いま、個人投資家の間で注目される「海外不動産投資」のイロハ《Part.2》
ここ近年、日本円と比べて高利回りの「外貨建て投資」に人気が集まるなか、中長期的な資産形成のアプローチとして個人投資家の間で注目されている「海外不動産投資」。
前回の記事「いま、個人投資家の間で注目される海外不動産投資のイロハ《Part.1》」では、不動産投資のインカムゲイン・キャピタルゲインという収益性の面から、厳しさを増す国内不動産市場の現状と、海外で注目される国々の市場環境や将来性について見てきました。
今回の《Part.2》では、分散投資によるリスク回避・節税の面から見た海外不動産投資のメリットや、投資する際の注意点・購入方法などの情報をお届けします。
「日本リスクの拡大」に備えた資産防衛・分散投資の手段に
少子高齢化や人口減少、巨大な財政赤字や円安による景気停滞、地震災害や原発リスク……など、解決の糸口が見えない社会・経済問題が山積する日本。
2020年の東京五輪を前に一時的な景気回復が見込まれているものの、中長期的な経済成長を期待するのは難しく、今後の社会情勢の悪化や経済失速による「日本の衰退」を懸念する声も年々高まっています。
そうした中、国内の個人投資家は「将来の日本リスク拡大」に備える資産防衛の観点から、成長性のある海外の市場に目を向け始めています。そのひとつとして、投資先の一部を外貨建ての実物資産に分散する「海外不動産投資」の重要性がますますクローズアップされているのです。
実物資産としての価値を発揮する、海外不動産
実物資産としてモノ自体(物件)を保有する不動産投資のメリットは、株式などの金融商品と比べて大きな価格変動がなく、資産価値がゼロになってしまうリスクも低いことです。とくに建物が永久資産として扱われている海外では、日本と比べて物件の価値が下がりにくいため、築年数によらず高収益のインカムゲイン・キャピタルゲインが期待できるのです。
一例として、中古住宅市場が成熟したアメリカでは、築年数の古い物件であっても、立地条件やロケーションがよく、きちんとメンテナンスされた物件であれば、新築と同様に値上がりすることも珍しくありません。さらに、海外の不動産投資においては為替差益がキャピタルゲインのひとつになり、円安になるほど、そのアドバンテージが発揮されるのも大きなメリットといえるでしょう。
また、実物資産の不動産は強いインフレ傾向にあり、世界的にも(かつての日本でも)高インフレ期には不動産価格が上昇するインフレヘッジ効果が見られてきました。前記事の《Part.1》でも触れましたが、先進国と比べて経済成長率・インフレリスクともに高いアジア新興国は、物価上昇によるインフレヘッジ効果も期待できることから、不動産投資の絶好の市場として大きく注目されているのです。
短期間での減価償却による、タックスメリットも魅力
国内外を問わず、建物の減価償却を活用して節税効果が得られるのも、実物資産である不動産投資ならではの魅力といえます。
ここで注目したいのが、海外に所有する不動産であっても、日本に居住(永久居住者)していれば、日本の税制に基づいて費用計上できる点です。先述した通り、海外の物件は築年数が古くても価値が下がりにくく、日本での法定耐用年数を超えた優良物件も数多く存在します。そうした物件に投資することで短期間での減価償却が可能になるため、より大きなタックスメリットが得られるのです。
たとえば、日本の税制では木造住宅は建築から22年かけて減価償却しますが、法定耐用年数(築22年以上)を過ぎた木造住宅を取得した場合、4年間での加速度償却が認められます。
同じく、鉄筋コンクリートの建物の法定耐用年数は47年で、これを超えた物件に関しては9年間での加速度償却が可能となります。
加速度償却は年間の償却費用が大きくなるため、税制上の不動産所得は赤字となりますが、その分だけ課税所得が減り、所得税の節税につながるというわけです。とくに、アメリカやハワイでは築30年以上の木造住宅や、築50年以上のコンドミニアムも珍しくなく、投資によるタックスメリットの大きい物件として、日本人投資家の間でも人気となっています。
海外の不動産に投資する際の注意ポイント
ただし、投資先の国から見れば外国人である日本人が、どこの国の不動産でも自由に購入できるわけではありません。実際に海外の不動産事情を見てみると、外国人の不動産取得に対してさまざまな法規制のある国が多くなっています。たとえば──(表参照)、
また、海外の金融機関で外国人が不動産ローンを組む場合、融資の上限額(物件価格の50~60%など)や自己資本比率(30%以上など)にシビアな条件があるため、事前にしっかり確認することが重要です。
あわせて金利も日本と比べて高めですので、できるだけ短期の返済プランを組んだほうがいいでしょう。同じく、海外不動産投資に対する融資は日本の金融機関でも受けられますが、審査の条件は国内の不動産ローンを組むよりも厳しく、審査が下りるまで時間がかかることも多いようです。
まずは不動産会社の投資セミナーなどで情報収集を
「海外の不動産に投資したいが、何から始めればいいのかわからない」という方は、まず大手不動産会社が開催する海外不動産セミナー・相談会に参加してみるとよいでしょう。自分の投資ニーズにマッチした物件・会社と出会うためには、やはり事情に精通したプロの説明を実際に聞き、海外不動産投資の知識を得るとともに情報収集することが一番です。
また、海外物件を扱う不動産会社の多くは、自社サイトで世界各国の物件や投資情報を紹介していますので、そちらもあわせてチェックしてみてください。さまざまな不動産会社の情報を見て・知ることで、自分が投資したい国や物件の目安がついてきますし、購入する会社選びの参考にもなるはずです。
── 以上、海外不動産投資の基礎知識を2回にわたってご紹介してきました。
これまで円資産や外国株などの金融資産しか保有していなかった方も、外貨建ての実物資産を保有するメリット・重要性についてご理解いただけたのではないでしょうか。海外不動産への投資は今後ますます伸びていくと予想されており、好物件を狙って個人投資家の動きも年々活発化しています。海外の不動産に興味のある方や、これから投資したいと考えている方は、ぜひこの機会にアクションを起こしてみてはいかがでしょう。
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。