

そこで、中国政府は2018年1月より、資源ごみの輸入を全面的に禁止。経済状況がよくなり自国のプラスチック消費が増大しただけでなく、他国のプラごみが環境汚染を引き起こしたことを重く受け止め、輸入禁止に踏み切ったのです。困ったのはごみを輸出してきた国々でした。古紙を中心に廃棄物を輸出していた米国では、行き場を失った古紙が山積みになり、業者が悲鳴を上げているといいます。日本も例外ではなく、年間100万トンものプラごみを中国に輸出していたというから驚きです。自国のごみを他国に輸出していたとは!

日本のプラゴミは、業者が回収し海外へ輸出?

近年、日本では各家庭における資源ごみの分別回収が定着しています。ペットボトル、食品用のプラスチックトレーなどは軽くゆすいで資源ごみに出し、スーパーなどの回収ボックスへ持ち込む人も多いはず。そのため、家庭から排出されたプラごみは国内でリサイクルされていますが、問題は飲食店やオフィスから発生するプラごみでした。家庭以外での分別回収は徹底されていないため、業者が回収し海外に輸出していたのです。

中国のプラごみ輸入禁止を受け、日本はベトナムやタイなど、資源として需要があるところに輸出先を求めていますが、東南アジアのリサイクルマーケットの規模にも限界があります。将来的には中国同様に輸入禁止の方針を打ち出す可能性がないとは言えません。自国のごみは自国で処理すべきであり、その対策に知恵を絞るときが確実に近づいているのです。

世界的なごみ削減を握るインド


圧倒的なごみの量を持つ中国から、今後、注目すべき国はインドになると言われています。インドの人口は2014年には12.6億人でしたが、2017年では13.1億人。中国の2017年の人口が13.9億人ですから、インドが中国を越して、世界一の人口になるのもそう遠くありません。人口の多さは悲惨なごみ問題に直結しています。

インドの母なる川ガンジスは、人々が沐浴をする聖なる川としてあがめられていますが、同時に、遺体が浮き、生活排水が流れ込んでいます。そのため、大腸菌などのさまざまな病原菌が水に溶け込み、水質は最悪。さらに、レジ袋に入れられたおびただしい量の生ごみやプラごみが川にあふれ、流れを堰(せ)き止めているところも。
それもそのはず、ガンジス川の上流にある首都ニューデリーでは、ガンジス川がゴミ捨て場と化していました。毎年880万トンものプラごみが海に流れ込み、そのうち60%がインドから廃棄されたものだと言われる理由がここにあったのです。

プラスチックは「人類に対する脅威」

インドのモディ首相は、2018年6月5日の世界環境デーにおいて、『プラスチックは「人類に対する脅威」』だと訴え、インド政府は2022年までに使い捨てプラスチックを全廃すると宣言します。
その後、インドの29州のうちの25州で使い捨てプラスチックの使用を禁止する州法が施行されました。大都市ムンバイのあるマハラシュトラ州でも、レジ袋やストロー、持ち帰り用のプラ容器などが一切使えなくなったのです。準備期間があったとはいえ、街は大混乱に陥りました。水がなければ花が枯れてしまうのに、レジ袋を使えない花屋。カレーの持ち帰りにレジ袋もプラスチック容器も使えず、売り上げが落ち込むカレー店。野菜を入れる袋がないと嘆く青果店。

そこへ地元の自治体が「プラスチックGメン」なるものを組織し、取り締まりに乗り出したから大変です。レジ袋などが発見されると、違反として罰金が科されます。罰金は日本円にして約8000円。小さな商店では1カ月の売り上げに相当するというから、これは大問題です。店内をくまなく探すGメンにおびえ、憤る店主たち。この強引な取り締まりによって、ガンジス川に浮かぶ山のようなプラごみは削減されるでしょうか。

この禁止令によりプラスチック工場がつぶれ、失業者が相次ぐ一方、使い捨てプラスチックの代替品開発が進んでいるのも事実です。これまで何の役にも立たなかったヤシ科の植物の落ち葉を圧縮して成型したお皿、サトウキビからできた容器、トウモロコシを主原料とする生分解性のレジ袋やストロー、ドリンク類のふたなど、使い捨てプラスチック製品の代わりとして、急速な開発・生産が進められています。

「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった日本

2018年6月にカナダで開催されたG7、主要7カ国首脳会議において、「海洋プラスチック憲章」が議論されました。使い捨てプラスチックの使用制限や削減、リサイクルにおける数値目標が掲げられましたが、この憲章に署名しなかったのが、米国、そして日本です。奇しくも、前述のひとり当たりのプラごみ排出量1位と2位の国が署名拒否を選んだことになります。

署名を見送った理由として、政府は「プラごみを減らすことには賛成しているものの、国内で法整備ができていないため、どのような影響があるかわからない」としていますが、納得がいかない説明で、驚きを禁じ得ません。法整備ありきではなく、この憲章があるからこそ法整備がされていく、つまりは環境保護に対する大きなきっかけになるのではないでしょうか。

── 当初は前編・後編で構成されていた「ストロー廃止で何が変わる? マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題」ですが、問題を取り巻く環境や人々の意識・行動が変わり、社会が動いていくのを追っていくにつれ、前編・中編・後編という構成となりました。ところがまだこの問題は終わりを見ません。
次回は「マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題で私たちができること」と題して、日本を含めた世界がどう対応しているのか、どんな方法があるのか等の最新情報を引き続きお伝えしたいと思います。

参考:朝日新聞、CNN.co.jp、他

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。

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