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米国の不動産投資考察-①

【転載元】
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海外不動産投資、とりわけ米国不動産についてこれから順を追って考察しておきたいと思います。
第一回は、海外不動産の基礎知識について解説していきます。

その中からまずは、
①金利状況、②為替リスク、③米国の不動産投資状況のおぼろげな姿、
を見ておきたいと思います。この三つの要素を総合的に考察し、海外不動産投資に踏み切る決断を下すべきと、筆者は考えております。

海外不動産の金利状況

ドル金利の動きは米国不動産投資を検討する上で、最重要に考えるべき要素です。
ドル金利は現在上昇過程にあるといえます。FRB(米連邦準備理事会)は、3年前2015年12月から政策金利であるフェッド・ファンド・レート(FF Rate)の引き上げを開始しました。現在FF Rate誘導金利の上限1.75%です。今週水曜日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%利上げされ、2.00%となることが金融市場ではほぼ織り込まれています。そして年内更に2回利上げが実施されるのではとの観測が強まっています。
来年も利上げセッションは続き、0.25%毎の利上げが2回実施されると予想されます。そしてFF Rateが最終的に3%になると、FRBの当初の目標は達成されると考えられます。3%以上のFF Rateの引き上げは、米国が過度に景気良好になり、バブル景気状態つまりハイパーインフレ懸念が強く出てきた景気状態に限られるのではないかと筆者は考えます。
今後3年以降の米国経済状況を現在の状況から推測すると、そのような状況には陥らないと考えています。それは海外の主要先進国と中国の経済状況を考えると、今後飛躍的に良い景気状況が何年も続かないと判断できるからです。
結論として、今後2年位ドル金利は上昇し、その後は平たんな金利水準状況になるのではと思います。長期金利10年は現在2.90%前後の水準とこちらも3%前後の金利に上昇するトレンドにあり、上昇傾向にあると言えます。
従って、不動産投資する上では、今後2年位金利は長短金利共に上昇すると思って投資することを概念として頭に叩き込んでおくことが必要ではないかと思います。

グラフで見る金利状況

そこで米国の不動産投資する上で、金融機関からの借入金利はどの程度の水準であるかを知っておくことが必要となります。
下記のグラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)は、現在の米国のドル金利体系を示しています。特に左部分のモーゲージレート(mortgage)に注目してください。モーゲージ・レートとは、住宅ローン金利を意味しています。
これを見ると、30年固定金利(30 Year Fixed Mortgage)青線:4.46%、15年固定金利(20 Year Fixed Mortgage)空色線:3.89%、10年固定金利(10 Year Fixed Mortgage)橙色線:3.78%となっています。
FF Rateと比べると、30年固定金利で約2.70%、10年固定金利で約2.00%上乗せされている金利体系です。今年末を予想すると、FF Rateが2.50%に引き上げられると、30年固定金利で約5.20%、10年固定金利で約4.60%となる計算と推測されます。
これは一般の住宅金利であり、SPC(特別目的会社)を設立した不動産ファンドのシニア部門の借入つまり銀行借り入れはそれよりも低い金利水準と推測されます。
メザニン投資(中二階投資)部分利回りはそれよりも高い水準になると言えます。(投資家にとっては投資対象利回りとなります。)
 

 
日本の住宅ローン金利と比較しましょう。日本銀行の短期政策金利:-0.10%、長期金利(10年国債金利)ゼロ%程度で、金利を低水準に維持し、量的緩和の姿勢を維持しています。住宅ローン金利はどのように推移しているのでしょう。
調べてみると、全期間固定金利0.740%、固定10年金利0.630%と出ていました。そして日銀の今後の政策金利方針として、現行の金利水準維持、量的緩和姿勢に変化がないところを考えると、2年位の期間で見ると、大きくは金利が上昇するとは考えられないと筆者は考えます。

日米の不動産投資を日米の中央銀行の金融政策が大きく異なることから読むと、米国不動産に投資する方が、有利な利回りが期待できるのではと思います。

為替とリスク

次に為替動向を考えましょう。筆者は日米金利差がドル円の方向性には最重要な要素であると考えています。前段で説明したように、日米中央銀行つまりFRBと日銀の金融政策は明らかに異なっています。
FRBは利上げ方針を今後2年間は続ける見込みです。反対に日銀は、引き続き低金利政策と量的緩和政策を続ける方針であり、現段階でその方針を変えるつもりはないようです。従って日米金利差は拡大する方向性が見え、必然的にドル高・円安方向に為替は向かうのではとの大前提があると筆者は考えます。
下記グラフは2007年からの、つまり約10年間のドル円の推移を示しています。リーマンショック時の2008年から2012年にかけては、円高水準で推移し、一時80円を下回る水準を示現しました。しかしその後の米国景気の上昇、そして変わることのない日銀の金融緩和姿勢から、ドル円上昇の動きになってきています。
そして現在は大きく見て105円から115円の範囲内で推移しているようです。今後の動きは、日米金利差にその推測根拠を重く置くと、その水準を切り上げてもよいのではと筆者は考えます。その意味では今後2年から5年を見ると、上値は120円、下値100円程度に置いて良いのではと思います。
下値の100円以下の水準は現段階では大きな経済、そして政治的要因は考えられなく、除外しても良いのではと考えます。従って、米国不動産投資では、2~5年単位で考えると、為替リスクで大きく円高に振れてしまうというリスクにさらされる可能性は少ないのではと思います。
為替を考えると、現時点でも米国不動産投資の環境は良好であると思います。
 

 

不動産投資をとりまく環境

米国不動産投資環境はどうなんでしょうか?今回第一回のシリーズですので、あまり深くは言及しません。米国不動産価格の推移を示す代表的インデックスで、S&P/ケースシラー住宅価格指数があり、毎月発表されます。
下記のグラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)が最新のものです。米国経済が順調に成長拡大しており,それと共に米国の住宅価格も上昇しているように見えます。
過去10年間の住宅価格の推移ですが、こちらでも2008年以降、2011年まではサブプライム住宅ローン危機(証券化されたサブプライムローンの不良債権化)により、大きく住宅価格が下落しました。その後遺症も次第に薄れ、FRBの低金利政策と経済好転から上昇ました。
そして2014年からは5%(前年比)を上回り、直近3月には6.8%で推移しています。今後大きな政治経済の阻害要因が出没しない限り、5%の価格上昇のトレンドを続けるのではと思います。米国不動産価格の推移を見る限りにおいても、良好な不動産投資の環境にあるのではと思います。
 

 
次回以降の米国不動産投資を筆者の視点で時々考察してゆきたいと思いますので、よろしくお願いします。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。

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