【中国】ワクチン接種1億回突破[社会](2021/03/30)
中国で新型コロナウイルスワクチンの接種回数が1億回を突破した。1日当たりの接種人数も600万人を超え、接種が急ピッチで進んでいる。外国人への接種も各地で始まった。中国政府はワクチンの効果を広くアピールすることで、さらなる接種拡大を目指している。
国務院(中央政府)が28日開いた会見で、国家衛生健康委員会の米鋒報道官が明らかにした。26日には1日当たりの接種人数が611万9,000人に達したという。同委の統計では、国内接種回数は27日までに1億回を超え、28日時点で累計1億661万3,000回となった。
中国では昨年12月中旬から医療従事者など感染リスクが高い一部職種の人を対象にワクチンの接種を正式に始めた。1月上旬時点の累計接種人数は、緊急接種を受けた人を加えて延べ900万人だったことを考えると、2カ月余りで10倍に膨らんだことになる。
現在までに中国で承認されているワクチンは、国有製薬大手の中国医薬集団(シノファーム)系の北京生物製品研究所と武漢生物製品研究所、製薬大手の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)系の北京科興中維生物技術、製薬会社の康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)と中国人民解放軍の軍事医学研究院が開発した計4種類。このほか条件付き1種が緊急接種向けに使用されている。
海外への供給も急拡大している。第一財経日報(電子版)によると、シノファーム製のワクチンは26日までに海外への累計供給量が1億回分を突破。うち8,000万回分は既に接種済みという。
■抗体は半年持続
中国の専門家によると、集団免疫の形成には、全人口の接種率を70~80%に高める必要があるとされる。ただ中国製ワクチンに関する詳細なデータが公表されていないことから、安全性や有効性に対する不安の声は根強い。中国政府は「ワクチンは新型コロナの予防に最も有効な手段」として、接種拡大に向けてワクチンに関する知識の周知などの取り組みを強化している。
28日の会見でも、担当者や製薬会社幹部がワクチンに関する質問に答えた。シノファーム傘下の中国生物技術の張雲濤副総裁は、臨床試験結果を踏まえると、ワクチンによる保護効果は半年程度持続すると説明。ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ「中和抗体」も半年ほど体内に残るとした。
ワクチンの接種回数については、中国疾病コントロールセンターの担当者が、「ワクチンは3週間の間隔を空けて2回接種する必要があり、遅くても8週間以内に2回目を接種する必要がある」と説明。原則として2回とも同じ種類のワクチンを接種するよう推奨しているが、出張などの事情で別の土地で異なるワクチンを接種する場合は、1回目から受け直すよう求めているとした。
世界で感染が広がる変異株への有効性についても言及した。張氏によると、シノファーム製のワクチン2種は、英国と南アフリカで最初に見つかった変異株などに対して中和作用があるという。ブラジルやジンバブエで発見された変異株についても試験が進行中だとした。
一方、シノバック子会社の科興中維生物技術の高強総経理は、シノバック製のワクチンによってできる抗体の効果は、英国変異株に対しては従来型とほぼ変わらなかったが、南アフリカ変異株に対しては若干弱まるとしている。
■接種対象の拡大進む
ワクチンの接種には年齢制限があり、現在は18~59歳が主な対象。60歳以上の高齢者は健康な人のみに推奨している。中国生物技術は3~17歳の年齢層についても安全性や中和作用の検査を進めており、張氏は「そう遠くない将来に接種対象に加わるだろう」と話した。
接種対象を外国人に広げる地域も出始めた。北京市は26日、同市在住の外国人も接種を受けることができると通知した。上海市でも29日から、同市在住の外国人向けにワクチン接種の予約受け付けが始まった。北京、上海で使用されるワクチンはいずれも中国製で、2回接種する。