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【ベトナム】HCM市、「工場隔離」指示[製造](2021/07/15)

ベトナム・ホーチミン市は15日から、工業団地などに拠点を置く製造企業に対し、工場従業員の宿舎を確保するよう求め、宿舎と工場間以外の移動を禁じる新たな規制を導入する。同規制をクリアできない場合は生産の即時停止と工場の一時閉鎖を求める厳しい内容だ。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めを掛ける狙いの規制だが、日系を含めた企業活動に大きな影響が出ることは確実だ。

タントゥアン工業団地では日系を含む多くの工場が12日以降、一時閉鎖されている=14日、ホーチミン市7区

タントゥアン工業団地では日系を含む多くの工場が12日以降、一時閉鎖されている=14日、ホーチミン市7区

■実質的な「工場隔離」

同市人民委員会が13日付で、工場の生産継続要件に関する通達615号(615/TB―VP)を出した。市内に拠点を置く企業などには、同様の内容の公文書2337号(2337/UBND―TH)を送付した。

それによると、企業に対しては◇工場労働者の生産、飲食、宿泊を1カ所で行う◇(工場内に従業員を宿泊させる施設を準備できない場合)移動を宿泊施設(寮やホテル)と工場の間の1ルートのみに限定する――のいずれかを満たすことを要請した。これを満たせない場合、生産活動の継続を認めない方針を示した。労働者の作業・食事・住居を1カ所に集約させる実質的な「工場隔離」の指示となる。

新たな規制は15日午前0時から適用し、期限は次の新しい指示があるまでとしている。

市人民委のグエン・タイン・フォン委員長は13日の関連会合で、「工業団地や輸出加工区、ハイテク工業団地の労働者の感染は、職場と住居の間の移動が関係していることが示された」と説明。「新型コロナの感染防止と経済発展の両立を可能とし、かつ、市民の健康を最優先に考えた結論だ」と述べ、新規制に従うことを求めた。

■コスト膨張、台湾・宝成は10日間停止

ホーチミン市では9日から首相指示16号(CT―TTg)に基づく事実上の都市封鎖(ロックダウン)が実施され、日系や韓国、台湾系などの進出企業の中にはすでに生産停止に追い込まれた企業が複数出ている。新規制は、企業が工場敷地内に社員寮などの宿泊施設などを確保できない場合、市内に大規模ホテルなどの宿泊所を確保するよう求める内容で、数千人以上の工場労働者を抱える企業にとっては多額のコスト負担を求められることになる。

同通達を受けて、同市ビンタン区にある台湾の製靴受託世界大手、宝成工業の現地法人「ポウユエン・ベトナム(Pouyuen Vietnam)」は、14日から23日まで10日間の生産停止を決めた。工場内には数万人に上る従業員が宿泊できるスペースがなく、工場外に宿泊施設を確保するのも現実的でないと判断した。

市外の近隣省からの通勤が必要な従業員に対しては3日に1度の新型コロナ検査が求められ、その費用負担などを考慮した結果、操業継続は非現実的と判断したという。同社の工場では今月初めの時点で30人のコロナ感染者が確認されており、2次感染を恐れて自主的に休みを申請する人が多かったことも、判断を後押ししたとみられる。

■手探りの生産継続

ホーチミン市内で新型コロナの集団感染が発生した工業団地などでは、既に工場停止が相次いでいる。

VNエクスプレスによると、トゥードゥク市のサイゴン・ハイテクパークの入居企業では750人以上の感染者が確認されており、韓国サムスン電子傘下で家電生産を手掛けるサムスン電子CEコンプレックスや、日系の電気部品大手メーカーなどの従業員が通勤できず、生産に影響が出ている。

サムスン電子CEの従業員数は約7,000人。新規制に対応するため、13日から従業員が工場内に泊まるための設営作業を進めている。

同工業団地管理委員会のレ・ビック・ロアン副委員長によると、同工業団地の入居企業85社のうち、15日の新規制施行後も生産を継続する計画を提出したのは20社と4分の1強にとどまった。同工業団地には、日系企業の工場もあり、従業員数の合計は計4万5,000人以上に上る。

首相指示16号に基づくホーチミン市の現在の社会隔離措置の期限は23日までだが、市共産党委員会のファン・バン・マイ副書記は、現在の感染拡大状況に照らして期限延長もあり得ると発言している。その場合は通達615号による「工場隔離」も、期限が示されないまま長引く可能性を否定できず、企業にとっては事業計画の見直しが必要になる。

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